ジャンボタニシは『小さな話』ではない
『ジャンボタニシ』がSNSのトレンド入り?!
X(旧Twitter)を開いて知ったのですが、2月末ごろからジャンボタニシが話題になり、トレンドワードにもなったようです。
ジャンボタニシって何?
正式名はスクミリンゴガイという南米原産の外来種で問題点を簡単に説明すると、
稲の苗を食べつくしてしまう被害が全国的に広がっている為、農水省と環境省が
対策の必要性が高い『重点対策外来種』
に選定されています。
卵にも毒があり繁殖力が強く、在来種の個体数を減らしてしまうなど農作物以外にも自然生態系への悪影響が懸念されています。
なぜ話題に?
ジャンボタニシに水田の除草をさせる目的で田んぼにばら撒いている写真がSNSに投稿されて、それがⅩ上で
『これは問題なのでは?』
とポストされて話題になったようで、
そこに自然派農業推しの某政党も絡んだことで更に話題になったようです。
とある政治家の発言『他の政党の問題に比べたら小さな話』
その自然派農業を推している政党の方がジャンボタニシ除草を擁護する発信をしたみたいでそれも話題になり、その中でこういった内容の発言がありました。
確かに、一見すると大きなお金が動いたわけではないので小さく見えるかもしれませんが、認識が甘すぎると感じざるを得ません。
投入は簡単でも除去は至難
例えば、コーヒーを淹れたとします。
そのコーヒーに砂糖を入れて甘くすることは簡単ですが、一度溶けた砂糖を完全に取り除いて元のコーヒーに戻すことはとても難しい…というかほぼ無理です。
一度蒸発させたり、薬品などでの抽出を行ったら可能かもしれませんが、その過程で元のコーヒーの成分や風味は失われたり変質してしまいます。
それと同じなのが、自然界への外来生物の人為的導入です。
外来種を根絶させるにはその環境を一度破壊でもしないといけませんが、そうすると他の在来生物や環境まで失われます。
田んぼは水路で繋がっているし、水路は河川や湖沼に繋がっています。
人の手で日本に連れてこられた動植物たちが野生化して問題になっている生き物はブラックバス、ブルーギル、アメリカザリガニ、ホテイアオイ、タイリクバラタナゴ、アライグマ、マングースなどなど枚挙に暇がないほどたくさんあります。
政治の裏金問題や汚職というのもいつになってもなくなるものではないですが、
外来生物の導入による自然生態系への影響も同様に元に戻すことは極めて困難なことになります。その対策をするにも多額のお金が掛かるようになります。
これは個人的な感想ですが自然農を実践している私としては、
自然派農業を推している政党さんだからこそ、そこまでのことを考えてほしいと思ってしまい、今回改めて失望しました。
農水省が公式に注意喚起を始めた
2月末から始まったこの騒動を重く見たのかついに農水省が公式に注意喚起をSNS上で行い、本日(3月10日)の日本農業新聞の1面にも記事が掲載されました。
これを機に外来生物に対しての興味関心と知識が多くの人に広まり、少しでも事前に予防されるようになると良いなと思います。
最後になりますが、
生き物そのものが悪いわけではなく、
悪いのはそれをやってしまった人間です。
生き物たちは連れてこられた環境でただ生きているだけなので、彼らを悪者呼ばわりするのは良くないと思っているのですが、実際に悪影響を食らうとそんな綺麗ごとも言ってられなくなるのが人間なのだと思います。
外来生物でなくとも、スズメに稲食われまくった時には、普段かわいいと思っていたスズメが憎く感じたし、猪に稲刈り前の田んぼを壊滅させられた時は本当に獲って食ってやろうかと思ったら、その猪は後日捕まえられてお肉になった私のところにも分けていただき美味しく頂きました。
↓その時の話は動画にしてあるので興味のある方は見てみて下さい。被害が出る前は猪の登場にちょっとわくわくしてすらいましたが、被害が出るとともに絶望に変わりました。
農をやっていると人間とは、なんて自分勝手な生き物なのだろうかと、つくづく感じます。