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『3C不倫』でドロドロと美しさを行き交う莉子 「感情を出すシーンは自分でもどうなるかわかりません」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『3年C組は不倫してます。』で主演の莉子 (C)日本テレビ

18歳成人が導入されて高校生同士が結婚できるようになり、学園不倫が衝撃の展開を迎える『3年C組は不倫してます。』。初恋の相手と再会しながら、彼が結婚してしまったことから悲劇を引き起こす……という役で莉子が主演している。モデルから人気を博し、近年は女優として胸を打つ演技を見せてきた。今回も純愛ゆえに不倫に墜ちて葛藤する姿が、ドロドロのストーリーの中で切なくも光を放っている。

役の感情を大切にできるようになりました

――2年前に『きさらぎ駅』で取材させてもらったとき、「私はほぼ初めての演技で主演をやらせていただきましたけど、この1~2年で成長して、またあの場所に戻りたい」と話されていました。2年経って今、本当にそうなっていますね。

莉子 ありがたいことにお話をいただく機会が増えて、お芝居に向き合う日々で、あっという間に2年が過ぎていました。

――演技に関して変わったところもありますか?

莉子 楽しめるようになってきました。『きさらぎ駅』の頃は、とにかくいろいろな現場を経験して、お芝居の基礎を学ぶ期間だったんです。現場でどういればいいかも探り探りでした。だいぶ場数を踏ませてもらって、そういう基本的なことで心配はなくなって。その分、お芝居のことを考える時間が増えたら、楽しさが大きくなった気がします。

――今回の『3C不倫』でも、主役として自信を持って臨めている感じですか?

莉子 今も緊張はすごくします。でも、それ以上に、この役はどう考えているのか、感情の部分を大切にできるようになって。この1~2年で、役者として少し余裕が出てきたのは感じます。

(C)日本テレビ
(C)日本テレビ

今だから描ける作品はありがたいです

――昨年末からの『SHUT UP』や前クールでゲスト出演した『GO HOME』でも、莉子さんの演技がすごく胸に響きました。

莉子 ここ1年ほど、社会問題に焦点を当てた作品で、今どきの子に刺さる役を演じさせていただくことが増えました。今回の『3C不倫』も今だからこそ描ける作品で、すごくありがたいなと思います。

――そんな中で、莉子さん自身が覚醒したところもないですか?

莉子 自分のお芝居をオンエアで観て、納得できたことは本当になくて。放送されたあと、「あのシーンが良かった」「この莉子ちゃんの表情に惹かれた」といった声をいただいて、やっと「皆さんに観ていただけるレベルで良かった」と思えるくらいです。

何ごとも書かないと頭に入ってきません

――役作りノートは今もあるんですか?

莉子 ずっと書いています。何ごとも書かないと頭に入ってこないんです。中学の頃のテスト勉強から、読むだけだと覚えられなかったタイプで、体質的に書くことが合っているみたいです。

――Z世代の最先端を行くイメージの莉子さんが、携帯に打つのでなく、ノートに書いているんですね。

莉子 そこはアナログです(笑)。確かに不思議ですけど、書くことだけは続けています。

――『3C不倫』の上村蒼役に関しては、どんなことをノートに書いたんですか?

莉子 撮影が始まる前に、プロデューサーさんから「自分と似てる部分を見つけてほしい」と言われました。取り巻く環境とかは似てないですけど、蒼の性格を書き出して、似てそうなところや役に持っていけそうなところにマルを付けたりしました。あとは「この台詞はここを強く言うかな」とか、思い浮かんだことを殴り書きする感じです。頭の中にあるものを、文字に起こしていく作業をしていました。

辛くても明るく振る舞うのは似ています

――蒼と似ていると思ったのは、どんな部分ですか?

莉子 ベースは明るいタイプなのと、辛いことがあっても明るく振る舞ってしまうところは、わりと似ているかもしれません。そこは役に活かせると思ってメモしました。

――初恋だった橘伊織が結婚すると知ったあと、学校で「伊織から聞きたかった。友だちとして。おめでとう」などと言ってました。

莉子 そんなふうにワンクッション挟んで、「引きずってないよ」みたいにわざと明るく登校したのも、私が同じ立場だったら、絶対そうするだろうなと思いました。

――蒼は父親のことがあって不倫に嫌悪感を持つだけに、伊織に想いを寄せながら葛藤が大きいようですね。

莉子 そこは想像力を働かせました。蒼はお父さんが不倫をして、お母さんと離れているから、不倫から受けるダメージは人一倍大きくて。その表情はわかりやすいほうがいいかなとか、ずっと考えながら演じていました。

「何か言ってよ!」とは思いました

――伊織の元カノで妊娠して結婚した琴音から、婚姻届に証人としてサインを求められたところでは、蒼は伊織を何度も見やっていましたが、伊織はうつむいて無言のままでした。

莉子 伊織に最後の望みをかけて「何か言ってくれないの?」という目線の送り方と、何も思わずに見るのとは違うんですよね。目線ひとつで蒼が何を考えているか見せたくて、どんな表情なら伝わるか、監督と話し合いました。考えて演じるのは当たり前のことですけど、この作品はより考えないとできなくて。

――あそこで何も言わない伊織を、莉子さんとしてはどう思いました?

