Yahoo!ニュース

【FIBA U19ワールドカップ】前半の13分間で王者アメリカ相手に戦えることを示した日本

青木崇Basketball Writer
アームストロングら高い能力を持つアメリカに挑んだ日本 (C)FIBA.com

 U19ワールドカップ史上初となるベスト8進出を果たした日本に対し、アメリカを率いるタド・ボイルヘッドコーチは3Pショットを警戒している。岡田大河を起点にボールと選手たちが活発に動く日本のオフェンスに対し、アメリカはサイズ、長さ、身体能力を生かして3Pを限定させるプランを準備して試合に臨んだ。

 日本は開始早々に6−0とリードを奪われるが、ジェイコブス晶がフローターと3Pショットをきっかけにリズムをつかむ。見事なパスワークからオープンでショットを打てる形を何度もクリエイトし、残り58秒には湧川颯斗のアシストから小澤飛悠が右ウイングから3Pを決めると、日本は21対19とアメリカからリードを奪ったのである。

「日本は3Pショットがすごくいいチームだ。試合におけるゴールは、3Pショットを打たせないことだったけど、1Qでいいディフェンスができなかった。5本を決めた日本を称賛しなければならないし、いい選手が揃っていた」と語ったのは、アメリカを率いるタド・ボイルヘッドコーチ。日本のアレハンドロ・マルティネスヘッドコーチも、「1Qはボールをシェアし、すばやく動かすいいバスケットボールができていた。いいショットを見つけだしていたし、ペイント内をうまく閉ざすなど、いいディフェンスもしていた」と、選手たちの頑張りを称えていた。

アメリカ相手でも果敢に戦い、前半の13分間は互角に渡り合りあった日本 (C)FIBA.com
アメリカ相手でも果敢に戦い、前半の13分間は互角に渡り合りあった日本 (C)FIBA.com

 川島悠翔がこの試合初得点となるティップインを決めた2Q7分4秒で26対29の3点差と、日本は試合開始から13分間ほど粘り強く戦えていた。しかし、一定の時間で選手をローテーションできる層の厚さを誇るアメリカは、ブロックショットから速攻でフィニッシュするなど徐々に持ち味を発揮。マーク・アームストロングが3Pプレーとなるドライブ、エリック・デイリー・ジュニアがダンクを叩き込むなど、ハーフタイムまでにリードを12点に広げることに成功した。

 トーナメント1回戦の中国戦で3Qの内容が悪かったアメリカは、同じ過ちを繰り返さないという意識でチームが一体化。ディフェンスの強度が高まった影響を受けた日本は、ターンオーバーから簡単に失点されてしまうシーンが増えていく。アメリカのボイルヘッドコーチが「ゲームが進むにつれて、3Pショットに対するディフェンスがよくなっていった。我々はサイズ、長さ、身体能力の高さがあるので、タフショットを打たせたかった」と話したように、後半の日本はなかなかいい形でオフェンスが遂行できなくなっていた。時間の経過とともに点差が開いたため、ファイナルスコアは105対61。しかし、2014年のU17ワールドカップでアメリカに38対122で大敗した時と違い、チームとして通用した部分がいくつもあったことは明らかだ。

3Pやドライブからのフィニッシュなど、アメリカ相手に持てる力を十分に発揮したジェイコブス (C)FIBA.com
3Pやドライブからのフィニッシュなど、アメリカ相手に持てる力を十分に発揮したジェイコブス (C)FIBA.com

 9月からハワイ大に進むジェイコブスは、NCAAディビジョン1の強豪に所属している選手たちが多い相手に、4本の3Pを決めるなどゲーム最多の20点をマーク。来季からディビジョン1の舞台で戦ううえで、大きな手応えを得た試合だったのは間違いない。もう一人の得点源である川島は、3Pを1本も決められなかったことが影響して11点に終わり、悔しい思いをすることになった。

「後半はいろいろ修正して、フェイクを使ってみたり、自分が今までやったことのないようなことにいろいろチャレンジすることができました。成功したものもあったし、まだまだ練習不足で全然通用しない部分もあったけど、いい経験になったのはよかったです」と話したように、チームプレーを重視しながらアグレッシブにプレーする姿勢は見せ続けた川島。グループ戦で苦しんだリバウンドでチーム最高の7本を記録したことは、5〜8位決定戦に向けてプラスと見ていいだろう。

ドライブからのフックショットを決めるなど、アメリカ相手に持っているスキルを試し続けた川島 (C)FIBA.com
ドライブからのフックショットを決めるなど、アメリカ相手に持っているスキルを試し続けた川島 (C)FIBA.com

 日本が次に対戦するのは、グループ最終戦で逆転負けを喫したセルビア。粘り強くディフェンスし続けること、全員でボックスアウトしてリバウンドを奪い、ペイント内の失点を30点以下にできるかが、勝敗を左右するカギになるだろう。オフェンスでは24点を献上してしまったターンオーバーの数を減らし、活発なボールムーブメントから3Pショットを10本以上成功させることができれば、勝機は巡ってくるはずだ。昨年のU17ワールドカップを経験している内藤耀悠は、残る2試合に向けて意気込みを次のように語ってくれた。

「今日に引き続き、またさらにタフなゲームが2連戦で続くので、しっかり休んんでから自分の持ち味あるフィジカルの部分、リバウンドのボックスアウトのところが徹底されてない部分もあるので、そこはしっかりやりたい。シュートチャンスがあるなら積極的に狙っていくのを、引き続きやり続けるだけです」

 ベスト8進出で史上最高順位が確定したものの、2017年の日本は10位でも3勝していた。セルビアに雪辱しての今大会3勝目は、日本にとって大きな意味があるし、世界に衝撃を与える可能性を秘めている。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

青木崇の最近の記事