なでしこジャパンが国内初の国際親善試合を実施。チーム発展のカギを握る新戦力の共通点
【欧州王者と対戦】
なでしこジャパンが11月に、ヨーロッパ遠征で現ヨーロッパ女王のイングランド女子代表と対戦する。
2020年以降のコロナ禍で強豪国とのマッチメイクができない状況が続いていたが、来夏の女子W杯に向けて、理想的な相手との強化試合が実現した。
7月のE-1選手権では東アジア王者に輝いたなでしこジャパン。新体制発足から1年が経ち、“世界”との距離を把握する上でイングランド戦は重要な一戦となる。
10月には、国内で初の国際親善試合2試合を行う。6日には神戸でナイジェリア代表、9日には長野でニュージーランド代表と対戦。ナイジェリアは、アフリカ勢では最高のFIFAランク46位(日本は11位)。ニュージーランドは同22位で、W杯の開催国(オーストラリアとの共催)だ。移動も含めた中2日の連戦で、W杯本番を想定したシミュレーションもできる。
この2連戦に向けて、9月28日に25名のメンバーが発表された。海外組は、池田太監督になってからは最も多い8名となった。
攻撃の軸を担ってきたFW岩渕真奈(アーセナル)、MF長谷川唯(マンチェスター・シティ)の2名は、「コンディションなど様々な要素を含めた総合的な判断」(池田監督)で招集されなかった。一方、今夏に海を渡ったMF長野風花(NCカレッジ)、DF清水梨紗(ウェストハム)、DF南萌華手(ASローマ)らが海外組として帰ってくる。国別ではドイツ、イングランド、イタリア、スウェーデン、アメリカと、所属チームの多国籍化が進んでいる。日常的に高い強度でプレーする中で、出場機会を掴んで活躍している選手も少なくない。
池田監督は、「(海外組は)日本への移動も含めてタフさも求められるので、そういう面で(チームとしての)経験値を上げたいし、それぞれの所属チームの話も含めてコミュニケーションを取れればと思います」と、期待を口にした。
【新戦力の融合にも注目】
中盤や前線には新戦力も加わっており、新たな化学反応にも期待が高まる。
8月にコスタリカで行われたU-20W杯の準優勝メンバーから、18歳のFW浜野まいか(I神戸)とMF藤野あおば(東京NB)、17歳のDF小山史乃観(C大阪堺)の3名が選出された。同大会は池田監督をはじめとしたA代表のコーチングスタッフが兼任し、チームコンセプトも共通していた。なでしこジャパンでもその持ち味を発揮できるかが試される。
浜野は同大会で4得点を挙げ、ゴールデンボール(大会MVP)を受賞。相手の背後に抜け出すタイミングやスピード、独特の得点感覚を持ったストライカーだ。藤野はスピードとシュートレンジの広さを武器に、WEリーグでも注目を急上昇させている。小山はU-20W杯では最年少だったが、全6試合にフル出場。159cmと高さはないが、クレバーな守備と積極的な攻撃参加で、海外のスピードスター相手にも互角以上の戦いを見せた。
その3選手に加え、MF北村菜々美(東京NB)が池田ジャパンでは初招集となった。プロになって初年度の昨季はケガもあって悔しいシーズンとなったが、8月のWEリーグカップでは持ち前のテクニックとスピードで決勝進出に貢献した。
新戦力に共通するのはスピードや、複数のポジションをこなせる柔軟性だ。
アジアカップやE-1選手権で築いたチームの土台をより強固にするため、「ボールを奪うための推進力や、フィジカルスピード、判断スピード、プレースピードの中で技術を発揮できる選手」(池田監督)を多くしていきたい狙いがあるという。
もともとスピードを武器とする選手は多く、今回のチームではFW井上綾香(大宮V)、DF清家貴子(浦和)、FW植木理子(東京NB)、MF宮澤ひなた(マイ仙台)、DF宝田沙織(リンシェーピング)、MF遠藤純(エンジェル・シティ)などがいる。
もちろん、スピードといっても初速、トップスピード、瞬発力、敏捷性、判断スピード、ドリブルスピードなど、得意分野は様々。
状況に応じてその強みを効果的に活かすことができるか、今回の2試合で注目してみたいポイントだ。
相手に応じた戦い方の選択肢を広げる狙いも含めて、収穫は多ければ多いほどいい。
ナイジェリア戦はフジテレビ系列、ニュージーランド戦は日本テレビ系列で生中継される。