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韓国総選挙のもう一つの注目点は野党から「親日派」の烙印を押された2人の与党議員の当落!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
韓日議連会長の鄭鎭碩議員(左)と成一鍾議員(二人のHPから筆者キャプチャー)

 今日(10日)投開票される韓国の総選挙で野党第1党の「共に民主党」は選挙戦終盤の4月8日に絶対に当選させてはならない7人の与党(「国民の力」)候補をリストアップしたが、その中に韓日議員連盟所属議員が2人含まれていた。

 1人は忠清南道の公州・扶余・青陽から出馬した鄭鎭碩(チョン・ジンソク)候補。もう一人は同じく忠清南道の瑞山・泰安から立候補した成一鍾(ソン・イルチョン)候補である。「共に民主党」が有権者に2人の落選を呼び掛けた理由は日本に関する「不適切な発言」が理由のようだ。

 そもそも「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は選挙戦がスタートする前から今回の総選挙は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権を審判するだけでなく、「この国にはまだ清算されていない親日の残滓が多くあるのでアイデンティティーが疑われる候補は落選させ、独立国家であることをしっかり示さなければならない」と、今回の選挙を「新韓日戦」と位置付けていた。

(参考資料:韓国の総選挙 与党の「アカ攻撃」VS野党の「親日攻撃」 伊藤博文から李舜臣まで選挙利用)

 自他ともに「尹大統領派」であることを隠さない鄭鎭碩候補(63歳)は韓日議連会長である。会長になる前から朝鮮通信使委員会委員長としてしばしば訪日し、日韓友好に力を尽くしてきた。尹政権になってからは先頭に立って尹政権の対日政策を推進してきたことで知られている。それだけに野党は鄭候補を「親日派」の象徴としてなにかと目の敵にしてきた。

 今回、鄭鎭碩候補がやり玉に挙がったのは2022年10月11日に自身のホームページに「朝鮮は日本からの侵略ではなく、中から腐って崩れ落ちたのだ」とか、「日本は国運をかけて清国やロシアを制圧し、倒れ掛かった朝鮮王朝を飲み込んだのだ」と書き込んだためである。また、2023年3月20日には韓国のラジオ番組で尹大統領が日韓首脳会談で屈辱的な対応したとの批判に対して「植民地コンプレックスから抜け出そう」と発言したことも野党は以前から問題視していた。

 そして、成一鍾候補(61歳)については民主党は先月3日に行われた奨学財団の奨学金伝達式で「伊藤博文は韓半島(朝鮮半島)にひどい事態を招いた人物であり、我々には不幸な歴史だが、(日本は)我々よりも先に人材を育成した先例だ」と発言したことを狙い撃ちしたようだ。成一鍾候補は韓日議連の中心メンバーで訪日歴も多く、筋金入りの「知日派」である。

 この2人の他にも大田市(忠清南道)から立候補している元検事の趙秀衍(チョ・スヨン)候補(57歳)も5年前にフェイスブックに「国民は封建的朝鮮の支配を受けるより日帝強占期のほうがもっと暮らしやすかったかもしれない」と書き込んだことを選挙期間中に野党陣営から炙り出され、攻撃されたが、幸いにもブラックリストには載らなかった。

 鄭鎭碩候補は地元公州出身ということもあって選挙には滅法強い。これまで5回当選を果たしている。この間、李明博(イ・ミョンパク)政権下では青瓦台(大統領府)政務首席秘書官、朴槿恵(パク・クネ)政権下では国会事務総長、尹錫悦政権下では国会副議長の要職を重ねてきた。

 今回、最多の6選に挑戦するが、相手の民主党の朴洙賢(パク・スヒョン)候補(59歳)もまた、文在寅(ムン・ジェイン)前政権下で初代青瓦台代弁人、青瓦台国民疎通秘書官を担ったそれなりの経歴の持ち主だが、これまで2回戦っていずれも退けている。

 それでも鄭鎭碩候補にとって気が気でないのは得票率が2016年の48.12%vs44.95%から前回(2020年)は48.6%vs46.4%と縮まっていることだ。また、2022年6月の公州市長選挙では公州は55.15%vs44.84%と、応援した与党候補が野党候補を上回ったものの扶余では37.97%vs62.02%、青陽では27.73%vs49.88%と大差を付けられていた。

 現在、世論調査の公表は禁止されているが、大手紙・中央日報系のテレビ放送局「JTBC」の直前の調査(4月2-3日)では鄭候補が44%、朴候補が42%と、2ポイントの僅差で鄭候補がリードしていた。

 また、国防委員会に属している成一鍾候補も2回連続当選を果たしており、今回の選挙も「瑞山ポスト」と「大田MBC放送」そして「泰安新聞」の3社の3月までの世論調査をみると、成一鍾候補が対立候補の民主党の趙漢起(チョ・ハンギ)候補(57歳)を48.6%vs42.8%、49%vs41%、46.3%vs44.3%と3ポイントから8ポイントほどリードしていた。

 しかし、初めて選挙に出た趙漢起候補も泰安出身で、また文在寅政権下で青瓦台儀典秘書官及び第1付属秘書官に任命されるなどその経歴は侮れないものがある。特に「共に民主党」が総力を挙げてこの選挙に力を入れているだけに票が開くまでどちらが勝つのか予測が付かない。

 ソウルの西大門区では尹政権下で初代外相を務め、日韓関係修復に努めたことで知られるベテラン政治家、朴振(パク・チン)氏(67歳)の苦戦も伝えられているだけに仮に鄭候補も、成候補も揃って落選ということになれば、韓日議連は大きな痛手を被ることになる。

(参考資料:韓国総選挙:落選危機の与野党大物議員のリスト!元首相から前外相まで)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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