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浜辺美波×山下美月 静と動のイメージの裏で互いが見た意外な素顔とは?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/上飯坂一

6人の就活生が人気企業の最終選考で、急きょひとつの席を奪い合う密室サスペンス『六人の嘘つきな大学生』。大ヒット小説の映画化で、嘘と罪が暴かれていく6人の中の女子学生を浜辺美波と山下美月が演じている。女優として異なるバックグラウンドを持つ2人の共演がもたらしたものを聞いた。

こんなにたくさんお話してくれるとは

――山下さんは共演前は浜辺さんの出演作は、ご覧になっていました?

山下 もちろんです。代表作がたくさんあって、『君の膵臓をたべたい』から最近だと『ゴジラ-1.0』など、たくさん拝見させていただいてました。

浜辺 ありがとうございます。

山下 映画ではおしとやかで純粋、可憐な感じで、THE女優さんというイメージがありました。

――その印象はご本人と会って変わりました?

山下 だいぶ変わりました。こんなにたくさん、お話してくれるとは思っていなくて。撮影現場で(メインキャストの)6人の中で、女性が2人だけだったので、いろいろなことを話しましたし、笑いのツボも似ていました。前室でずっと何かをされていることもあったり、いい意味でマイペース。本当に面白い方で、今も仲良くさせていただいてます。

キャストの中で協調性が段違いでした

――浜辺さんは山下さんの出演作や乃木坂46時代の活動は?

浜辺 見ていました。『映像研(には手を出すな!)』は私も少しだけ出演させていただいたので、試写で観ましたし、周りに乃木坂46さんのファンの方がたくさんいるので、グループでの活動も目にしていて。印象としてはしっかりしていて、トゲを持ってオチをつけにいくときもあったり(笑)、サバサバしてクールな感じでした。でも、お会いしたら面白い印象のほうが強くて、協調性が段違いでした。

山下 本当ですか?

浜辺 私たちとは比べものにならないほど周りを見ていて、そこはグループで培われたものなのかなと思いました。

山下 私はむしろグループの中で協調性がないと、8年間ずっと悩んでいたんです。ひとりっ子で、わりと一匹狼な感じだったので。そこは頑張ろうと意識していました。

浜辺 今回の撮影では、美月ちゃんが6人の中で一番、全体を見ていました。

山下 嬉しい。そう言っていただけると、頑張ってきた甲斐があります。でも、6人はおのおの自由でしたよね(笑)。

ヘア&メイク/George(浜辺)、吉田真佐美(山下) スタイリング/瀬川結美子(浜辺)、鬼束香奈子(山下)
ヘア&メイク/George(浜辺)、吉田真佐美(山下) スタイリング/瀬川結美子(浜辺)、鬼束香奈子(山下)

あまり寝てないのに笑顔でタフだなと

――山下さんは「顔の印象でキツく見られる」と発言されていたことがありました。

浜辺 言いたいことをバーンと言うタイプかと思っていたら、全然そんなことはなくて。顔もかわいくて、キツそうというより、目が大きいのがとても印象的でした。

――浜辺さんは撮影中の山下さんの言動で、覚えていることというと?

浜辺 物件にすごく詳しかった記憶があります(笑)。都内で新しく建つマンションの話をよくしていて、聞いていてもわからない場所も出てきて。たくさん情報を仕入れているんだなと思いました。

――引っ越しを考えていたとか?

山下 いえ、まったく意味はないんですけど、物件を見るのが好きなんです(笑)。佐野(勇斗)くんも詳しくて、よく2人で「あそこにマンションが建ったらしいよ」とか話していました(笑)。

浜辺 あと、美月ちゃんはドラマの撮影も並行していて、一番忙しかったのではないかと思います。

山下 日曜劇場の『下剋上球児』ですね。

浜辺 『六嘘』で10何時間も撮ったあと、そっちの現場に行く予定になっていて、「明日は野球のロケです」と出て行ったり。そのタフさはすごいなと思いました。

――しかも、アイドル活動もあったわけですよね。

浜辺 ツアーとかもいろいろあって、私なら考えられません。あまり寝てないはずなのに、それを見せないで、いつも笑顔ですごいなと思っていました。

就活スーツは型に押し込められるよう

――就活について、お2人は経験がない中で、どんなイメージがありました?