莉子 「何か言ってよ!」というのはありました(笑)。プロデューサーさんも「前半は伊織は視聴者から『何をしてるんだよ』と言われる立場」と話していて。でも、実際に想像もしてなかったことが起きたとき、人間は何も言葉が出ないのではないかとも思います。だから、ある意味リアルですね。

――あの喫茶店での4人のシーンは、現場もピリピリしていたんですか?

莉子 台本のページ数的に結構長いシーンで、ピリピリというより、みんな「ここを撮り切ろう!」と気合いを入れて、撮影を進めていました。

戸惑いと怒りの間の葛藤を出したくて

――3話の最後で伊織にバックハグされて、「俺が好きなのは蒼なんだ」と言われたのも、蒼を戸惑わせていました。

莉子 戸惑いと怒りの間みたいな感情を出したかったシーンで、難しかったです。「何で今さら?」という想いと、怒りたいわけではないけど「だったら婚姻届にサインなんてさせないで!」という素直な感情との葛藤があって。

――「私だって伊織のことが好きだった!」などと爆発しながら、息を切らせていました。

莉子 自分で何が何だかわかってないけど、とにかく思っていることを言っておきたい、みたいな感情だったので、そうなりました。心も体も大変なシーンでした。

――家に帰ってから、母親にも当たっていました。

莉子 あそこは監督に「行っちゃっていい」と言われました。学校でいろいろあって、帰ってきたら養育費請求の書類を見てしまって、蒼はもうワケがわからなくなっていたので。ここは全部吐き出してしまおうと、かなり気持ちを上げたつもりでした。でも、オンエアを観たら、わりとナチュラルだったというか。そこが私にとって、お芝居の難しさでもあり楽しさでもあると、日々感じています。

――普段はそこまで感情が高ぶることはないですよね?

莉子 あんなに大きい声を出すこともありません。今回は泣き芝居や感情を表に出さないといけないシーンが多くて。普段やらないから、本番で「よーい、スタート」が掛かるまで、自分がどうなるのかわかりません。毎回ぶっつけ本番みたいな感じです。

泣こうと考えるのはやめました

――そういうシーンを撮る前は、集中して気持ちを作っているんですか? あるいは、カメラが回ったら急に切り替えたり?

莉子 時と場合によりますけど、今回は順撮りでなかったこともあって、集中しないと役に入れない瞬間もありました。行けると思う現場では、直前までメイクさんとしゃべっていて切り替えないと、逆にできないこともあります。そういう感覚は最近掴めてきましたけど、今回はとにかく考えることが多すぎて。自分の中で整理がついた状態でないとできませんでした。

――伊織の友だちの奏多に「好きな人はいるの?」と聞かれたところとか、涙を流すシーンもたびたびあります。

莉子 涙はなおさら役に入ってないと出ません。でも、出ないときは出ないものと思っています。涙がすべてではなくて、感情をそこまで出せれば十分かなと。特に今回は泣き芝居が多い分、泣こうと考えるのはやめました。自分の感情のままで一回やってみて、ダメだったら話し合う形でした。

――高校生不倫ということで、普通の三角関係とはだいぶ違う感覚ですか?

莉子 全然違います。軽く扱っていいテーマではないと思いますけど、視聴者の方には作品として楽しんでいただきたくて。そこも撮影で考えないといけないところでした。

大切な思い出がキラキラ輝くように

――1話の中学時代や伊織と夜の学校に忍び込むシーンは、青春な感じでした。

莉子 ああいうところは楽しくて笑顔でしたけど、逆に中学生らしい初々しさを21歳で出さないといけなくて(笑)。伊織役の杢代(和人)くんと「私たちは中学生」とおまじないのように口に出して、キラキラできるように頑張りました。

――考えたら、蒼と伊織はひと夏会っただけで、3年間も互いを忘れなかったんですよね。

莉子 だからこそ中学時代の思い出を大切に描きたいと、監督がおっしゃっていました。その思い出が輝くほど、不倫関係がドロドロに見えていくという。そういう意味でも、中学時代の描写は大切でした。

――夜の高校のほうは?

莉子 今回の作品は映像がきれいな中でも、よりきれいに見えたシーンでお気に入りです。お母さん役の国仲(涼子)さんが、1話が放送されてから現場でお会いしたとき、「2人が走っているシーンが本当に良かった」と絶賛してくださいました。それだけで十分嬉しかったです。

――走るシーンも多いですよね。

莉子 多かったです。撮影期間は真夏で、映像はきれいで伝わらないと思いますけど、汗だくになっていました(笑)。運動は好きなので、走るのがイヤとかはないんです。でも、ドローンだと何カットも撮るから、暑い中でクッタクタでした。

きれいなシーンはまた出てきます

――他に特に印象に残っているシーンはありますか?

