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若手の「イヤな女役」第一人者?久保田紗友 「悪女イメージ定着はチャンス」

武井保之ライター, 編集者
「追い込まれるのが好き。難役を選んでしまう」久保田紗友(文・写真/武井保之)

 ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)『M 愛すべき人がいて』『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系)などでの“影のある少女”や“イヤな女”の好演で視聴者に印象を残し、競争の激しい若手女優のなかで独自の立ち位置を確立しつつある新鋭女優・久保田紗友。若き“悪女役の第一人者”との呼び声も高いなか、最新主演作『ホリミヤ』ではそれとは真逆の優等生女子高生という正統派ヒロイン役に挑む。役によって顔つきまで変わる久保田紗友に、現在のポジションへの思いや女優として目指す方向性について聞いた。

■いまだに役名で呼ばれることもある『過保護のカホコ』からブレイク

ーー『過保護のカホコ』のあとテレビドラマや映画などエンタテインメントシーンの第一線での活躍が目立っている印象です。ここ1〜2年の変化をどう感じていますか?

「自分ではあまり変わったと感じていません。たしかに、2年前に比べれば仕事のことを考える時間も、現場に行く時間も増えていますけど、自分のなかではそこまでたくさんの作品に出演させていただいているという感覚はまだなくて」

「インスタやTwitterなどSNSのフォロワー数としては増えているのが見えるんですけど、私のことを知ってくれている人がすごく増えたかと言うと、肌で実感するほどではなくて、周囲の変化は意識したことがないです。まだまだこれからだと思っています」

ーー現在放送中の『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)にも出演中ですが、ドラマ出演が途切れません。これまでの女優業のなかで、ステップアップにつながったと感じる転機の作品はありますか?

「やはり『過保護のカホコ』のときに私を知っていただいた人が多くて、いまだに役名で呼ばれることもあります。最近でいえば、ヒロインを演じた映画『サヨナラまでの30分』も私のなかでは節目になる作品だと思っています」

■イヤな女を演じている意識はない “完全な悪”の役をやってみたい

悪女役の作り込み手法を笑顔で語る久保田紗友(写真/武井保之)
悪女役の作り込み手法を笑顔で語る久保田紗友(写真/武井保之)

ーー昨年は『M』『先生を消す方程式。』で続いたイヤな女役の好演ぶりが話題になるとともに、女優・久保田紗友を視聴者に印象づけました。

「私自身はイヤな女役をやっている意識はまったくなくて。たしかにどちらの役も意地悪な一面はあるんですけど、最終的には自分に非があることや負けを認めています。ちゃんと善の部分もあるし、2人とも弱いところがあるだけで根はいい人なんです。だから、むしろまったく善がない“完全な悪”の役をやってみたいです」

ーー久保田さんのイヤな女役は圧倒的な存在感があります。目つきや顔つきまでふだんと変わっています。

「人ってマイナスなことを言ったり、意地悪なことをしたりする瞬間って、言葉を選ばずに言うと、すごくブサイクになると思うんです。ネガティブな発言は、どんな人が言ってもその人の輝きを失わせるから。だから、役の気持ちに入り込んで、自分がそういうすごくイヤな顔になっていることを意識しました。実際、そう感じていただけたならうれしいです」

ーードラマでのイヤな女は、演技力と美貌を兼ね備えていないと務まらない演者を選ぶ役ですが、久保田さんはいまや若手の第一人者になっています。

「第一人者なんて恐れ多いです(笑)。私は自分がどう見られているかをあまり気にしないところがあって……。気にするようにしないといけないとも思うんですけど(笑)」

ーー悪女役は、主役よりもインパクトがあることが多く、良くも悪くも視聴者の印象に残る役ですね。

「たしかにストーリーの重要なポイントで演じることが多くて、観てくださる方の印象に残ることが多いのかもしれません。出演シーンがそれほど多くなくても、覚えていただけるのはすごくうれしいです。でも、どんな役でも向き合う姿勢はもちろん変わりません」

ーー 一方で、悪女役の印象が強すぎるがゆえにイメージが定着してしまう怖さはありませんか?

「悪女役のイメージがついたとしても、それによって他の役がやりにくくなるとはまったく思いません。もしイメージが定着したらそれを壊していけばいい。むしろ、違いを見せられるチャンスでもあると思います。常にいままでやったことのない役にトライしていきたい。難しい役柄ほどやりがいを感じます」

■追い込まれるのが好き 難役を選んでしまう

最新主演作『ホリミヤ』では優等生女子高生の正統派ヒロインを演じた久保田紗友(C)HERO・萩原ダイスケ/SQUARE ENIX・実写「ホリミヤ」製作委員会・MBS
最新主演作『ホリミヤ』では優等生女子高生の正統派ヒロインを演じた久保田紗友(C)HERO・萩原ダイスケ/SQUARE ENIX・実写「ホリミヤ」製作委員会・MBS

ーー最新主演作『ホリミヤ』では、悪女役とは正反対の優等生女子高生という正統派ヒロイン役です。

「最近続いていた役とは180度逆で、いい意味で役作りを諦めた作品でもあるんです。というのは、役柄と自分自身の似ている部分がたくさんあったから。原作を読んで主人公のイメージができあがって、現場で監督やキャストの方と話して、セリフを発するたびに、私と同じですごく不器用な人だと感じました。私のまま演じたほうがいいと思って、深く考えることをやめました」

ーー不器用なところの共通点とは?