浜辺 ちょうどこの撮影の前後が、昔の同級生たちの就活が終わったタイミングだったんです。なので、話は聞いていました。圧迫面接は時代的になくなったのかと思っていたら、まだあるようで、疲弊した姿も身近で見ています。本当に大変なんだろうなと想像はしていました。

山下 私も数年前に同級生たちが就活をしていて、すごく大変だと聞いていました。なかなかうまくいかないという友だちも多くて、苦しいんだろうなと思っていて。ファンの方にも「就活中なので元気づけてください」とよく言われて、「頑張って!」という気持ちでした。自分の個性や何ができるかを伝えて、人生で大人になる瞬間という感じもします。

――役でリクルートスーツを着ると、気が引き締まったりも?

浜辺 ありました。それぞれにピッタリのサイズをオーダーして作っていただいて、私と美月ちゃんでも形が全然違うんです。ピッタリだからこそ気持ちが引き締まると同時に、心がギュッと型に押し込めれるような気もしました。ハミ出てはいけない、という。

山下 私も就活メイクをして、毎朝6時か7時から前髪をバキバキに固める生活でした(笑)。就活って自分の長所・短所や大学で何をやってきたかを話して、個性をアピールする場なのに、同じようなスーツで無個性の格好で行かなければいけない。すごく緊張するだろうなと、撮影を通して感じました。

人前が得意でない心情は当てはめやすくて

――浜辺さんは人並み外れた洞察力を持つ嶌衣織、山下さんは語学力と人脈に自信を持つ矢代つばさ役。ハマる感じはしましたか?

浜辺 原作を読んだときから、私は矢代ではないと感じていました。嶌さんの人前に出るのが得意でない心情は、客観的に見て私自身のイメージに当てはめやすいと思っていて。顔も原作の表紙の絵と雰囲気が似ている気がしました。

――洞察力の部分でも、これまでアリバイを崩す役などを演じてきました。

浜辺 私に実際に洞察力があるかは別にして(笑)、推理ものはよくやっていました。ミステリー作品で謎を解いて、解説するお芝居のイメージはつきやすかったです。

山下 嶌さんは柔和で線が細く見えるけど、やるべきことはやるという人間力の土台がしっかりあって。そこが私から見て美波ちゃんのイメージとハマっていました。ちょっとミステリアスではかなげな部分もあって、ヴィジュアル的にもバッチリ重なる感じがします。

まっすぐだけど不器用なのは重なります

浜辺 私も配役を聞いたときからずっと、美月ちゃんは矢代っぽいと思っていました。目力が強い感じがすごく合っていて。キリッとした眉毛であったり、髪がピッチリしているのも、芯が一本まっすぐに通っている矢代にピッタリだなと。

――普段はあまりしてない髪型やメイクですよね。

山下 キュッと整えました。写真を見ると、こんなに平行な眉毛だったんだと改めて思います。私は矢代みたいに何ヵ国語も話せず、海外の方と交わるコミュニケーション能力もありません。でも、守りたいものや消したい過去を自分の中で昇華するために、頑張る気持ちはわかります。まっすぐではあるけど不器用で繊細なところは、自分と多少重なったかもしれません。

キツさの出し方は現場で変えようと

――山下さんは「嶌さんと相反した感じが出せたらいいなと思いました」とコメントされています。激しさを出すうえでのことですか?

山下 現場で美波ちゃんが嶌さんをどう演じられるかによって、矢代のキツさの出し方を変えようと思っていました。映画では原作と役の解釈が若干が違うところもあるんです。原作の矢代はもっとトゲがありました。でも、リアルな就活では自分をもっと偽るでしょうし、この6人が最終選考に残ったら、たぶん矢代はもう1人の女子の嶌さんをライバルとして意識すると思うんです。嶌さんに負けないくらいの柔らかさを出そうと、必死に頑張ると思ったので、私も美波ちゃんを見て、どんな感じにするか考えることにしたのを覚えています。

――理論的に演技を組み立てていったんですね。

山下 就活って、そういった駆け引きのある場所だと思い、作戦は現場で練ろうとしました。

――いじめの話が出て、1人を詰めていく矢代は怖かったです。

山下 会議室での最終選考のシーンは、2週間くらいでちょっとずつ撮っていって。この日は誰かがたくさんしゃべる、この日は矢代が怒る……と分けられていたので、気持ちを持っていくのは大変でした。でも、監督が感情から動きや立ち位置まで細かく決めてくださる方で、舞台のような感じで演じやすかったです。私は日常であそこまで感情が揺さぶられることはなくて、怒ったりもしないので、楽しんで演じていました。

好かれようとしない怒りが良かったです

――浜辺さんは逆に、嶌として冷静さを保っていたような?

