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94歳の女性客を逮捕!大阪市営住宅で開催された「賽本引」賭博、その罪と罰 #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

オンラインカジノや大阪万博後のカジノ運営の是非が問題となる中、大阪府警が5月31日に摘発した賭博事件が話題となっています。2個のさいころを使ってその出目を当てる「賽本引(さいほんびき)」と呼ばれる古典的なもので、79~88歳の男女3人が大阪市営住宅の一室で開催し、94歳の女ら男女4人が客として参加していました。その罪と罰を含め、理解の参考となる記事をまとめました。

ココがポイント

▼警察は主催者を賭博開帳図利、客を常習賭博で現行犯逮捕し、約170万円を押収した上で、暴力団の資金源になっていたとみて捜査中

大阪市営住宅で違法賭博 「賽本引き」開いた79~88歳の男女逮捕、94歳の客も(産経新聞)

▼大阪府警は年金生活者や生活保護受給者が集まる「賽本引」の賭場を毎年のように摘発している

大阪マンション賭博で14人逮捕 西成で横行する「賽本引き」とは(東スポWEB)

▼単純賭博罪は罰金50万円以下、常習賭博罪は懲役3年以下で罰金刑なし、賭博場開張図利罪も懲役5年以下で罰金刑なし

地検前でテンピン麻雀「黒川杯」を開催したら逮捕される? 賭博罪の告発の行方は(Yahoo!ニュース エキスパート 前田恒彦)

▼単純賭博罪は処罰の根拠が乏しく、刑法から削除し、むしろ福祉的な援助策を充実させるべきだという識者も

ネットカジノ利用者の摘発 単純賭博罪はこのままでいいのか(Yahoo!ニュース エキスパート 園田寿)

エキスパートの補足・見解

胴元も客も技術や作法が求められ、心理を読むといった複雑な要素が絡む「究極のギャンブル」であるカルタ賭博の「手本引」が廃れ、そこから派生したのが2個のさいころを使った運任せの手軽な「賽本引」です。

これらは暴力団の伝統的な資金源でしたが、警察が摘発を強化し、用具の製造業者も後継者不足などを理由に製造を中止した上、高齢化により参加する客が少なくなったこともあって、一時期に比べると激減しています。暴力団も裏カジノや利益率が高い薬物の密売、特殊詐欺、公共事業への介入などにその資金源をシフトしている状況です。

現に単純賭博、常習賭博、賭博場開張図利を合わせた全ての賭博罪の1年間の認知件数は全国で例年100件から400件程度にとどまり、刑事事件全体からみると微々たるものとなっています。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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