台風時の会社の対応への「多様で自由な働き方」マウンティングの危険性
こんにちは。アクシス株式会社 代表・転職エージェントの末永です。
中途の人材採用支援をしつつ、月20万人以上の読者を持つ転職エージェントが語る「すべらない転職」という転職メディアを運営している中で、Yahoo!ニュース上では2013年から「働き方3.0」というテーマでキャリアや雇用分野について発信させてもらっています。
みなさん、8日の夜から翌朝にかけて、関東地方では相当強烈な風雨が続きましたが、ご無事でしたでしょうか。
台風を受けて関東圏では鉄道各社の多くから始発から運転を見合わせていたため、交通規制に苦しんだ社会人の方もいらっしゃったことと思います。
また、千葉県内では約56万3300戸で停電状態との事で、被害に合われた皆さまには、心よりお見舞いを申し上げますとともに、 被災地の一日も早い復旧をお祈り申し上げます。
Twitterで話題の「リモートワーク論争」
そんな中、台風による交通規制や規制解除後の通勤ラッシュを受け、会社側の対応に対する様々な意見がTwitter上で飛び交っていました。
例えば「午後出勤にすべき」、「リモートワークの推奨」に関する賛否です。
私が気になったのは、こうした天災時に度々起こる会社の対応に対する「多様で自由な働き方」マウンティングについての議論です。
「災害時にリモートにさせなかったり、早期出社を推奨するのはブラックだ」「今の時代リモートワークを取り入れていないなんてオワコンだ」という意見に対して、
一方では、「リモートワークが全てだなんて極論すぎる」「先端の働き方を振りかざして他社をdisったり、ポジショントークやマウンティングしたいだけだ」という意見の大きく二つがありました。
「多様で自由な働き方」の議論からみる時代の流れ
リモートワークというのは、「多様で自由な働き方」の象徴のような制度です。
今回Twitter上で行われていた「リモートワークに関する議論」というのは、私は本質的には「多様で自由な働き方」に関する議論ではないか、と捉えています。
前者のリモートワークを推奨する意見というのは、「自由な働き方を追い求め、促進する時代の流れを尊重」した意見。
一方後者の意見は、「働き方改革や自由が美化され過ぎていることへの危惧」を示す意見かと思います。
私としては、そもそもどちらが「正しいor悪い」、「白or黒」の二元論で断定できるものではなく、どんな物事も過剰であるべきではないという事に過ぎないと思っているのですが、今回のテーマはいち企業経営者としても色々と考えさせられる興味深い内容であると思いました。
そもそも「自由な働き方」とは何か?
特に、後者の意見が示すように、「働き方改革や自由が美化されすぎることへの危惧」は一定感じ入るものがありました。
今回テーマとした「多様で自由な働き方を追い求めすぎることへの危険性」を議論するわけですが、これを議論する上で、まず「多様で自由な働き方」についてきちんと定義しなければなりません。
それで言うと、巷でブームになっている「多様で自由な働き方」というのは、時間や場所、ひいては会社に囚われず働く方法、を意味すると思います。その例としてリモートワークやテレワーク、フレックスタイム制などの制度があります。
「自由な働き方」というものは、メリットばかりが着目されがちな一方で、会社側に限らず働く個人にとってももちろんデメリットもあります。具体的には、以下のようなものです。
・自分自身でモチベートしなければならない
・メリハリをつけるのが難しい
・すぐに相談できる相手が近くにいない
・他者から自分の仕事のプロセスに対してフィードバックをもらいにくい
・先輩の仕事の進め方や言動や所作を直接見聞きして盗んだり、学べない
・リモートの会議の実施には手間・コストがかかる
「多様で自由な働き方」に必要な力
これらから見られるように、「自由な働き方」を行う上では、自分自身でモチベートする力や人に相談せずとも高いパフォーマンスが出せるというビジネスパーソンとして一定レベルの熟達と自立していることが前提として必要になってきます。
もちろん「多様で自由な働き方」は魅力的であり、災害時など社員の命を優先すべき緊急時には導入した方が良いと思いますが、ここぞとばかりに「ブラック企業だとマウンティングする」であったり、「すべての会社が常にそうあるべき」といった論調については、むしろ企業やそこで働く個人にとって選択肢や多様性を提供するというよりも、むしろ阻害する圧力ではないかと窮屈な印象があります。
前提として、全ての人にとって「自由な働き方」が必ずしも合っていたり、求められているわけではないという認識も必要と思います。
「多様で自由な働き方」に隠れた強み
「多様で自由な働き方」でないものの典型例として、従来通り普通にオフィスに出社して仕事して帰るという昔からの働き方があります。
これは「自由な働き方」の代表格であるリモートワークやフレックスタイム制には反するものですが、実は多くの社会人にとって、最も生産性高く働ける方法なのではないかと思います。
というのも、ある程度の時間が確保され管理されているという環境設定は、自らを「仕事モード」に切り替えやすく、すぐに相談できる人もそばにいることから見ても、生産性が向上しやすいからです。
さらに、社内のメンバーと日頃から頻繁にコミュニケーションをとることから仕事を円滑に進めることにも繋がり、上司や同僚からのフィードバックによって早期の成長とやりがいを感じやすくなると考えられます。
「自由」に囚われない「柔軟な働き方」を
ここでは「自由な働き方」を推奨しすぎていることへの危惧という目線からお話してきましたが、個々人によって「自由である方が生産性高く働ける人」もしくは「管理されている方が生産性高く働ける人」と個別に分かれるものだと思います。
こうした個別性に対する選択肢を担保する柔軟性こそが多様性であり、自由の本質ではないでしょうか。
もちろんリモートワークなど新しい選択肢が増えていく事そのものは、意義が大きいと感じておりますが、自由な働き方をするためには働く個人にとってもそれに相応する実力が必要であり、それそのものが幸せを担保してくれるわけではないのです。
第三者の意見やトレンドに流される事なく、自分自身にとっての幸せな働き方は何か?
また、自由な働き方を選べるようになるために今後どういったスキルや実力を高めていくべきか?
をまずは一人ひとりが考えてみる事が重要なのではないでしょうか。