投票率87%!投票は家族行事!18歳、初投票した感想は?極右の影響とスウェーデン選挙当日の現地の声
2018年のスウェーデン総選挙の投票率は、87,18%。前回2014年の総選挙と比較して、投票率は85,81%から増加した。
隣国ノルウェーでは、2017年の国政選挙の投票率は78,2%。
ノルウェーでは、国と自治体レベルの選挙は別の年に行われる。
一方、スウェーデンでは、国・県・自治体という3レベルの選挙が同日に開催されるため、4年に1度の選挙は特別な日となる。
各政党の青年部による積極的な政治活動、中学生らが質問票をもって政党スタンドを訪問する教育制度。
政治に関心が高い若者たちの姿が、両国の選挙現場では共通している。
今年は、極右(右翼ポピュリスト)の「スウェーデン民主党」が大幅に議席数を伸ばしそうであることが話題となった。
「移民・難民の受け入れに寛容」なイメージが強い国は変わるのか、国際的にも注目を集めた。
スウェーデン民主党の存在は、今年の投票率に、少なからず影響を与えたのではないだろうか。
9日の投票日、複数の会場を回りながら、投票を終えたばかりの方々と話をした。
選挙の日は、ちょっとおしゃれに?
筆者はAirbnbに滞在していたのだが、前夜にホストにこう言われていた。
「明日はきっと、いつもよりお洒落な服装をして来る人もいるわよ」と。
当日の朝にラジオを聞いていると、確かにニュースでも、選挙の日のファッションがテーマとなっていた。
ストックホルムの観光地ガムラスタンの会場では、青い綺麗なワンピースを着た若い女性と、ピンクのドレスを着た女の子に出合った。
「私は子どもの頃から、投票所に行く母親にくっついていました。娘は3才で、投票所に来るのは今回が初めて。投票用紙を封筒に入れるのを、娘は手伝ってくれましたよ」と、母親のイーナさんは語る。
この日を後で振り返ると、おしゃれをしている人はそこまではいなかった。もしかすると、昔はもっと選挙の日の服装にこだわっていた人が多かったのかもしれない。
それでも、投票者の多くは片手に投票用紙を持って会場に向かってくるため、周辺では特別な空気が流れていた。
選挙の日は、家族と一緒に投票所へ
ノルウェー以上に、家族で投票所に来る人がスウェーデンでは多いような印象を受けた。
日曜日ということもあってか、保護者がベビーカーを押しながら、犬の散歩も兼ねてくる人がたくさんいた。
会場周辺では子どもが走り回る。お互い投票用紙を手に持ちながら、近所の知人と立ち話している人も多かった。
「まるで幼稚園のようだな」と感じた。
ヨハンネさんは、4 才のリディアさんを連れていた。
「娘が投票所にくるのは初めて。民主的なプロセスを娘に見せたかったんです。今年はどこに投票するか決めるのが、ちょっと難しかった。子どもケアや教育政策が、私にとっては重要なトピック」。
18歳で初めて投票!
18歳になって、初めて投票するという高校生にも何人にも出合った。
「初めての投票で、ちょっと緊張した」と語るのは、18歳の高校生ネーリさん。
「社会のために、自分もなにかできて嬉しい。14才になった頃から政治に興味が沸いて、両親とはよく政治の話をしていました」。
「欧州で右翼ポピュリストの波が広がっている今だからこそ、選挙で投票することがより重要になってきていると思います。最低限の人権と民主主義を守るためにも」と話す。
「スウェーデンでは、家族で投票所にくることは、伝統のようなものだと、私は思っていたわ」と母親のアニカさんは語る。
投票直後の18歳のノーアさんは、「わくわくした」とほほ笑む。
「どこに投票するか決められなかったから、2か月間くらいずっと、親子で議論していました」。
「そういえば、私が初めて投票した時も、両親と一緒に会場に来たわ」と母娘のマリアさんは話す。
2人は教育、福祉制度、医療政策に特に関心が高かった。
極右「スウェーデン民主党」が、「選挙に行かねば」と人々に思わせた?
投票を終えたばかりの方々と話していると、自然と「スウェーデン民主党」を口にする人も多かった。
「投票するのが、大好きで仕方ない。社会で最も重要なタスクで、投票後はいつも幸せになる。この国がどういう国になるか、そのプロセスに関われれて嬉しい」とカッレさん。
「いつもの選挙だったら、投票当日にどの政権になるかなんとなく分かるんだけど、今年はごたごたしそうだ」。
「スウェーデン民主党と連立しない政党に投票する」と2人は話した。
「メディアは移民政策ばかり騒ぎすぎ。女性の権利とか、もっと大事な政策もたくさんあるのに」。
ステファンさんは、選挙の日だからと、しっかりとしたスーツを着て、ベビーカーを押しながら会場に登場。母親は韓国人という1才のノーミちゃんを連れていた。
「私にはもうひとり子どもがいて、昨年は息子も連れてきましたよ。事前投票もできましたが、当日に投票するのが好きでね」。
「スウェーデン民主党によって、国会には新しいブロックができました。(本来は右派と左派ブロックだけなのに)3ブロックもあるのは、昔はなかったこと。スウェーデンはこのような状況に慣れていないので、大きな変化だと思う」。
「私たちの国は、右翼ポピュリストが拡大する欧州他国と同じようになってしまった。どの政党に投票するか迷って、やっと決められたのは昨夜でしたよ」。
同性婚をしているマイクさんとコニーさん。「今年は重要な選挙です。どこに投票するかを決めるのは簡単でしたよ。極右をできるだけ遠ざけるようにするためにね」。
グスタヴさん夫妻は、5才のジューリちゃんと、8才のエシュテイルちゃんと一緒に投票所へ。
グスタブさん「スウェーデンの政治家は、スウェーデン民主党とは話し合うべきだと思う。私はスウェーデン民主党には投票しませんがね」。
「スウェーデンは、かつてはもっとオープンな国だったのに、今は雰囲気が変わってしまった」。
「18歳の頃から、毎回必ず選挙では投票していますよ。8才の娘は子ども向けの新聞を読むのが大好きで、政治にもう興味を持っている。この子は、投票所に来るのを楽しみにしていました」。
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それぞれの思いを込めて、投票箱に入れられる1票。
現地の人と話しながら、高い投票率と政治への関心の高さの秘密のひとつには、「親が子どもを投票所に連れてくることが当たり前」という、長く続いたカルチャーもあるのかなと感じた。
スウェーデン民主党の存在も、「しっかり政治を考えないと」と、人々の心をさらに後押ししたようだ。
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Photo&Text: Asaki Abumi