バルサがシャビの「解任」を再び考えている理由。ラポルタの憤怒と財政事情のジレンマ。
火を避けて、水に陥る。バルセロナが厳しい状況に置かれている。
バルセロナはリーガエスパニョーラ第36節、アウェーでアルメリアと対戦。フェルミン・ロペスの2得点で、勝利を収めた。その結果、2位の確保を決定的なものにしている。
出すべき結果は、出した。しかし、クラブ内では、疑念が生まれている。
■解任の噂
アルメリア戦後、スペイン『RAC1』はジョアン・ラポルタ会長がシャビ監督の解任を決断したと報じた。そして、スペイン『マルカ』『アス』『スポルト』『エル・パイス』といった大手メディアがそれに追随するように、バルセロナの監督交代の可能性を伝えている。
シャビ監督は、今年1月27日、ビジャレアルに3−5で敗れた後、今季限りでクラブを去ると明言した。「バルセロナで監督を務めるのは残酷だ」と語り、メンタル面での消耗などを理由に、2023−24シーズン終了時に自分はチームからいなくなると“退任宣言”を行った。
バルセロナはシャビ監督の退任宣言後、調子を取り戻した。13試合で、10勝3分け。無敗を維持してシーズン終盤に突入する、という流れをつくった。
すると、一転、シャビ続投の話が持ち上がる。チャンピオンズリーグでパリ・サンジェルマンに敗れ、リーガエスパニョーラでレアル・マドリーに敗れたが、クラブと監督の考えは一致していた。4月25日にラポルタ会長とシャビ監督が会見を開き、残留が決まった。
■検討される可能性
だが万物は流転する。事態が二転三転してもおかしくはない。
アルメリア戦前、シャビ監督は「クレの人たちは理解しなければいけない。25年前のバルサとは違う。『この選手と、この選手と、この選手』といったように補強をすることは、いま、できない。何かを変える必要がある。そうでなければ、同じことが繰り返される」と述べていた。
この発言を引き金に、また先日の試合のチームのパフォーマンスを受けて、ラポルタ会長は監督交代を再び検討し始めている。
シャビ監督は2021年11月にバルセロナの監督に就任した。昨季、就任2年目で、リーガエスパニョーラとスペイン・スーパカップで優勝を果たし、2つのタイトルを獲得している。リーガエスパニョーラだけ見ても、2021−22シーズン(2位)、2022−23シーズン(優勝)、2023−24シーズン(現在2位)と決して悪くはない成績だ。
しかし、元々、シャビ監督はラポルタ会長のファーストオプションではなかった。2021年3月の会長選で、シャビ監督の招聘をマニフェストとして掲げていたのはビクトール・フォント氏で、ラポルタ現会長ではなかった。当時のラポルタにとって、シャビ監督というのは「経験不足」だった。
ただ、シャビ監督の就任後、クラブとしては出来る限りのことをした。フェラン・トーレス(移籍金5500万ユーロ/約88億円/2022年1月加入)の獲得を皮切りに、指揮官の望む補強を実現しようと動いた。
2022年夏には、「4つのレバー」を作動させた。ロベルト・レヴァンドフスキ(移籍金4500万ユーロ/約72億円)、ラフィーニャ(移籍金5800万ユーロ/約92億円)、ジュール・クンデ(移籍金5000万ユーロ/約80億円)、アンドレアス・クリステンセン(フリー)、フランク・ケシエ(フリー)、マルコス・アロンソ(フリー)らを獲得。久しぶりの大型補強で、陣容を整えた。
また、この夏、イルカイ・ギュドアン(フリー)、イニゴ・マルティネス(フリー)、ジョアン・フェリックス(レンタル)、ジョアン・カンセロ(レンタル)、オリオル・ロメウ(移籍金340万ユーロ/約5億円)が到着。シャビ監督は、その補強に納得していた。
■残された課題とジレンマ
問題は、2つ、ある。
ひとつは、バルセロナのポリティカル・コレクトネスだ。クラブとしての、である。先の会見のシャビ監督のコメントにあったように、指揮官とクラブの意見の相違が多くあってはならない。完全に考えが一致するのは難しいだろうが、同じ船に乗っているのだ。また会見を開くたびに、そこをメデイアに突かれては、2024−25シーズン、まさに“雑音”と共にずっと戦う羽目になる。
もうひとつは、スポーツ的側面のものだ。チームに、改善が見られない。リーガの成績は総じて悪くないが、今季、マドリー、ジローナにはシーズンダブルを喰らっている。チャンピオンズリーグではパリSGに逆転負けを喫して、ビッグマッチにおける課題は残されたままだ。
メデイアでは、シャビ監督の後任候補の名前が踊っている。ラファ・マルケス監督(バルセロナB)、ハンジ・フリック監督(フリー)、トーマス・トゥヘル監督(バイエルン・ミュンヘン/今季終了時に退任)、ロベルト・デ・ゼルビ監督(ブライトン)、セルジオ・コンセイソン監督(ポルト)、ユリアン・ナーゲルスマン監督(ドイツ代表)…。複数のオプションが、考えられている。
一方、バルセロナはシャビ監督と2025年夏まで契約を残している。シャビ監督を回にする場合、違約金1800万ユーロ(約26億円)を支払うことになる。財政が厳しいクラブにとって、これは痛手だ。
ラポルタ会長とシャビ監督の会見と続投宣言から、わずか21日。バルセロナが再び、混沌の渦に巻き込まれている。