米、露下院の核実験禁止条約批准撤回の数時間後に、ネバダ核実験場で爆発実験 露の核実験を誘発する懸念も
ウクライナ戦争を背景に、対立を深めている米国とロシア。
10月18日、米国が、ネバダ州南部の核実験場で高性能爆発実験を行ったとFOX ニュースなどの米メディアが報じている。ブルームバーグ通信によると、この実験では、他国で行われた原子爆発を検知するのを助ける「新しい予測爆発モデルを検証する」ために化学物質と放射性同位元素が使用されたという。
5,000発以上の核兵器の在庫を管理している米エネルギー省に属するNNSA(国家核安全保障局)は、プレスリリースで、以下のように述べている。
「NNSAが率いるチームは、世界中の低出力の核爆発を検知する能力を向上させるために、NNSS(ネバダ国家安全保障施設)で、地表下での化学爆発を行った」
また、このリリースでは、NNSAの国防核不拡散担当副長官コーリー・ヒンダースタイン氏が実験の狙いについてこう説明している。
「これらの実験は、米国の核不拡散目標を支援する新技術開発の取り組みを前進させるものである。地下で行われている核爆発実験を検知する能力を改善することで、世界の核の脅威を軽減する助けとなる」
実験はNNSSのエリア12のPトンネルで行われ、化学高性能爆薬と放射性同位元素が使用された。
露下院のCTBT批准撤回数時間後に実験
この実験については、実施されたタイミングが注目されている。ロシア下院で、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回するための法案が全会一致で可決された数時間後だったからだ。1996年に国連総会で採択された包括的核実験禁止条約については、ロシアは批准したものの、米国、中国、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエル、イラン、エジプトはまだ批准していない。
アメリカを牽制する狙いがあると見られるこの法案はロシア上院に送られ、今週審議される予定だが、議員らはすでにこの法案の支持を表明しており、25日に可決され、プーチン大統領の署名により成立することが見込まれている。
ロシアの条約離脱については、世界最多の核兵器を保有するロシアが核実験を再開するのではないかとの懸念の声もあがっていたが、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務副大臣は、米国が先に核実験を実施した場合にのみ核実験を再開すると述べていた。
ロシアは状況を注意深く監視
問題は、米国がネバダ州で行った今回の爆発実験をロシア側がどう捉えたかだ。米誌Newsweekは「ロシアに核実験を促す可能性がある」と懸念している。
インタファクス通信によると、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、記者会見で「ロシアは現在の状況を注意深く監視している」と述べたという。
また、インタファクス通信は「ネバダ州の爆発が核実験の基準を超えたかどうかについて、国際的な法的評価が行われるべきだ。アメリカ人が地下で何を爆破したのか正確には分からない」というロシア議会上院のコンスタンチン・コサチョフ副議長の疑念の声も伝えている。
また、ブルームバーグ通信によると、国連軍縮研究所でロシアの核戦力を追跡しているパベル・ポドヴィグ氏は「今後数日間、ロシア政府は米国が核実験を行っていると主張するかもしれないが、この実験が核ではないと検証する方法はない」との見方を示している。
米国の核実験場で行われた爆発実験が誤解を生み、ロシアによる核実験の再開を誘発する可能性や米露対立のエスカレーションに繋がる可能性が懸念されている。
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