コロナ禍の今、一戸建てが売れている。その理由が「2階建てだから」だったとは……
コロナ禍の今、マンションも売れているが、一戸建ても売れている。
一戸建ての場合、2018年から2019年にかけて、建売住宅もハウスメーカーの建物も大きく売れ行きが落ちた時期があった。
その揺り戻しが2020年から始まった、という側面もありそうだ。が、販売の現場で話を聞くと、テレワークの広まりで、マンションをやめて、一戸建て購入を決めた、という人が目立つという。
コロナ禍が、一戸建て住宅の売れ行きを後押ししているのは事実だろう。
出社するのは1週間に1度か2週間に1度で、家で仕事をする時間が増えた。だから、通勤便利な場所のマンション購入をやめ、郊外の広い一戸建てを探す……そういう人は間違いなく増加した。
そして、最近は、中国籍の人が一戸建て購入者に増えた、という現象も出ている。
中国籍といっても、投資目的の購入者ではない。日本の企業に就職して日本の税金も納め、子供は日本の学校に通う、という人たちだ。
中国の人たちが郊外の一戸建てを買う理由も、「テレワークが広まったから」。中国籍の人たちが日本の企業で働く場合、中国語を使った仕事が多くなる。中国本国と電話やメールで連絡を取り合う役割を受け持つわけだ。
その仕事はテレワークでも行いやすく、テレワークが多くなった中国の人たちが、テレワークに適した一戸建て購入を検討し始めたのである。
中国の人というと、値上がりしやすい都心のマンションを好むと考えられがち。が、郊外の一戸建てを好む人たちも以前から一定数いた。マンションを好む人もいれば、一戸建てを好む人もいるのは、日本人と同じである。
そして、テレワークの広まりで、一戸建てを探す中国の人が増えたのも、日本人と同じということである。
一戸建てが好まれるのは、「2階があるから」
では、なぜ郊外のマンションではなく、一戸建てなのか。
その理由として考えられるのは、「一戸建てならば、家の床面積が広い」ことや「庭があるから、バーベキューなどを楽しみやすい」こと。家族で、家で過ごす時間が増えたので、家時間を楽しくするための要素が多い一戸建てが好まれている、と考えられるわけだ。
しかし、実際に一戸建てを購入検討している人たちの話を聞くと、一戸建ての意外な利点に注目していることが分かった。
一戸建ての意外な利点とは、ズバリ「2階がある」こと。スペースが1階と2階に分かれていることに、大きな魅力を感じているのである。
一戸建てには、1階だけで2階がない「平屋(ひらや)」もあるのだが、ほとんどの建売住宅は2階建てで、一部に3階建てがあり、平屋はまずない。
建売住宅の大半を占める「2階建て」は、テレワークを行うときに、いろいろな面で都合がよい。
まず、小さな子供が家にいるとき、「パパは2階で仕事だから、2階には上がらないで」と子供を仕事スペースから離しやすい。
夫婦共働きで、共にテレワークが多い場合、1階と2階でそれぞれの仕事スペースを分けることもできる。上下に分ければ、音の問題が起きにくいからだ。
広いマンションを買っても、隣り合った部屋で仕事をすると、オンライン会議の声が聞こえてきたりする。が、上下に分かれて仕事をすれば、よほど大きな声を出さない限り、音が伝わらない。
同じ家のなかで、2人がそれぞれの仕事をするときも、2階建ては好都合なのである。
フルフラットのマンションでは、上下の住み分けは無理
マンションにも、スペースが上下2層に分かれたメゾネット住戸というものがある。それなら、テレワークに好都合なのだが、その数は少ない。ここ5年ほど、首都圏でメゾネット住戸を取材した覚えがないほどだ。
マンション住戸は基本的にフルフラット(完全な平面)となる。
フルフラットの住まいには、階段の上り下りをしなくてよいので「移動が楽だし、安全」「高齢になっても暮らしやすい」という長所がある。
このフルフラットを好む人がこれまでは多かった。
しかし、コロナ禍によってテレワークが定着し、これからもテレワークが続きそう、という家庭では異なる発想が生まれた。フルフラットのマンションより、2階建ての一戸建てのほうがスペースをはっきり分けることができて都合がよいのである。
この利点に注目する人は、広い庭に執着しない。だから、土地面積100平米(約30坪)程度の平均的サイズの建売住宅で十分。すると、抑えた価格で一戸建てを購入できることになる。
2階建ての一戸建てが、「テレワーク時代にマッチした住まい」として脚光を浴びている背景には、そんな事情もあるわけだ。