浜辺 そうですね。他の人たちが躍動的だったので、私は静のお芝居で対照的になりたいと思っていました。映画の後半に繋がっていくので、経過として帳尻を合わせないといけない面と、自分の感情を大事にする面と、両方あった気がします。

――会議室のシーンは「ほぼ記憶にない」とコメントされていますが、籠りきりで撮影していると精神的にキツいところも?

浜辺 キツかったです。嶌さんはディスカッション中の会話が少なかったので、私は余計にしんどかった気がします。じっとしながら同じ部屋にいると、時間の進み方が遅い感じがしました。

――動いているほうが発散できたかもしれませんね。

浜辺 でも、みんなのお芝居を見ているのは楽しかったです。台本に書いてあったことが、こうやって出来上がるんだなと。それぞれの役の個性も、ああいう場面だからこそ出ていました。

――矢代が怒っているシーンも、そういう意味では楽しかったですか?

浜辺 はい。めっちゃ怒っていて、誰にも好かれようとしていなくて。

山下 本当にそうでした。

浜辺 そういう場面って意外と少ないので。嫌われてもいいと必死に攻撃をしていて、人間のイヤなところも見えました。美月ちゃんの目の強さと相まって、矢印が見えるくらいガツンと刺さっていました(笑)。

伏線も思い入れも出さないといけなくて

――山下さんとしては見せ場になっていました。

山下 会議室のシーンでは、私は受けのお芝居より自分が出す側だったので、考えるより前に体が動いたり、感情が先に出るところが多くて。どうしようか悩むことはあまりなかったです。逆に、8年後のシーンでは私はあまり台詞がなくて、みんながしゃべっているのを受ける側だったんです。そこの矢代の気持ちの作り方は難しくて。就活からだいぶ年月が経っていて、その間に6人で集まることもなかった中で、どう思っていたのか。原作にないシーンで、ちょっとした気持ちの絶妙な作り方を意識しました。

――浜辺さん的には、最終面接の前に6人で中華料理屋で飲んだあと、波多野祥吾(赤楚衛二)と2人の帰り道のシーンも大きかったのでは?

浜辺 波多野くんとお月様を見て会話をするシーンは、思い入れがあった分、何度かやり直しをさせてもらいました。撮影中は車の行き来が結構あったので、自分のタイミングで「よし!」とお芝居しようとしたら、騒音が入って合わなかったり。これだけ悔しい気持ちになったのは久しぶりでした。結果的にはやれることはできたと思いますし、ミステリーで逃したらいけないキーと出会わせてもらえました。

――「1人だけ落ちちゃったら……」などと言って、泣き出していました。

浜辺 すべてに伏線があるんです。思い入れの深さを出して、裏も匂わせておかないといけない。いろいろ詰め込まれていて、何気ないシーンでは終わらせられなくて、ちょっと大変でした。

中国語は撮影しながら毎日練習してました

――ちょっとしたシーンだと、山下さんはオンラインで中国語を話していました。

浜辺 完璧だったよね。本当は5分くらいしゃべっていたんです。

山下 台本では結構量があったんですけど、あまり使われていませんでした(笑)。

浜辺 会議室のシーンを撮っていたときから、合間にずーっと練習していました。

山下 中国語の台本が出来上がったのがクランクインしてからで、撮影しながらレッスンを受けさせていただいて。毎回撮影が終わってから、先生にスタジオに来ていただいて、そのままガッツリ練習の毎日でした。家に帰ってからも、ずーっと中国語をしゃべりながら、次の日の台本を読んでいました。

浜辺 ネイティブのような中国語でした。

――とりあえず台詞の中国語を話せるように練習したのでなく、基礎から学んだんですか?

山下 そうです。1から勉強させていただいて、こんなに難しいんだと初めて知りました。

使われないと思って気楽に撮ってました

――前半の6人が就活仲間としてファミレスで話すシーンは、大学生のリアルにある場面に見えました。

浜辺 あそこは台詞がほぼ決まっていなくて、監督が急に付けてくださって、ワイワイやっていました。私たち自身の仲が深まっていた時期でもあって、楽しく撮っていました。これは使われないだろうと思いながら(笑)。

山下 確かに(笑)。

浜辺 みんなで気楽に作り上げようとしていて。

山下 この6人の素顔というか、裏でも本当にずっとしゃべっていますし、それぞれの役割がある感じで、生っぽいシーンになりました。

――そういうノリで、実際に2人でごはんに行ったりも?

