セルフプロデュースのアイドルkolme 4年目で到達した音楽の高み(前編)
アイドルグループ出身で楽曲制作からパフォーマンスまでセルフプロデュースで活動する3人組・kolme(コールミー)が、3rdアルバム『Hello kolme』をリリースした。ブラックミュージックのテイストがベースのクールな音楽性は以前より高く評価されてきたが、今作は「イメージしていたものが4年かけてやっと形になった」とメンバーが言う自信作。実際そのクオリティには目を見張るものがある。
仙台を拠点にするアイドルグループの同い年メンバーだったRUUNA、KOUMI、MIMORIで結成し、高校卒業を前に2015年3月にメジャーデビュー。MIMORIが全曲の作曲を手掛け、作詞は3人で分担。リーダーのRUUNAがメインヴォーカル、KOUMIがダンスの振付と英語ラップを担当する。
ユニット名は3人の名前から取り、表記は「callme」だったが、海外進出を見据えて英語での無用な意味付けを避けるため、昨年9月にフィンランド語で“3”を意味するkolmeと改名した。
満を持して2年半ぶりに発売のアルバム『Hello kolme』には、シングルや配信リリースされていた作品も含む全12曲を収録。この1枚に到達するまでの取り組みを3人に聞いたインタビューを、前・後編の2回に分けてお届けする。
最初からやりたかった音楽がやっと形になりました
――『Hello kolme』について、RUUNAさんがブログで「4年前の理想の形が詰まっている」と書いていました。当時の理想とは、どういうものだったんですか?
RUUNA 「カッコいいグループでいたい」という気持ちがありました。デビューシングルのカップリングの「Falling for you」ができたとき、「こういう方向性を高めたい」と思って、そういう曲を作ろうとしてきましたけど、実力不足でそうならないもどかしさがずっとあったんです。今回で言えば「The liar」や「Tie me down」みたいな曲を作りたいと思っていました。
MIMORI 本当に実力が足りなくて、やりたいと思ったことが形にならず、違うものになっていたんです。
――1stアルバムから十分カッコいい曲が揃っていたと思いますが。
MIMORI そのときなりの全力で、良い作品ができたとは思ってます。でも、やっぱり自分たちの目指しているものは、もっと上にある感覚がありました。
――MIMORIさんの作るメロディは、よりヒップホップ色が強まってきたのでは?
MIMORI それはありますね。最近は少しずつ実力がついて、好きな音楽を自分たちでやれるようになりました。3人それぞれ音楽の趣味は違いますけど、私は特にジャズ系のヒップホップが好きなので、そういう曲をいっぱい聴いて勉強しながら制作を進めました。
KOUMI 私も洋楽が好きで、前は海外のチャートに入ったヒット曲をよく聴いてましたけど、最近はクリエイター的な音楽に行ったり、ジャズも聴くようになりました。
RUUNA 私はJ-POP派で、最近はライブでも「スナック秋元」というコーナーを作って、「ルビーの指環」(寺尾聡)や「接吻」(オリジナル・ラブ)をカバーさせてもらいました。80年代、90年代の日本の曲って、メロディがすごく良いじゃないですか。何年後に聴いても染みる。今回のアルバムでもJ-POPらしさを忘れず、でも、2人の好きな洋楽のテイストも入れて、バランス感が今までで一番良かったと思います。
MIMORIは中学生の頃から趣味としてDTMで曲を作っていたが、本格的に取り組んだのはcallmeを結成してから。当時の担当ディレクターは彼女のデモ音源を聴いて「素直なメロディではなくて展開がちょっと変わっていたりして、その分、引っ掛かりがありました」と話す。
セルフプロデュースで音楽活動を始めるに当たり、3人はR&Bやヒップホップの歴史、音楽用語辞典、ジャズのコード譜……といった書物をたくさん読んで勉強したという。
――曲の作り方が以前と変わってきた部分もありますか?
