セルフプロデュースのアイドルkolme 4年目で到達した音楽の高み(後編)
結成以来、セルフプロデュースで音楽活動を続けている3人組アイドル、kolme(コールミー)。4年目にしてリリースした3rdアルバム『Hello kolme』で、以前より評価されてきたクオリティはひとつの高みに到達した。インタビュー後編をお届けする。
カッコつけずにかわいさも許容できるように
――『Hello kolme』は歌詞の面では、今出た「Tie me down」や「Say good bye」を始め、むき出しなくらいの率直さが際立ちます。
RUUNA 20歳になるくらいまでは、カッコつけたい気持ちがありました。尖っていたというか。それがやっと着飾らない自然体の姿を出せるようになったのが、このアルバムかなと感じます。
MIMORI 妄想で書いた曲もありますけど、3人とも自分自身を露わに出せるようになりました。今までは「こういう曲を作りたい」とテーマを決めて、想像で言葉を考えていたのが、自分の想いをそのまま伝えるストレートな詞が多くなりました。
KOUMI リアリティが今作の聴きどころだと思います。私が一番好きなのは、るうちゃん(RUUNA)作詞の「My everything」。両親のことを書いた曲で、今朝も電車の中で聴いていてウルッときました(笑)。
RUUNA 私は妄想で書くのが苦手で、前からテーマは地元のこととか身近なものにしてきましたけど、今回の2曲は今までで一番スラスラ書けました。内面をさらけ出さないと皆さんに共感してもらえないし、ハマりや響きも自然に意識して言葉を選べるようになりました。
――サビ頭の“Mommy”に“Daddy”という呼び掛けから、できたそうですね。
RUUNA そこは適当な英語の仮歌では“Funny”になっていたんです。「ここがキャッチーだと素敵な曲になる」ということで、“ジョディー”とか“マリー”とか人の名前をいろいろ入れて相談したら、“マミー”と“ダディ”が響きがかわいいと。そこが決まったら、2~3日で書けました。
――“あなたのような人になりたい”“あなたみたいな人を見つけたい”というのも、RUUNAさんのご両親に対する率直な気持ち?
RUUNA 自分の中にある母と父のイメージをそのまま言葉に起こした感じです。高校生の頃からこの活動をしている分、家族のありがたみは実感してましたけど、上京して4年目を迎えて改めて大切さがわかって、やっとその想いを形にできました。両親には「そういう曲を書いたんだよね」と言いましたけど、恥ずかしいので感想はまだ聞けてません(笑)。
――跳ねたメロディやダンサブルなサウンドともハマってますが、元のデモだと「kolmeとしてはポップすぎる」という話があったとか。
MIMORI 「そこまで行っちゃうと、私たちにはかわいすぎて表現しにくい」ということはよくあります。そうするとメロディやトラックを自分たち寄りに変えますけど、「My everything」はいつもよりかわいらしくなって、それも許容できるようになりました。
RUUNA 何となくかわいさを遠ざけている部分が、ずっとあったんですけど。
MIMORI 「私たちらしいかわいさなら、いいんじゃない?」と思えるようになってきました。女の子にもたくさん聴いてもらいたいし。
RUUNA 最初はもっとロック調で明るい雰囲気だったのを、少し落ち着かせました。自分たちと楽曲のテンションが同じくらいなのがベストで、私は「イエーイ!」みたいなタイプではないので(笑)。少し上品さを入れて、この形に落ち着きました。
コアとポップのバランスは常に考えています
――そもそもkolmeの音楽性は、クールとポップがせめぎ合うギリギリのラインを行っている感じがします。
MIMORI そのバランスは本当にメンバー3人とスタッフさんで話し合いながら作っています。私の曲がコアに行き過ぎると、2人から「ちょっとヘンだよ」と言われたり。
KOUMI 3人それぞれ聴いている音楽のジャンルが違うので。私とみもちゃん(MIMORI)は洋楽で、るうちゃんはJ-POP。意見が対立することはあります。るうちゃんが「もうちょっとJ-POPっぽさが欲しい」と言ってきたり、私が「もっとクセのある感じにしよう」と言ったり。
MIMORI そのせめぎ合いからバランスを見て作りますけど、それが大変だとは思ってません。全員が納得できるものにしたいので、誰か1人でも妥協するのは良くない。3人一致して自信を持てる出来にするためには、当たり前の作業というか。
――だからこそクオリティの高い楽曲ができるんでしょうね。今回のアルバムで、特に難産だった曲はありました?
MIMORI 「Why not me」の歌詞には1ヵ月かかりました。テーマは決まっていたんですけど、言葉の響きを念入りに考えたので。さっきも言ったように3人とも発音の仕方が違って、「RUUNAさんが歌うなら、この歌詞だと響きが良くならない。こうみんなら、この言葉のほうがいい」とか、ひと言ひと言にこだわりました。
――単純に言葉が出てこなかったわけではなくて?
