今なお百万柱が眠る海外戦没者と遺骨収容
「天皇の島」を訪問される天皇陛下
4月8日のきょう、天皇皇后両陛下が戦没者慰霊のため、南太平洋のパラオを訪問されます。
戦没者慰霊での訪問は両陛下のたっての希望とのことで、現地に施設が無いので海上保安庁の巡視船を宿舎にされるなど、異例ずくめの訪問となっています。それだけ、今回の慰霊への想いが強いものと推測されます。
第一次大戦の戦後処理の結果、現在のパラオを含む南洋諸島は日本の委任統治領となり、第二次大戦では主要な戦場の一つとなりました。この地域における戦闘の中でも、熾烈を極めた攻防が行われたペリリュー島は、米軍から「天皇の島」と呼ばれた事が知られています。両陛下にとっては因縁浅からぬ場所と言え、9日にペリリュー島の慰霊碑を訪問される事は、歴史的にも意義のある事です。
両陛下が訪問されるペリリュー島にいた日本軍1万人はそのほとんどが戦死し、その中には労働者として徴用されていた3000人の朝鮮人も含まれています。わずか13平方キロメートルの小島で1万人が亡くなりました。そして、日本国外のアジアから太平洋の広大な地域では、およそ240万人の日本人が亡くなりましたが、その半数の遺骨が未だに異国の土、あるいは海中で眠り続けています。
未だ半数が海外で眠る海外戦没者
約240万人の海外戦没者のうち、平成25年度末時点で収容された遺骨は127万柱。未だに113万柱が未収容のままで、このうち海没により収容困難な遺骨が30万柱(海没遺骨の扱いについては、拙稿「戦艦武蔵発見で考える海没遺骨」を参照)、住民感情など相手国事情で収容困難な遺骨が23万柱ありますが、収容可能とみられている60万柱は未だに外地で眠り続けています。
戦後70年を迎える事を受け、政府は今年度から10年間を遺骨収集の強化期間と位置づけ、遺骨の収容を進める方針です。しかし、終戦から70年という歳月による風化等により、遺骨の捜索・収容は過去以上に困難が予想されます。
そしてなにより、遺骨収容を担う人出が不足しています。戦没者の遺骨収容事業は厚生労働省の管轄ですが、現地で収容を行う人員はボランティアがその主力になっています。多くのボランティアは、少なからぬ費用を自腹で負担している状態で、ボランティア個人や団体の意志が、遺骨収容を支えています。
過去には外部委託団体による杜撰な収容も行われ、現地フィリピン人の遺骨も混入して問題になるなど、国としての管理や責任のあり方も問われました。
政府は本腰を入れて取り組む以上、これまでの人員的・組織的問題を解決して収容に臨む必要があります。もはや、時間はあまり残されていません。そしてなにより、私達国民が遺骨収容へ関心を持ち、さらなる収容を訴えかけていく、国民的な動きを起こす事が重要となるのではないでしょうか。