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イギリスが漁業でEUに巨大な譲歩。最後まで残る紛争解決とセーフガード問題:ブレグジット

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者
英国政府のサイトにはこのカウントダウン表示がよく登場する。「離脱まであと8日」。

英国の交渉担当者たちは、「合意なし」を回避するために、漁業問題のいくつか非常に重要な点で、欧州連合(EU)に譲歩することで合意した。

同じ内容の情報が、ヨーロッパ情報筋、フランス政府筋という形で、AFPやロイターなど複数のメディアから発信されている。

しかしまだ、最後のポイントで妥結がされていない。

時間はあと8日しか残されていないが、これらの重要な譲歩は、この48時の間に行われたのだという。

合意のために十分な譲歩なのか、まだ他の情報が必要なのかは、明らかにされていないとAFPのフランス政治筋は述べたという。

またアイルランドのマーティン首相も、同国公共放送RTEで「ポジティブなシグナル」があったことを語った。

「英国側の動きはあったが、悪魔は条文の文章の細部に宿るものだ。我々はまだそこには

到達していない」とある外交筋は述べた。

「すべての保証があるかどうか、確認しているところ」であり、この作業には「一晩中かかる」という。「もしすべてがうまくいったなら」、合意は24日(木)の朝(現地時間)に発表されることになるだろう、ということだ。

※欧州委員会のマメール報道官の真夜中のツイート。「詰めの作業は夜を徹して行われる。注視しているみなさんには、今のうちに少し眠っておくことをお勧めする。明朝は早めのスタートになることを希望している」

確認が終わって、問題ないと確定した場合でも、27加盟国による検証が必要で、数日かかると予想されている。しかし理論的には、英国が完全に単一市場から脱退する1月1日に条約が仮発効に入るには、まだ時間がある。

約2000ページに及ぶこのテキストは、その後、欧州議会で事後的に検証されることになる。3月に始まったこれらの交渉が成功裏に妥結すれば、政治的に当惑させ、経済的にも大きなダメージを受ける「ノー・ディール」から双方を救うことができるだろう。

英国水域へヨーロッパの漁師がアクセスする問題は、23日(水)の議論において、最終的な障害であり続けたが、これもほぼ完了したという。

最後まで残ったのは、紛争の解決方法や不正競争に対するセーフガードなどであったという。

これらの詳細はまだ明らかになっていないが、おそらく「紛争の解決方法」とは、EU側が提唱する欧州司法裁判所での仲裁の解決か、英国側が提出する、少数の人数による仲裁型かではないかと思う。

これは、日本とEUの連携協定でも、最後の最後まで問題になった、本当に最後の1点だった。EUとカナダの交渉でも状況は似ていた。日本との場合はEU側があきらめたが、英国とはどうだろうか。

また「不正競争に対するセーフガード」とは、「あるジャンルで不正があった場合、別のジャンルで補償が可能」というEU側の主張についての問題だろう。内容もさることながら、これにEUが主張するように漁業問題を入れるのか、それとも英国が主張するように漁業問題を切り離すのか、これも最後まで問題になっている可能性がある。

漁業問題は、双方にとって全体的には経済的な比重が低いにもかかわらず、フランスだけでなく、オランダ、デンマーク、アイルランドを含むいくつかの加盟国にとって、政治的、社会的に重要な役割を果たしてきた。

どの国にとっても、漁業従事者の失業に直結する問題であり、漁場を失うということは、会社員が別の会社に勤めればいいという問題とは異なる。

それに、英国にとって「領土問題」と化しているだけではない。どの国にとっても漁業は文化や歴史につながる問題なのである。

ちなみにBBCは23日に、最新の世論調査を発表した。

YouGovが定期的に行っている質問である。「今から考えると、英国は欧州連合を去るのが正しかったと思いますが、それとも間違っていたと思いますか?」

この3ヶ月の間、平均して39%が「離脱の決定は正しい」、49%が「間違っている」を選択した。

やはり国民投票といえども、市民による投票結果の賞味期限は、今の時代は5年程度なのだろう。

参考記事:EU離脱というイギリス国民投票に感じる疑問。得票率と賞味期限

「コロナウイルス関連で、お住いの地域にある制限」に関するページにも、カウントダウンが表示されている。
「コロナウイルス関連で、お住いの地域にある制限」に関するページにも、カウントダウンが表示されている。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省機関の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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