クリスマス寒波のあとの暖気は、「年越し寒波」の雪崩や雪下ろしの危険性を増加させる
クリスマス寒波の後の暖気
クリスマス後に日本列島に南下した12月としては非常に強い寒波(クリスマス寒波)によって、北日本の日本海側の地域を中心に大雪が降っています(図1)。
現在、日列島は低気圧や前線が通過し、西高東低の冬型の気圧配置がゆるんでいます。
低気圧や前線に向かって暖気が北上していますので、北陸から西日本の日本海側では、雪から雨に変わっているところもあります。
そこへ、数日前のクリスマス寒波と同程度の強い寒気を伴った「年越し寒波」が南下する予報です。
12月30日から元日にかけて、北日本から西日本の日本海側では大雪の可能性があります。
大雪の後の暖気がはいったあとの大雪では、土規模な雪崩や屋根からの落雪、雪下し中の事故にも注意が必要です。
というのは、暖気によって積雪の表面が少し解けて水の皮膜ができ、それが夜の冷え込みで凍ってアイスバーンができるからです。
そこに強い寒波が南下して大雪が降ると、新たに積もった大雪がアイスバーンの存在によって滑り落ちやすくなるからです。
雪崩や屋根からの落雪に注意・警戒が必要です。
また、屋根の雪下ろし作業においては、滑りやすい状態での作業となります。
屋根に上がるためのハシゴ等をしっかり固定し、命綱をつけた複数の人で作業をするなど、安全な手順を守ることが大事です。
近年、屋根の雪下ろし中に落下して死亡する例が相次いでいますが、昔は雪下ろし中の死亡事故は、ほとんどありませんでした。
これは、屋根から道路に落とした雪は、車の通行障害にならないよう、すばやく雪捨て場に運ばれるようになったことと関係があります。
現代の生活に必要な措置とはいえ、雪下ろし中に落下した場合は、多くは雪が運ばれた後のむき出しの地面の上であるからです。
筆者の母親は、豪雪地帯の新潟県妙高高原市出身で、雪下ろし中によく落下したが雪の上なので怪我をしなかったとか、電線を感電しないように跨いであるいていた等の話を聞いています。
車社会になる前の話ですが、それほど昔ではありません。
雪害という災害の様相が、車社会の到来という人間生活の変化とともに変わり、新しい防災対応が必要となっているのです。
「昔取った杵柄」は、「年寄りの冷や水」になりかねません。
底雪崩と表層雪崩
雪崩は,山の斜面の雪が重力の作用によって目に見える速さで崩落する現象のことです。
そして、雪崩という現象は、大雪が降れば、程度の差こそあれ発生しています。
雪崩発生の形によって点発生と面発生、雪崩層滑り面の位置によって底雪崩(表層雪崩)と新雪雪崩(表層雪崩)に分類されます(図2)。
底雪崩は、主として春先の融雪期に起こる雪崩です。
発生場所はほぼ決まつていて,雪間に割れ目やしわ、こぶが生じるなど、発生の前ぶれが現れることが多い雪崩です。
降雨や高温に誘発されることが多く、積雪した層全体が滑り落ちることから全層雪崩とも呼ばれます。
これに対し、新雪雪崩は、主に冬の最中に発生し、積雪のうち、特定の層から上の積雪が滑り落ちることから表層雪崩ともいいます。
今回の年越し寒波で心配なのは、この表層雪崩です。
多量の降雪量によつて降雪中または降雪の直後に起きますが、雪崩の走路は思わぬ場所まで達することもあり、過去に雪崩害のまったくなかった場所で起こることもあります。
大きな雪崩災害が発生するのは、雪崩の場所が特定でき、前兆現象がある底雪崩より、どこで発生するのかの予想が難しい新雪雪崩です。
令和4年(2022年)の正月は、大雪後に暖気が入った後の再度大雪です。
正月休みを利用して帰省や、観光地へのお出かけの方が多いと思います。
年越し寒波によって交通機関がみだれますし、まとまった雪が降ったところでは雪崩や落雪のおそれがありますので、最新の気象情報の入手につとめ、予定のこまめな変更で、正月休みを安全にお過ごしください。
図1の出典:ウェザーマップ提供。
図2の出典:饒村曜(2002)、気象災害の予測と対策、オーム社。