原発ゼロが最大のイノベーションをもたらす
フーテン老人世直し録(59)
如月某日
エコノミストのアベノミクスに対する評価が変わってきている。去年は様子見をしながらも国民の期待感を高めないと好結果につながらないと思ったのか、高い評価をするエコノミストが多かった。しかし1年が経つと変わってきたのである。
アベノミクスには「三本の矢」が必要である。「第一の矢」はアメリカのバーナンキ前FRB議長がリーマン・ショックの不況から脱するために採用した大胆な金融緩和。「第二の矢」は東日本大震災からの復興を表看板にした自民党得意の公共事業のバラマキ。「第三の矢」はかつての小泉構造改革を思わせる成長戦略である。
「三本の矢」は一体にならないと効果を生まないが、アメリカを真似した「第一の矢」をアメリカが批判する筈はない。日本の消費増税を批判していたアメリカの経済学者はアベノミクスを称賛し、海外の投資マネーが日本に流れ込んで円安・株高となった。
公共事業のバラマキは一過性の効果を生む。しかし日本経済を革新するはずの肝心の「第三の矢」に海外は失望した。民間主導と言いながら霞ヶ関主導で少しも革新性を感じさせないからである。エコノミストの中には「第一の矢」の評価はA、「第二の矢」はBだが、「第三の矢」はEクラスで、それがABE(アベ)ノミクスだと言う人もいる。
日本経済に明るさが出てきたのはアベノミクスのおかげではなく、世界経済が去年の11月に底を打ち好況に転じたためで、安倍総理は運が良かっただけだと言うエコノミストもいる。アベノミクスの成功確率は良くて3割、それ以下だと見るエコノミストが多い。
しかし安倍総理とメディアは今でもアベノミクスの期待感を高めようと国民の洗脳に必死である。安倍総理御用達のNHKは、賃上げした企業と非正規を正社員にした企業の紹介に余念がない。点に過ぎない現象を全体のように印象付けるプロパガンダがNHKのニュースで流れている。
日本経済を本当に良くするには何が必要か。それは本物のイノベーション(革新)である。自動車と電気製品の輸出でメシを食ってきた時代に別れを告げ、新しい産業と構造でメシを食う国を創る事である。それは日本が原発ゼロの状態でいるところから生まれる。
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