Yahoo!ニュース

気分が落ち込む?それ「季節」のせいではなく「糖分過多」が原因かも【1万8千人データで判明】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

秋冬にかけてはメンタルも要注意

酷暑が去ったと思ったら、あっという間に冬本番。体調管理に気を使われている方も多いと思います。

その際、身体だけでなく注意したいのが「メンタル」です。なぜか気持ちの晴れない方はいませんか?

というのも医学では「季節性うつ病」の存在が知られているからです [厚労省「こころの耳」] 。

この「季節性うつ病」とは「季節性の外的環境変化が影響し、ある季節のみうつ病になるもの」を指し、特に冬季に多いとされています。そして治療としては「早朝の数時間にわたって5000ルックス以上の光を照射する光療法が有効」とのことです [厚労省「こころの耳」] 。

とは言え、このメンタル不調、食事が関係してる可能性もあるのです。今年(2024年)2月に発表された論文をご紹介します。

書いたのは、山東中医薬大学(中国)のルー・チャン博士たち。「BMC精神医学」という学術誌に掲載されました [文末文献1] 。

「食事からの糖分摂取」量が多いほど「抑うつ」となっている確率が高かった

さてこの論文、書いたの中国の研究者ですが、解析されたのは米国人のデータ。

20歳以上の約8万5千人の「食事内容」を詳細に聞き取り、「抑うつ」との関係を調べたのです。

すると、食事から摂取する糖分の量が多い人ほど、「抑うつ」を訴える割合が増えていました。

具体的に言えば、各群同数となるよう糖分摂取量ごとに4群に分けると、摂取量の「最も多い」群では「最少」群に比べ、「抑うつ」であるリスクが相対的に33%、増加していました(1,33倍)。

「糖分過剰摂取」が「腸内環境」への悪影響を介して「抑うつ」リスクを上げている可能性も

この値は「糖分」以外の要因が「抑うつ」に及ぼす影響を、統計学てきに除去した後の数字です。

そのためチャン博士たちは、「糖分過剰摂取が抑うつを引き起こしているのではないか」と考えています(上記のデータからは「抑うつの人たちはたくさん糖分を摂っている」という説明も可能)。

では仮に「糖分過剰摂取」が「抑うつ」を引き起こしているなら、どんなメカニズムが働いているのでしょう?

チャン博士たちは1つの可能性として「腸内フローラ(細菌叢)」への悪影響を挙げています。

マウスを使った実験では、腸内フローラへの悪影響が抑うつとなるリスクをひき上げることがすでに分かっています [文末文献2] 。

糖分過剰摂取の回避でメンタルが改善する可能性も

そのうえでチャン博士たちは(本研究では証明されていませんが)、「糖分の過剰摂取を是正すればメンタルが健康になる可能性」を指摘しています。

寒くなるとついつい暖を取ろうと、コーヒーなどに入れる砂糖の量が増えていませんか?また夏と異なりコッテリした料理を食べる機会が増え、気付かぬうちに糖分摂取が増加している可能性もあります。

なぜか気分が浮かないな

そんな時は一度、糖分を摂りすぎていないか、食生活を見直してはいかがでしょう?

「糖」については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。では、また!

今回ご紹介した論文

  1. 食事からの糖分摂取が多い人は抑うつである可能性が高い
  2. マウスの腸内環境を悪化させると抑うつリスクが上がる

本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性も皆無ではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁(含筆名)。日本医学ジャーナリスト協会会員。

黒澤恵(Kei Kurosawa)の最近の記事