太平洋横断中の辛坊さんら救助 遭難海域の気象状況は
報道によれば、小型ヨットで太平洋横断中に遭難したニュースキャスター・辛坊治郎さんらは海上自衛隊に無事救助されたとのこと。救助要請があったと伝えられる今朝(21日朝)の当該海域の気象状況はどうだったのでしょうか。
天候悪化の前の救助に
きょう21日朝は、本州の南岸に梅雨前線が停滞していました。前線は日本の東では、はるかアリューシャン列島まで続いているようすが天気図から分かります。
詳しい位置は不明ですが、救助要請がされたと伝えられる宮城県金華山の南東・約1,200km付近の太平洋上にも前線がのびており、この近くでは波が高まっていたものと考えられます。
気象庁の波浪解析によれば、周辺海域では波の高さ(有義波高)2~3メートルと推定されています。右図の黄色い表示の部分が波の高さ3メートル以上と推定される海域です。
いわゆるシケ(波高4メートル超)にまで達した状態ではないものの、当該海域では、波の高い状態だったようです。
また、明日(22日)には、台風第4号から変わった温帯低気圧がやや発達しながら進む見込みで、雨や風がさらに強まってくることも心配されていました。波も、低気圧の周辺では高さ4~5メートルのシケが予想されていて、当該海域でも、時間とともにいっそう波が高まったであろうことは想像に難くありません。
今回は、海上自衛隊により要請から12時間程度での救助となりましたが、天候がさらに荒れてくる前に救助ができたことは、天気・海の状況からは幸いだったと考えられます。
「波の高さ」とは?
さて、海のようすをじっくりと眺めていると分かりますが、海上の波の高さというのは、高いものから低いものまで様々です。人間が目視した時に平均的に感じる波の高さと近くなるよう設定されたものが、上述した「有義波高(ゆうぎはこう)」です。押し寄せる波のうち、高いほう3分の1を平均した波の高さ、と定義されています。
つまり、この有義波高で示された値よりも高いものも個々の波の中には含まれているわけで、一般には、観測される波のうち「1000波に1波」は、有義波高の2倍近い高さのものが出現する、と言われています。
すなわち、有義波高2~3メートルと言っても、突然の瞬間的な大波としては5メートル前後の波が含まれ得るというわけです。
海上・海岸の波の予報なども、気象庁から日々発表されていますが、こうした波の高さの予報も「有義波高」で示されています。