MIMORI 「ここで何て言ったら気持ちが伝わるだろう?」って出てこないこともありました。本当は1週間で書かなきゃいけなかったのに、怒られながらレコーディング当日の朝まで書いてました。こうみんと英語詞のやり取りもあって、(共同生活している家で)部屋の電気が消えていたから寝ちゃったかと思ったんですけど、「ごめん。朝までにお願い」ってメールしたら返ってきました。
KOUMI 携帯はいじってました。
――この曲、テーマは「好きになってはいけない人を好きになってしまった」だそうで。
MIMORI サウンドが切なポップという感じだったので、そういうテーマが合うんじゃないかと。マンガや小説で、ヒロインの恋の障害になるキャラクターがいるじゃないですか。私はヒロインを好きにならず、「こっちの子のほうがいいのに。性格はちょっと悪くても、この子なりに一生懸命なんだよ」と思いがちなんです(笑)。マンガの中では、その子の想いはほとんど描かれないけど、そっちの気持ちになって書いてみました。
カッコいい英語がパッと出てくるようになって
――自分でスピンオフを作った感じですかね。ここまで主に楽曲作りの話を聞いてきましたが、表現するうえで、メインヴォーカルのRUUNAさんのスキルアップも大きかったのでは?
RUUNA MIMORIに「息の使い方を勉強したほうがいい」と言われました。初期の頃は強く歌うことが多くて、それからウィスパーボイスを使えるようになったり、できることが少しずつ増えました。ただ、最終的には技術より気持ち。MIMORIが書いた詞に関しては、世界観に色付けすることを意識して歌っています。
MIMORI 歌詞の1行ずつ、「ここはこういう意味がこめてある」と全部書いて送りました。特に「The liar」は、あえてRUUNAさんの声に合わせずに私の好きなメロディで作って、何度も一緒にスタジオに入って歌ってもらいました。
RUUNA MIMORIがピアノを弾きながら。
MIMORI 声に合わせるだけだと先に進めないと思って、殻を破ってもらうために、RUUNAさんの苦手な音の上がり方や早口も入れたんです。RUUNAさんは自分の中で一度噛み砕かないと表現が出ないタイプなので、一緒に曲の解釈を念入りに進めました。
RUUNA 私のほうから「こうしたほうがいいんじゃない?」と提案したこともあります。
MIMORI 3人は誰が上とかなくて、それぞれの担当分野には口は出さないようにしてますけど、意見の出し合いは本当にたくさんしました。
――RUUNAさんはボイストレーニングは受けているんですか?
RUUNA 最近はやってません。2年前くらいに受けていたんですけど、かえって自分の歌い方がわからなくなってしまって。そういう時期があったからこそ、やっと自分らしく気持ち良く歌えるようになりました。最近は好きなアーティストさんの歌い方をマネしてみて、自分にない部分を研究しています。
――どんなアーティストのマネを?
RUUNA 最近だとCharaさんとか。ウィスパーが多くて、めっちゃ難しいです。だからこそ、チャレンジしたいなと。
――KOUMIさんの英語ラップも4年前から変わってきました?
MIMORI 今までは語り口調が多かったのが、今作ではメロディアスなラップになって、色が付いたと思います。
KOUMI 「Why not me」の2番終わりのラップの“No way out, in the deep blue sea, floating”の歌詞が書けたときは、「なんて素晴らしい!」と自画自賛しちゃいました(笑)。
MIMORI こうみんは最近どんどん英語が堪能になって、普段の会話でも「それafraidして」とか英語が入りますけど(笑)、歌詞で「こういうことを英語で言いたいんだよね」と言うと、ニュアンスを理解してもらったうえで、前は出なかったカッコいい言葉がパッと来るようになりました。
KOUMI 確かに、前はみもちゃんから送られてきた日本語を見て「これは英語にできないな」ということが多かったんですけど、最近は自分なりに解釈して書けるようになりました。
――曲中の英語比率も増えましたね。「No need to rush」は全部英語だったり。
KOUMI あの曲では今までと違う歌い方をしてみました。R&Bシンガーふうに高く伸ばしたり。
MIMORI あの伸びはきれいだね。R&Bシンガーって、歌の最後にフェイクを入れるじゃないですか。ああいうのを意識したメロディです。サビは海外のレトロな歌番組というか、クラブみたいな場所で黒人の方が楽器を弾いていて、シンガーがイスに座って歌うイメージ。こうみんはハイトーンが得意なので、行けるかなと。
KOUMI 今までで一番くらいの歌いやすさでした。こういう洋楽も聴いていたので、自然に学べていたと思います。
――これだけクオリティの高いアルバムを作って、あとは「どう売れるか」ですね?
RUUNA それは永遠のテーマ。でも、「こういう音楽で行きたい」と迷わずやり続けてきたからこそ、今の形があると思います。始めた頃は「何だこれ?」みたいな反応が多かったのが、配信でもたくさんの方に聴いていただけるようになったので、これからもコツコツやることがすべてだと思います。
MIMORI まだまだ知ってもらえてないのは、自分たちの実力が足りないから。もっともっと良い作品を作らないといけないし、アピールの仕方もSNSとかでいろいろ考えたいと思います。
KOUMI 去年の『紅白歌合戦』を観ていたら、Suchmosさんやあいみょんさんが初出場されていて、そういう音楽もどんどん受け入れられてきているのかなと思いました。私たちにもチャンスが回ってくるかもと、ちょっと期待してます(笑)。
RUUNA 今回のアルバムで、「こうなりたい」とイメージしてきたものが形になって、ひと区切りした感じがします。幅がすごく広がって、次はどんな方向にも行けると思っていて、どうしようか楽しみ。いい意味で気負わず、楽しみながら音楽を作っていけたら。
MIMORI 自分たちが良いと思うものを作り続けて、自信のある音楽で勝負していくので、それを皆さんに受け入れてもらえたら一番幸せですね。
『Hello kolme』
発売中 avex trax
Type-A(CD+DVD) ¥5000(税込)
Type-B(CD+DVD) ¥5000(税込)
Type-C(CD) ¥2700(税込)