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シャヘド131自爆無人機の弾頭は成形炸薬弾+自己鍛造弾

JSF軍事/生き物ライター
ウクライナ国防省の発表よりシャヘド131自爆無人機の残骸

 イギリスの紛争兵器研究所(CAR)は2月9日、ウクライナで発見されたロシア軍が使用するイラン製自爆無人機「シャヘド131」の弾頭について分析結果を発表しました。

Multipurpose Iranian drone warheads used in Ukraine | Ukraine field dispatch, February 2023 | Conflict Armament Research

 シャヘド131の弾頭は長さ約50cm・直径は約16cmの円筒形で、前方正面は成形炸薬弾(HEAT)の角度の深いコーン(ライナー)が、側面に18個の自己鍛造弾(EFP)の角度の浅い窪みが装着されています。 

 シャヘド131の弾頭についてはこれ以前にも残骸の写真が報告された際に成形炸薬弾ではないかと見られていましたが、側面が自己鍛造弾となっている構造が映像付きで報告されたのはおそらくこれが初になります。

  • 成形炸薬弾(HEAT)・・・炸薬が起爆すると角度の深いコーンの金属部分が圧縮されて、高速高圧の金属噴流(メタルジェット)となって打ち出される装甲貫通兵器。
  • 自己鍛造弾(EFP)・・・炸薬が起爆すると角度の浅い窪み部分が圧縮されて折り畳まれて、塊となって打ち出される。EFPはHEATより速度が遅く貫通力に劣るが、HEATより有効距離がかなり長い。

 弾頭の側面に自己鍛造弾を仕込む構造は、フランス製の対艦ミサイル「エグゾセ」とそれを元に開発された中国製の「C-802」や台湾製の「雄風2」などで先例があります。

 成形炸薬弾も自己鍛造弾も特定の方向の貫通力は高まりますが、代償として弾殻破片の数が著しく減るので、シャヘド131の弾頭は爆発時の弾殻破片の密度が薄くなります。そこでシャヘド131の弾頭は後付けで2カ所に調整破片(多数の金属片となる加工)を巻いて破片密度を少しでも増やそうとしています。

シャヘド131の弾頭は中東での石油タンク破壊目的?

 ここからは紛争兵器研究所(CAR)の報告書には無い感想になるのですが、イラン製シャヘド131自爆無人機の初投入はイラン自身の手によるもので、2019年9月14日にサウジアラビア東部のアブカイクとフライスにあるサウジアラムコの石油施設への攻撃でした。

過去記事:サウジ石油施設への攻撃はイラン製の新型巡航ミサイルと初確認の新型自爆ドローン(2019年9月19日)

 この時の攻撃目標は石油タンクです。シャヘド131は自爆無人機の少ない弾頭重量で石油タンクの外殻を確実に貫通する目的で、このような特殊な貫通力重視の弾頭を用意したのではないでしょうか?

 速度が遅く弾頭重量が少ない自爆無人機で確実に目標に穴を開けるために成形炸薬弾を搭載するのは合理的です。そしてもし目標から外れて至近弾となって爆発した場合には側面の自己鍛造弾で目標に穴を開けるという、二段構えの仕様だったのではないでしょうか? 

 つまりシャヘド131はロシア軍によるウクライナ侵攻での民間インフラ(火力発電所や変電所)への攻撃用途に合った弾頭ではなく、イランが中東で石油タンクを攻撃する用途に合わせたものを、ロシア軍はそのままウクライナで使用している可能性があります。

※成形炸薬弾頭については2019年のサウジアラムコの石油施設への攻撃時にも残骸から発見されており、シャヘド131の元々の仕様。ウクライナで見付かった破片の自己鍛造弾と調整破片については仕様変更された可能性。

関連記事:ロシア軍が使用するシャヘド136自爆ドローンは事実上、ドローンではなく小型で安い巡航ミサイル(2022年10月24日)

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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