立憲・米山氏「北朝鮮の様な亡国の道」「一家庭18万円の負担増」防衛増税を批判―立憲も問われる存在意義
立憲民主党の米山隆一衆議院議員が、防衛増税について、「騙されてはいけないのは、今検討されている増税は『1兆円分』の増税に過ぎない」「数年後にはこの4.5倍の増税」と自身のツイッターで指摘。国民生活をなおざりにしての軍拡は「北朝鮮の様な亡国の道」だと批判した。他方、立憲民主党も、敵基地攻撃能力をめぐって迷走しており、その存在意義が問われている。
〇違憲政策をゴリ押し、岸田政権の暴走
岸田政権は、今月末までに閣議決定しようとしている、いわゆる「安保三文書」*改訂には、日本国憲法第9条に反することが指摘される、敵基地攻撃能力の保有や、今、議論を呼んでいる防衛費の大幅な増額などが盛り込まれる。
岸田政権が「反撃能力」と呼ぶ、敵基地攻撃能力は、日本及び米軍に対する攻撃の兆候があった際、未然に攻撃を防ぐため「敵国」の攻撃拠点等に対し、先制攻撃を行うもので、日本の自衛隊を「合憲」とする根拠である「専守防衛」を根底から覆すものであり、過去の政府解釈(田中角栄政権)では否定されたものだ。
防衛費の倍増は、ロシア軍のウクライナ侵攻を受けてNATO(北大西洋条約機構)加盟諸国がGDP比での防衛費を引き上げることに歩調を合わせたものだが、そもそも日本はNATO加盟国ではない。岸田文雄首相は、今月5日、2023年度から5年間の防衛費の総額を43兆円とするよう、浜田靖一防衛大臣と鈴木俊一財務大臣に指示。これを実現するには、毎年およそ4兆円の追加財源が必要で、歳出削減しても約1兆円の財源が不足するとして、それを増税でまかなおうとしている。国民にとって大きな負担増となる上、政府解釈で日本の自衛隊を「合憲」とする根拠である「必要最小限の防衛力」から大きく逸脱するものだ。
〇防衛費負担「4人家族なら18万円増」
とりわけ、1兆円の増税は、議論を呼んでいるが、米山議員はそのツイートで、以下のように指摘している。
岸田政権は増税の前提として歳出の削減もするとしているので、社会保障や教育、その他の公共サービス等の予算が削られる一方で増税されるという、国民にとっては非常に厳しいかたちとなる。米山議員の「北朝鮮の様」という表現も、あながち大げさとも言えないのである。
しかも、元内閣官房副長官補の柳澤協二氏らが指摘するように、日本の防衛費倍増は、「安全保障のジレンマ」を招く恐れがある。つまり、日本の防衛費倍増に刺激を受けた中国他近隣国が、自国の軍事予算も引き上げ、それにつられ日本も防衛費のさらなる増額を行うという、際限のない軍拡競争が引き起こされる危険性があるのだ。
敵基地攻撃能力の保有も、防衛費倍増も、安保三文書の改訂の閣議決定だけで、今後の政府の方針とされてしまうのであるが、これほど、憲法上の問題や国民生活の影響が大きいことについて、閣議決定だけで決めるのは、国会軽視であり、議会制民主主義や国民主権を蔑ろにするものであろう。結果的に敵基地攻撃能力の保有や防衛費倍増が行われるとしても、せめて、国会で十分な審議を重ねた上で行われるべきなのだ。
〇立憲民主党も問われる存在意義
他方、立憲民主党も迷走している面がある。先月30日に行われた、敵基地攻撃能力の保有や軍事費倍増に反対する市民団体の集会や請願に、立憲民主党の国会議員も参加、請願を受け付けた一方で、敵基地攻撃能力の保有を立憲民主党が容認する動きがあり、これには市民団体側が強く反発している。
上述したように敵基地攻撃能力の保有は過去の政府解釈でも認められないとされる上、岸田政権側はこの間の国会質疑で、敵基地攻撃能力の運用に、安保法制での「武力行使の新三要件」を適用するとしている。つまり、日本が直接攻撃を受けていなくても、米軍を守るために日本も武力行使を行う集団的自衛権であり、その枠組みで敵基地攻撃能力を使うということだ。集団的自衛権は違憲であり、その枠組みで敵基地攻撃能力を運用することは、「違憲のダブルセット」となる。立憲、つまり憲法を守ることを党名に冠している立憲民主党が、「違憲のダブルセット」を容認するのであれば、もはや党としての存在意義の否定ではないか。同党内でも、敵基地攻撃能力の容認には異論が相次いでいるという。立憲民主党は結党の原点に立ち返り、岸田政権の暴走を厳しく追及すべきだろう。
(了)
*安保三文書とは、「国家安全保障戦略」(外交・防衛の基本方針)、「国家防衛戦略」(旧「防衛大綱」、日本の防衛力のあり方の基本方針」)、「防衛力整備計画」(防衛力の整備、維持、防衛費などに関する計画)からなるもので、「防衛三文書」とも呼ばれる。