KDDI通信障害で「アメダス」にも影響 地域防災を支えるアメダスとは
昨日(2022年7月2日)未明から、auなどを展開するKDDIで大規模な通信障害が発生し、通話やデータ通信に不通などの不具合が発生していると伝えられている(7月3日9時現在継続中)。「電話ができない」など私たちの生活に大きな影響を及ぼしているが、気象観測の場においても「アメダス」と呼ばれる気象庁の観測システムに大きな影響が出ているようだ。
■ アメダスとは
テレビの天気予報で「アメダス」という言葉を聞いたことのある方も多いだろう。アメダスとは気象庁が全国に展開する「地域気象観測システム」のことで、その英語名称「Automated Meteorological Data Acquisition System」の頭文字をとった略称だ(AMeDAS)。直訳すれば、自動で気象のデータを収集するシステム、ということになる。
全国の約1300か所に降水量の自動観測所が展開されており、このうち約840か所においては気温・風向風速(一部では湿度も)、約330か所では積雪深も観測している。「アメダス」という名称だが、その名の通り様々な「気象」のデータを収集しており、雨だけでなくほかの気象要素についても観測をしていることもぜひ知ってほしい。24時間休むことなく自動で各種の観測をし、そのデータを通信回線を利用して10分ごとに気象庁へ送信している。そして、自動品質管理をしたうえで、気象庁内で利用もされるが、広く利用者へもほぼ即時的に配信されているのだ。
雨や風、気温などの実測データをこれほどの地域的なきめ細やかさで観測し、ほぼリアルタイムで活用できるのは、防災上非常に重要と言える。ここ数日報道されているような記録的な猛暑の気温や、台風などの大雨による雨量の値は、このアメダスで観測されたデータであることが大半である。その点からも、アメダスは私たちの安全・安心な社会を足元から支える縁の下の力持ち的な「社会インフラ」だということがお分かりいただけるだろう。
■ 通信障害の影響の範囲
今回、このアメダスに通信障害が発生している。各地の観測所で観測したデータを気象庁へ集める際に利用している一部の通信事業者のネットワークにおいて障害が発生しており、気象庁でデータを収集することができなくなっている観測点があるようだ。
気象庁から何か所で影響が出ているのか正式な発表はないが、昨日の雨量について「資料不足値」(統計を行うための元データに一定以上の欠落がある)と評価された地点を調べたところ、全国で約600か所。この大半が今回の通信障害によるデータ欠落と考えるならば、広範囲に影響が出ていることが推察できる。
猛烈な暑さが続き、東~西日本の内陸を中心に、ここ数日は記録的な高温となる日もあったが、昨日のデータが欠落していて、最高気温がどの程度だったか分からない地点も少なくない。あくまで通信障害ではあるので、現地との通信が正常化すれば過去に遡ってデータを取り戻せる可能性もあるが、それが可能か不可能かは定かではない。また、もしできたとしても、影響が長引くほどデータの上書きなどによりその可能性は小さくなるのだろう。
■ 防災上重要なアメダスの観測
アメダスの強みはその地域的なきめ細やかさと即時性である。これほど広範囲に展開し、ほぼリアルタイムで実際の現地での気象データを収集できるシステムは、ほかの何にも代え難い存在だ。
猛暑については気温のデータが、台風については雨量や風のデータが特に重要で、そうした観測データをリアルタイムで把握することで、より迅速な防災対応に結びつけることが可能となるのだ。その重要なシステムが今回、長時間にわたって十分に機能できていないのは非常に残念であり、また、そうした状況になってしまっているのは大きな問題であると筆者は考える。
今回は通信事業者による大規模障害が原因ではあるが、気象庁においても、アメダスの安定運用について通信回線の冗長性も含め、現在の体制で「安全・安心」を本当に確保できるのか、今一度確認・検討をお願いしたいところである。
【参考】
気象庁ガイドブック2022(気象庁ホームページ)
昨日の雨量の観測値一覧(気象庁ホームページ)
au通信障害で気象庁「アメダス」にも影響(TBS NEWS DIG Powered by JNN)