サウジ石油施設への攻撃はイラン製の新型巡航ミサイルと初確認の新型自爆ドローン
サウジアラビアの石油施設が9月14日に攻撃を受けて炎上した事件について、イエメンの武装勢力フーシ派が自爆ドローンで行ったと犯行声明を出しました。しかしアメリカはイランが直接攻撃したと疑っており、緊張が高まっています。
そして9月18日、石油施設攻撃についてサウジアラビア国防省は巡航ミサイル7機と自爆ドローン18機の合わせて25機の飛翔体による攻撃だったと発表しました。現場に落ちていた巡航ミサイルと自爆ドローンの残骸を公開しましたが、それらは驚くべきものでした。
7月に発表されたばかりのイラン製新型巡航ミサイルと、今回初めて公開されたデルタ翼(三角翼)を持つ自爆ドローンだったのです。
巡航ミサイル「Quds-1」
サウジアラビア国防省が9月18日に公開した青い色の細長い残骸は、イエメンのフーシ派が今年7月に発表したばかりの新型地対地巡航ミサイル「Quds-1(クッズ-1/コッズ-1、意味はエルサレム)」の後半部とエンジンです。垂直尾翼と水平尾翼の形状、取り付け位置、使用エンジン(チェコ製TJ-100ターボジェットエンジンの同型)などから特定できます。フーシ派は自分たちで開発したと主張していますが、イラン製であることは確実と見られています。
なおこの巡航ミサイルの残骸についてはサウジアラビアの正式発表前から現場付近で発見されていたことが写真で報告されていて、この時に既に巡航ミサイルQuds-1であることは判明していました。
実は2年前の2017年にイエメンのフーシ派はUAEの原子力発電所を巡航ミサイルで攻撃しようとして失敗した事例があります。この時のミサイルはフーシ派自身が公開した映像からイラン製巡航ミサイル「Soumar(スーマール)」と推定されていました。
UAEの原子力発電所にフーシ派がイラン製巡航ミサイルで攻撃(2017/12/4) - Y!ニュース
スーマールと派生型「Hoveyzeh(ホベイゼ)」はロシア製空対地巡航ミサイル「Kh-55」に形状が酷似しており、イランはウクライナ経由でKh-55を密輸して模倣し、ブースターを追加して地対地型に改造したと見られています。Kh-55は巡航ミサイルとしては珍しいエンジンポッドを機体外部に吊り下げる形式で、スーマール/ホベイゼもその特徴的な外観を受け継いでいます。Quds-1も同じ外観ですが全体的に小型化されており、形状を参考にしつつ別系統の巡航ミサイルとして開発されています。
※追記:Quds-1はKh-55系とは逆にエンジンポッドを上にして飛行することが判明。
初めて確認されたデルタ翼型自爆ドローン
サウジアラビア国防省が9月18日に公開した自爆ドローンの残骸は、デルタ翼(三角翼)で尾部にプロペラを持ち、今回初めて公開された新兵器です。これまでフーシ派はイラン製の自爆ドローン「Qasef(カセフ)」シリーズをよく使用しており、今回のサウジアラビア石油施設攻撃での攻撃でもカセフを使用したと追加で声明を出していますが、実際に現場から見つかったこの残骸はカセフとは形状が全く異なっています。
このデルタ翼の自爆ドローンが誘導方式についてはカセフと同じ標的機の派生だとした場合、プログラム飛行型で操縦者が存在せず通信を行わない方式です。慣性航法装置とGPS受信電波で飛行位置を修正しながら事前に設定した経路通りに飛んで行くので固定目標にしか攻撃を行えず、ドローンというよりは巡航ミサイルに近い運用になります。プロペラ推進なのでターボジェット推進の巡航ミサイルより移動速度が大幅に遅くなるのが欠点になりますが、製造コストが安いのが利点になります。
なおアメリカは石油施設攻撃についてイランからの直接攻撃と見ており、イラク経由で内陸を飛行しレーダー網を掻い潜ったと考えています。しかしイエメンのフーシ派は犯行声明を出しており、イランは自国領土からの直接攻撃を否定し、サウジアラビアはフーシ派の所有兵器による攻撃ではないとしつつ「北の方から飛来した」と、イランからの攻撃を匂わせながらイラン領土からの攻撃とは明言していない状況となっています。