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藤井聡太銀河、銀河戦ベスト4進出 千田翔太七段とのきわどい終盤戦を制す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 第31期銀河戦は現在、決勝トーナメント2回戦(準々決勝)が順次放映されています。

 前期優勝の藤井聡太銀河は、千田翔太七段と対戦しました。

 千田七段先手で、戦型は角換わり。千田七段は飛車先の歩を切る代わりに、あえて藤井銀河に馬(成角)を作らせる作戦を採用します。

 一般論としては、序盤で馬を作ることができれば、それだけで成功だと思われそうなところ。深く研究が進んだ現代将棋では、従来の感覚からすれば驚くような新構想が生まれるという一例でしょうか。

 互いに陣形の整備が進んだところでは、藤井銀河の馬も大きいものの、千田七段の手持ちの角も大きく、バランスが取れたまま中盤戦に入りました。

 本格的な戦いが始まって、わずかにリードを奪ったのは藤井銀河。対して千田七段も手段を尽くし、きわどい終盤戦に入ります。

 藤井銀河が馬で王手をかけ、千田七段が金を立って受けた91手目。藤井銀河からは端に銀を捨てる妙手がありました。終局後、解説の阿久津主税八段にその順を提示します。

藤井「ああ、そっか。それはそう・・・」

千田「△9七銀自体はあるなとは思ったんですが。しかし指されたらしょうがないという」

藤井「確かに△9七銀はいい手ですね」「本譜は手を渡してしまったので、これはかなり危ないなと思っていました」

 さすがの藤井銀河であっても、早指しでは最善を読みきれない場面だったか。本譜はじっと馬を逃げ、千田七段にチャンスがめぐってきました。

 95手目。ここで千田七段には馬を引く絶妙の攻防手がありました。

千田「引きですか。いやあ、引き、見えなかったですね」

 本譜、千田七段は鋭く藤井玉に迫っていったものの、藤井銀河にしのがれる形に。

 最後は藤井銀河が千田玉を即詰みに討ち取って、140手で終局となりました。

 藤井銀河はきわどい終盤戦を制して、ベスト4に進出。2年連続3回目の優勝まで、あと2勝としました。

 次戦では渡辺和史六段-杉本和陽五段戦の勝者と対戦します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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