MIMORI メロディに関しては自分が好きなように作るだけでなく、メンバーの個性に合わせるようになりました。RUUNAさんの息の使い方がわかってきたので、「ここでブレスするから、次のメロディを伸ばしたほうがきれいだな」とか、こうみん(KOUMI)は高い音のほうが声が映えるから「こういうメロディにしよう」とか。
KOUMI 私が英語で作詞した「No need to rush」は、ガラッと作り方を変えました。アレンジャーさんに「好きなアーティストの歌詞を取ってきて」と言われて、MIMORIと一緒にスタジオに入って、その歌詞を仮で歌いながらメロディを作っていったんです。「この母音で伸ばしたらきれいに聞こえる」とか明確にわかりました。
恋愛での欲望を露わにして詞を書きました(笑)
――以前から1曲作るに当たって、最初から何らかのテーマがあるようですね。「Tie me down」だと、スイングジャズありきだったんですか?
MIMORI シェイクするリズムがキモになっています。スイングするメロディとか音の使い方とか、「こういう新しいアプローチをしたい」というのは明確にありました。
――トラックの疾走感にメロディと歌詞がシンクロして高い完成度ですが、主人公の女性は重いというか、怖い感じがします(笑)。
MIMORI よく言われます(笑)。でも、トラックが攻めた分、歌詞も思い切りドカンと行かなきゃ追いつけないと思って。私の「こういう恋愛をしたい」という欲望を露わに出して、「束縛されたい」というような言葉をいろいろ詰め込みました。
――「束縛されたい」がリアルな欲望なんですか?
MIMORI リアルです(笑)。「Hello No Buddy」は私自身の「恋愛がわからない」というリアルでしたけど、「Tie me down」は「もし恋をするなら……」という。実際に恋をしたことがないから、束縛がどんなものかわかりませんけど、みんなが「面倒くさい」と話すことを「それっていいじゃない?」と思ったりもするので、めちゃくちゃ束縛されたいです(笑)。
――歌詞では“飽きるほど捕まえて”ともありますが……。
MIMORI その詞を書いた頃、ゲームでヤンデレキャラにハマっていたんですよ(笑)。そのゲームが、ノーマルエンドだと部屋に閉じ込められて終わりという。結局、夢オチだったんですけど、それにめちゃくちゃときめいてしまって(笑)。「こういう恋人がいたらいいな」とインスピレーションを受けて、書いてみました。
――危ない気もしますが(笑)。KOUMIさん作詞の「Say good bye」もひどいことを言ってますよね。“君の悪いところはもう知り尽くしたけど 私には関係ないから”とか(笑)。
KOUMI 「永遠の愛はない」ということをバッシリ言ってます(笑)。相手を好きな時期は恋は盲目で、「自分だけが彼の良いところをわかっていればいい」と思いますけど、やっぱりダメなところが積み重なると化けの皮が剥がれるというか、逆にイヤなところしか見えなくなってしまう。そのタイミングを迎えた女性の想いを書きました。
MIMORI 冷めた瞬間の怖さがすごくリアル。
KOUMI 「もう出て行って」と(笑)。英語詞のところが一番バシッと言ってます。日本語だとキツすぎて書けないことを、全部伝えました(笑)。
MIMORI 私とRUUNAさんがグサグサ来たところがあります。バースに“意味のない会話なんて時間が勿体無いよ”とありますけど、私たち2人は本当に意味のない会話が多すぎて(笑)。特にRUUNAさんは、どうでもいいことをこうみんに投げ掛けるんです。
RUNNA 「ねえ、こうみん。今日のチーク、ピンクとオレンジとどっちがいい?」とか(笑)。
MIMORI それで「ピンク」と言われても、自分がオレンジがいいと思えば、結局オレンジにするんです(笑)。なのに、聞いてくるという。
KOUMI 本当に意味のない会話で、うんざりします(笑)。
RUUNA そう思っているだろうなと、わかって聞いているんですけど……。
MIMORI 詞になると「やっぱりな……」って、改めてグサグサ来ました(笑)。
『Hello kolme』
発売中 avex trax
Type-A(CD+DVD) ¥5000(税込)
Type-B(CD+DVD) ¥5000(税込)
Type-C(CD) ¥2700(税込)