「自分の考えをまっすぐに伝えられなかったり、それとは裏腹なことを言ってしまったり、照れ隠しできつくあたってしまったりとか。大切な人の前で素直になれない瞬間があるところとか、私の素のほうでもけっこう心当たりがあります(笑)」

ーー現場ではどんなことを意識しました?

「まわりの人に明るく接する(笑)。私、顔つきからも暗く見られがちなんですよね。明るく演じたつもりでも、「もっと明るく」って演出を受けたこともあって。たぶんそれは、撮影の最初のほうは自分自身が悩んでいたっていうのもあると思うんですけど。でも、後半はまわりの空気を大切にしながら、活かせるところは久保田紗友のままで演じていました」

ーー悪女役が続いたあとに今回の正統派ヒロイン役。これまでと違う顔を見せないといけないという意識はあった?

「それはまったく考えないです。意識すると逆に引きずってしまう気がして。その役ごとに抱えているものがまったく違うので、ただひたすらその役に向き合って、役が抱えているものを私自身が抱えて演じることを大切にしています」

ーー正統派ヒロインと悪女、どちらを演じるのが好き?

「どちらかというのはないです(笑)。バランス良くできたらいいです。でも、なにかを抱えている役って自分と向き合う時間がすごくしんどいんですけど、それを好んで選んでしまう自分もいるんです。たぶん追い込まれるのが好きなんだと思います(笑)。その役を演じている間はすごく神経がとがってきます。でも、それでこそ役としっかり向き合っている実感が湧くんです」

■人生経験が足りていない 失敗をたくさんしたい

素の久保田紗友で演じた最新主演作『ホリミヤ』の主人公・堀京子(C)HERO・萩原ダイスケ/SQUARE ENIX・実写「ホリミヤ」製作委員会・MBS
素の久保田紗友で演じた最新主演作『ホリミヤ』の主人公・堀京子(C)HERO・萩原ダイスケ/SQUARE ENIX・実写「ホリミヤ」製作委員会・MBS

ーー競争の厳しい若手女優シーンのなかでも第一線でポジションを確立しています。ご自身の女優としての特徴や優位性をどう考えますか?

「なんでしょう、私が知りたいくらいです(笑)。でも、この世代って、みんな個性を大切にしていて、それぞれのよさがあるいい女優さんが多い。お互いに対してそこまでライバル意識を持っていなくて、それぞれ個性を伸ばそうとしています。それがいまの時代性にあっているのではと感じることはあります」

ーー悪女役のポジションでは一歩リードしていますね。第一線で活躍を続けていくために必要なことは?

「自分ではまだまだだと思う部分しかないですし、満足してしまったら怖いとも思います。自分で自分を認めることは少ないです。活躍するために必要なのは、女優を続けることだと思います。一生懸命に打ち込んで、私は気づいたら8年経っていました。私にはこれ以外にできる仕事なんてないんですけど(笑)、なにをやるにしても続けることが大切だと思います」

ーーいまの自分に足りないことや課題は?

「芝居の幅もそうですけど、人としての経験ですかね(笑)。人生経験が足りません。失敗をたくさんしている人って、その教訓からすごく自信にあふれている人が多いと思うんです。いろいろなことにトライして、失敗して学んでいくということをたくさん経験したいです」

ーー次のチャレンジは何ですか?

「いま21歳なんですけど素敵な大人の女性になること。見た目は大人っぽいと言われることもあるんですけど、中身はぜんぜんなんです(笑)」

『ホリミヤ』

 クラスではいつもひとりぼっちの地味でネクラな男子・宮村伊澄と、優等生で明るく、人気者の女子・堀京子。まるで正反対のふたりには、実は共通点があった。それは、誰にも知られていない「秘密」の一面をもっていること。

出演:鈴鹿央士 久保田紗友 ほか

監督:松本花奈

原作:HERO・萩原ダイスケ「ホリミヤ」(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)

公式サイト

(C)HERO・萩原ダイスケ/SQUARE ENIX・実写「ホリミヤ」製作委員会・MBS

ライター, 編集者

音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク専門誌などの編集者を経てフリーランスの編集者、ライターとして活動中。映画、テレビ、音楽、お笑い、エンタメビジネスを中心にエンタテインメントシーンのトレンドを取材、分析、執筆する。takeiy@ymail.ne.jp

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