「二・二六事件」の昭和11年は今の日本とそっくり
フーテン老人世直し録(62)
如月某日
78年前の2月26日、陸軍の青年将校が1400余名の兵隊を率いて首相官邸など東京の中枢部を占拠し、政財界人を殺害して国家改造を図ろうとしたクーデター未遂事件が起きた。「二・二六事件」という。
現代に生きる人間は、軍国主義の暗い時代の民主主義とは真逆の出来事と思っているだろうが、事件が起きた昭和11年は日本国民が未来に胸をふくらませた極めて明るい時代である。フーテンは今の日本に良く似ていると思う。
この年の出来事を振りかえってみる。1月に有楽町にある日劇で「ジャズとダンス」という公演が行われ、日劇ダンシングチームが初めてラインダンスを披露した。またソ連から有名なオペラ歌手シャリアピンが来日し、日比谷公会堂で公演を行うが、歯を痛めていたため宿泊先の帝国ホテルに柔らかい肉料理を注文し、そこからシャリアピンステーキというメニューが生まれた。
今年の東京は2月8日に20年ぶりの大雪を記録したが、昭和11年2月4日の東京は54年ぶりに30センチを越える積雪に見舞われ、銀座でスキーを楽しむ人間が現れた。また寒波の襲来は全国に大雪を降らせ富山県では5メートルを越す積雪が記録されたが、今年の日本も記録的な大雪が各地に被害をもたらした。
プロ野球の公式戦が始まったのも昭和11年である。巨人軍の沢村栄治投手が初のノーヒットノーランを記録して大人気となった。フーテンにはマー君人気と重なって見える。そうした中で何と言っても国民を明るくしたのは、昭和15年の夏季オリンピック東京招致と冬季オリンピックの札幌招致が決定した事である。国民はオリンピック熱に湧き上がり「これで景気は上向く」と未来に胸を膨らませた。
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