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【大阪エヴェッサ・牧隼利】日本代表合宿でのチャレンジは「何ができるか」を示すこと

青木崇Basketball Writer
牧隼利 (C)Takashi Aoki

「ビックリというか、ありがたいなという感じですかね」

 代表合宿に参加できると知った時の心境についてこう語ったのは、今季琉球ゴールデンキングスから大阪エヴェッサへ移籍した牧隼利。2年前のオフにデベロップメント・キャンプに参加したことがあるが、代表の一員としてFIBAアジアカップ予選という公式の国際試合に出場するチャンスが巡ってきたのは、プロキャリア初のことだ。以前のキャンプで感じたホーバスコーチのバスケットボールについて、牧は次のように説明する。

「普段Bリーグでやるようなバスケットとはまったく違うバスケットなので、そこに新鮮さを感じました。その後ワールドカップやオリンピックを見て、このバスケットはこういう形になるんだというのを知って、すごいなと思いました」

 2013年にイランで行われたU16FIBAアジア選手権、牧は八村塁に続くスコアラーとして活躍。翌年のU17FIBAワールドカップの出場権獲得を決めたチャイニーズ・タイペイとの3位決定戦では、3本の3Pショット成功を含むチーム最多の23点を記録した。

(牧の学生時代がわかる記事はこちら

 牧は福岡大附属大濠高から筑波大に進み、大学ではキャプテンとしてインカレ制覇に貢献し、琉球ゴールデンキングスでも2022年のB1チャンピオンを経験。勝者のメンタリティを持った選手であるとともに、選手としてのキャリアを重ねるごとにゲームメイク、ドライブ、3Pショット、ディフェンスで貢献できるオールラウンドなコンボガードへと成長している。ようやく巡ってきたチャンスで、牧は日本代表に何をもたらすことができるのか? その問いに対しては次のような答えが返ってきた。

「結構武器とか特徴がある選手が多い中で、ちょっと自分はそういうタイプじゃないところもあったりするなって思いつつも、逆にそこが武器なのかなっていうのもあります。チームではポイントカードやらせてもらう時間もあったり、2番(シューティングガード)をやる時間もあったりとか、サイズの部分だったり、いろいろマルチにできるところは逆に自分の持ち味だと思うので、そこを出していけたらいいかなと思っています」

 数多くのことを堅実にこなせるという強みがある一方で、牧には“これだ!”とアピールできるところが少ない。それは自身も把握しており、日本代表を率いるトム・ホーバスコーチからも「本当に何ができるのかを自分で示してほしい」と言われたそうだ。

 昨年のFIBAワールドカップや今年のパリ五輪では、普段Bリーグで戦っている同年代の選手がいることに悔しさを感じながら見ていたという牧は、個として何ができるかを示すことの難しさに直面中。その一方で、比江島慎、富樫勇樹といった代表経験豊富な選手と一緒にプレーすることに対しては、楽しみとおもしろさを実感しているという。

 今回の日本代表合宿に招集された選手たちを見ると、FIBAアジアカップ予選のメンバー入りの競争で最も激しいのはガード陣だ。しかし、コンディション不良で不参加になったガードの選手が複数いるだけに、今回の代表合宿は牧にとって絶好のチャンス。FIBAアジアカップ予選のモンゴル戦、もしくはグアム戦で日本代表デビューを果たすことができれば、FIBAワールドカップ、ロサンジェルス五輪の舞台に立つという夢を実現するための第一歩を踏み出すことになる。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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