山下 行くとしたらみんなで、ということが多いです。

浜辺 美月ちゃんと2人でも行きたいんですけど、行ったら絶対「俺たちも誘ってよ」と言われるに決まっているんです。

山下 そうですね。

浜辺 グループLINEでずっと「行きたい」と言い合っているのに、みんなの予定が合わないんです。「忙しいから仕方ないね」と言っておきながら、2人で行ったら、たぶん怒られると思います(笑)。

8年後はちゃんとピラティスに行きたいです

――『六嘘』のクライマックスは、最終面接から8年後が描かれています。お2人の8年後はどうなっていますかね。

浜辺 32歳か……。

山下 私は33歳。

浜辺 女性としてはシビアで、変化が多い年齢かもしれません。決めているのは、30歳になるときは大叫びして盛り上がろうと(笑)。

山下 どういうこと?

浜辺 人生の第3ステージに入るので「越えるぞー!」と。30代は楽しいと聞いているので、「どうなるんだろう?」から切り替えて、そこから先の32歳はエンジョイしていると思います。

山下 私は今、毎日を生きるのに必死すぎて、8年後のヴィジョンまで考えていません。でも、健康が一番ですね。ちゃんとピラティスとか行っていたいです。

浜辺 今は?

山下 行ってないです。

浜辺 そうなんだ。行ってそうなのに!

山下 「ピラティスに行って栄養ドリンクを飲んでそうな顔」とよく言われます(笑)。でも、全然ジムにも行ってませんし、プロテインも飲んでなくて。このままだとプヨプヨの30代になってしまうので、健康的に美意識も保っていたいなと思っています。

浜辺 美月ちゃんは8年後も変わらないと思います。きっと、おばあちゃんになってもこんな感じ。ただ、貫禄は出てそうな気がします。出したくなくても出るくらいの、大スターになっているはずです。

山下 美波ちゃんは今以上に素敵な俳優さんになっていると思いますし、いろいろな面がありますよね。すごく聡明でしっかりしていて、私よりひとつ年下とは思えないくらい、大人な考えを持っています。だから、何か新しいものを生み出して、世界をひっくり返してほしいです。

浜辺 私を何だと思っているの(笑)!?

撮影/上飯坂一

Profile

浜辺美波(はまべ・みなみ)

2000年8月29日生まれ、石川県出身。2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションでニュージェネレーション賞。同年に女優デビュー。2017年に映画『君の膵臓をたべたい』に主演。近年の主な出演作は映画『思い、思われ、ふり、ふられ』、『シン・仮面ライダー』、『ゴジラ-1.0』、『サイレントラブ』、『もしも徳川家康が総理大臣になったら』、ドラマ『私たちはどうかしている』、『ドクターホワイト』、『らんまん』など。2025年1月24日公開の映画『アンダーニンジャ』に出演。

(C)2024「六人の嘘つきな大学生」製作委員会
(C)2024「六人の嘘つきな大学生」製作委員会

山下美月(やました・みづき)

1999年7月26日生まれ、東京都出身。2016年に乃木坂46の3期生オーディションに合格。2024年5月に卒業。2019年にドラマ『電影少女 -VIDEO GIRL MAI 2019-』で初主演。近年の主な出演作はドラマ『舞いあがれ!』、『さらば、佳き日』、『下剋上球児』、『Eye Love You』、『降り積もれ孤独な死よ』など。2018年より「CanCam」専属モデル。2025年3月28日公開の映画『山田くんとLv999の恋をする』にW主演。

(C)2024「六人の嘘つきな大学生」製作委員会
(C)2024「六人の嘘つきな大学生」製作委員会

『六人の嘘つきな大学生』

原作/浅倉秋成 監督/佐藤祐市 脚本/矢島弘一

出演/浜辺美波、赤楚衛二、佐野勇斗、山下美月、倉悠貴、西垣匠ほか

全国東宝系にて公開 公式HP

誰もが憧れるエンタテインメント企業の新卒採用。最終選考まで勝ち残った6人の就活生は、チームとしてグループディスカッションに臨むはずが、急な課題の変更が通達される。「勝ち残るのは1人だけ。その1人は皆さんで決めてください」。会議室という密室で、6通の怪しい封筒が発見され、6人の嘘と罪が次々に暴かれていく。誰もが疑心暗鬼になる中、1人の犯人と1人の合格者を出し、最終選考は幕を閉じた。8年後、1通の手紙が届いて犯人の死が発覚。残された5人は再び密室に集結することに……。

(C)2024「六人の嘘つきな大学生」製作委員会
(C)2024「六人の嘘つきな大学生」製作委員会
芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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