絶対に食べておかねばならない 東京のおにぎり「基本」3軒
弥生時代からあった「おにぎり」
「おにぎり」と聞いて皆さんはどのようなイメージを持たれるだろうか。家庭でお母さんが握ってくれたおかかや梅干しの入ったものや、居酒屋で出てくる締めの一品、さらにはコンビニに並ぶ色とりどりのものなど、人によっておにぎりのイメージは様々だろう。
おにぎりの歴史は想像以上に古い。石川県にある弥生時代後期の遺跡「杉谷チャノバタケ遺跡」では、1987(昭和62)年に「日本最古のおにぎり」(粽状炭化米塊)が発見された。稲作文化が始まったのとほぼ同時期に、おにぎりは日本に存在していたということになる。
コンビニで不動の人気商品と言えば、やはり「おにぎり」である。コンビニ業界で初めておにぎりを商品化した、業界最大手の『セブン‐イレブン』では年間に約23億個ものおにぎりが売れる。海苔とごはんを別々にしてフィルムを挟む包装を考案したのも『セブン‐イレブン』だ。
その一方で「おにぎり専門店」の存在も見逃せない。米を吟味し、炊き方を工夫し、具や海苔の相性を考えた、おにぎりだけのために存在する店。今回は東京に数あるおにぎり専門店の中から、基本中の基本とも呼べる3軒をご紹介しよう。
東京で一番古いおにぎり専門店『浅草 宿六』(1954年創業)
浅草観音裏の地に1954(昭和29)年に創業した、三代続く東京で一番古いおにぎりの専門店が『浅草 宿六』(東京都台東区浅草3-9-10)。白いご飯が「銀シャリ」と呼ばれたご馳走だった頃に、子供から年輩の客にまで幅広く食べて貰えるようにと、おにぎりの専門店として開業した。
凛とした空気が感じられる佇まいの小さな店は、浅草の街並にすっと馴染んでいる。暖簾をくぐり落ち着きのある店に入れば、そこはまるでお寿司屋さんのよう。カウンターの前には具が並べられて、その具を見ながら注文をすると目の前で手際よく握ってくれる。
具の種類は常時20種類ほどで、時には季節限定のものも。茨城産の葉唐辛子や、和歌山産の梅、高知産のおかかなど、全国から厳選した素材を使う。米はその年のおにぎりに合う産地を選び、大釜で炊かれたごはんはふっくらツヤツヤで甘みがある味わい。そのごはんを江戸前の海苔で包んだ「東京のおにぎり」は誰もが懐かしさを覚える味だ。
口の中でほどける「握らない」おにぎり『ぼんご』(1960年創業)
大塚駅から徒歩3分、都電荒川線の線路脇にあるおにぎり専門店が『ぼんご』(東京都豊島区北大塚2-26-3)だ。創業は1960(昭和35)年と、60年以上ものあいだ大塚の地で愛されている老舗は、昼夜を問わず行列が出来る人気店。具材は常時50種類以上あり、さらに自分好みの具材をトッピングも出来るので、その組み合わせは無限大だ。
行列が出来る人気店ながら、客の回転はとても速い。その秘密はおにぎりの握り方にある。『ぼんご』のおにぎりは口の中に入れた瞬間にふわっとほどける。ギュッと握って固めたおにぎりではなく、あくまでも柔らかく「握らずに握る」のが特徴。驚くほどの速さで次々とおにぎりが握られていくのだ。
「しゃけ」「生たらこ」などの見慣れたものから「明太クリームチーズ」「スタミナ焼肉」など、具材が豊富で選ぶのも一苦労。美味しい手作りのおかずを、炊きたてのご飯と共に食べるイメージをおにぎりで表現している『ぼんご』。だからこそ、持ち帰りよりも店で食べる方が格段に美味しい。
米の文化と美味しさを後世に伝える『おひつ膳 田んぼ』(1996年創業)
創業は1996(平成8)年と、25年にわたり愛されている人気店が『おひつ膳 田んぼ』(代々木本店:東京都渋谷区代々木1-41-9)だ。米という日本人にとって大切な食文化や美味しさを、後世の子供たちにもしっかり伝えて遺していきたいというコンセプトで、現在は都内に4店舗を展開する。
稲刈り時期は店を休み、スタッフ総出で稲刈りに出掛けたり、もみ殻を燃料にして炊く「ぬか釜」の実演炊飯をするなど、米に興味を持ってもらえるようなイベントも行っている。炊きたてご飯をお櫃から楽しめる「おひつ膳」も人気のメニューだが、やはりおにぎりの味も格別だ。
使用する米は自社田んぼで栽培する新潟県魚沼産コシヒカリをはじめとする特別栽培米を自家精米し、複数の種類の米をローテーションで炊いていく。粒が綺麗に揃った米をやさしく2回選別して少ない水で炊く。もちろん注文を受けてから握りたてを提供。噛み締めるごとに味わい深いおにぎりは、今までに体験したことのない味わいだ。
稲作文化と共に日本人が愛してきたおにぎりは、米の炊き方や握り方、具の選び方で味が変わる立派な「料理」だ。作り手の想いと手の温もりが感じられる、心が温まるおにぎり。ぜひ自分好みのおにぎりを見つける旅に出かけて欲しい。
※写真は筆者によるものです。
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