莉子 教室の窓際のキスシーンは、カーテンをひらひらさせる風を、ベランダでスタッフさんがめちゃめちゃ暑い中で吹かせてくれていたんです。私たちがガラッと窓を開けた下で、皆さんが汗だくになっていて。SNSでは「不倫ドラマとは思えないきれいなシーン」と言われてましたけど、スタッフさんのお力添えがあって成り立っています。

――あそこはお互い体には触れずにキスしていました。

莉子 病院から教室に行くまでの道でも、手が触れそうで触れないくらいの距離を意識して歩くように言われました。1話に戻ったような初々しさが若干あって。不倫の恋に一歩足を踏み入れてしまう瞬間ということで、お互い「いいのかな?」と思いながらキスしてしまう感情を見せました。

――言葉は交わさない中で。

莉子 ストーリーはどんどんドロドロしていきますけど、きれいなシーンはまた出てきます。そのギャップがこの作品の見どころだと私は思っているので、注目していただけたら。

結末までの驚きは大きいと思います

――毎回挿入されてきた、誰かが血まみれで倒れているシーンに至る展開も、いよいよ始まったようですね。

莉子 私は台本で結末まで読んだとき、意外でした。視聴者の方も「それでこうなったんだ!」という驚きは大きいと思います。

――演じていて、しんどくなったりもしました?

莉子 後半に進むにつれて、よりしんどくなる展開が待っていました。たぶん急にハッピーにはなりません(笑)。

――オンエアはリアルタイムで観ています?

莉子 お仕事が被ってないときは観ています。インスタのストーリーに「観てるよ」と載せると、ファンの子も「私も観てる」と送ってきてくれて。年下も多くて、「テスト勉強があるのでTVerで観るね」とわざわざ言ってくれるのも嬉しいです。友だちや同業の方には「テレビをつけたら莉子ちゃんが出てきた」とよく言われます。お仕事を終えて、家に帰って落ち着いたら、テレビで流れているような時間帯なので、観てくださっている方が多いみたいです。

周りでドラマみたいなことは起きてません

――1話で蒼は伊織に「将来結婚したいと思う?」と聞いていました。莉子さんがそう聞かれたら、どう答えます?

莉子 現実味がないですね。生涯ずっと1人はイヤですけど、結婚願望はないという謎の感覚です。今はお仕事が楽しすぎて、ずっとやっていきたい気持ちが強いだけです。

――結婚にロマンチックな夢も抱いてないと。

莉子 素敵なものだと思いますけど、いろいろ大変そうですよね。友だちがもう結婚していて、お子さんもいて、毎日ママをやっているのはカッコいいし尊敬しています。それはそれで幸せだと思いますけど、今の私が現実的に考えるのは難しいです。

――蒼は母親には「一番好きな人を諦めて良かったの?」と言ってました。そこはどう思います?

莉子 私なら一番好きな人でも、彼女がいるとわかった時点で恋愛対象から外れます。もし蒼みたいに初恋の人と再会したら、そう言い切れないところもありますけど、そんなドラマみたいなことは私の周りでは起きてないので(笑)。やっぱりナシかなと思います。

現状維持を目指して、あわよくば上に

――最初に2年前の話をさせていただきましたが、これからの2~3年で期することはありますか?

莉子 明確に「この年までに何かをしたい」というより、現状維持を目指して、あわよくばそれ以上のことができたら嬉しい感じです。高みを目指したり多くを望むのでなく、私のお芝居をいいと思ってくれる方がいたり、作品に呼んでいただけたら嬉しくて。ひたすら目の前のことに向き合うのに必死で、お仕事を続けていければいいなというだけです。

――ドラマ主演が続きましたが、次はGP帯で……みたいなことを考えたりは?

莉子 もちろん役者である以上、そういう機会があればありがたいなと思います。でも、絶対にやりたいというよりは、今はひとつひとつを大事にしていく時期のように感じます。

――『3C不倫』がクライマックスに入るとクリスマスも近づいてきますが、莉子さんは盛り上がるんですか?

莉子 盛り上がります。毎年、友だちとクリスマスマーケットに行ったり、家でパーティーをしているので、今年も何かしたいです。ドロドロしたドラマの結末を見届けながら、クリスマスパーティーをするのもいいですね(笑)。

N.D.Promotion提供
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Profile

莉子(りこ)

2002年12月4日生まれ、神奈川県出身。2014年からモデルとして活動。2018年にドラマデビュー。2021年に『ブラックシンデレラ』で初主演。主な出演作はドラマ『ファイトソング』、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』、『怖れ』、映画『女子高生に殺されたい』、『なのに、千輝くんが甘すぎる。』、『違う惑星の変な恋人』など。ドラマ『3年C組は不倫してます。』(日本テレビ)、『インフォーマ-闇を生きる獣たち-』(ABEMA)に出演中。

『3年C組は不倫してます。』

日本テレビ・火曜24:24~

公式HP

(C)日本テレビ
(C)日本テレビ
芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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