8党首に旧統一教会問題に関する質問状 教団との関係性は過去、政治にどういう影響を及ぼしたのか
全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、自由民主党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の8党首に旧統一教会問題に関する質問状を10月10日付で送りました。14日までの回答をお願いしています。27日に衆議院総選挙が行われますが、政治不信を生み出したのは裏金問題だけではなく、旧統一教会と政治の問題もありますので、国民の審判を受けるうえで避けては通れないものです。
質問項目は5つです。
1.旧統一教会の被害者救済及び被害抑止に今後どのように取り組んでいくのか。
2.今後、先生ご自身及び国会議員は、旧統一教会及びその関連団体との交流や連携について、どのように対処するべきか。
3.2022年12月10日に成立した不当寄附勧誘防止法は、附則で2年後見直しが明示されており、その時期が迫っています。どう対処すべきと考えているのか。
4.解散命令後の清算手続きにおいて被害者の救済を図るためには、被害者の支援や統一教会による財産隠匿の防止などについてより実効性のある立法が必要と考えますが、 その必要性についてどのように考えているのか。
5.この度、牧原秀樹法務大臣が旧統一教会及びその関連団体の会合などに(秘書出席をあわせて)37回に及ぶ出席・参加をしている事実が明らかになりました。各党所属の国会議員の先生方と旧統一教会の関係は断絶されるべきです。関係断絶の実効性を確保するために、これまでの旧統一教会との関係の調査にとどまらず、その政治への影響の検証および実効的な再発防止策のために、国会内に独立した調査委員会を設ける。あるいは貴党において第三者委員会による調査を実施して、その検討結果を公表するご意思はありますか。
各党が真剣に統一教会との絶縁を考えていただくことが切実な願い
山口広弁護士は「私どもとしては、自民党を含めて各党が真剣に統一教会との絶縁を考えていただくことが切実な願いです。議員の先生方が統一教会のイベントに参加される、あるいは祝電、その他の積極的な関与をなさることが被害の拡大につながってしまう。あるいは被害の回復を妨げることになることを、30年間の活動の中で実感しておりますので、切実な思いを込めての質問だ」と話します。
議員らは信者らの票を獲得するために、旧統一教会の集会などに参加して、応援を呼び掛けてきたといわれています。そうした議員の行動により信者らは、旧統一教会の教えによる神の国実現(統一原理による日本の国教化)が近いと思わされて、ますます霊感商法、高額献金などの活動にいそしむことになりました。それが現在の甚大な金銭的な被害につながっていることを忘れてはなりません。
「教団との関係性が政治にどういう影響を及ぼしたのか」の検証を求める
木村壮弁護士も「(旧統一教会の)支援を受けたことによって見返りとして何をしたのか。支援を受けたことによって教会側の意向を踏まえた政治活動をしたのか。国会に限らず、地方議会についてもそうですが、教団との関係性が政治にどういう影響を及ぼしたのか。統一教会の活動にどういう影響があったのかということも総合的にきちんと検証をして、実態をつまびらかにするべき」としています。
紀藤正樹弁護士は「裏金問題に関しては調査がなされて、具体的な金額やその内容も明らかになっています。少なくとも一定程度の調査がなされて、再発防止も含めた動きも進んでいます。それに対して、統一教会問題は、議員らが統一教会系のイベントやメディアに登場したという関係性くらいしか明らかになっていません。具体的なお金の移動であるとか、政治への(教団の)浸透の問題とか、そういうものについては、ほとんど検証がなされていないのです。しっかりとメスを入れて踏み込んでもらう必要がある」としており、質問状の5番目は、重要なものになると話します。
「統一教会がなくなればそれでいいという話ではない」の指摘
川井康雄弁護士は「統一教会への解散命令請求が出れば、問題が解決するんじゃないか。統一教会がなくなればこの問題は終わりでしょうというお考えの人もかなりいるのではないかと思います。しかし統一教会以外にも、問題のある宗教団体や、宗教性のあるスピリチュアル的な団体がたくさんあって、そこからの相談は今も続いています。だから、統一教会がなくなればそれでいいという話ではないと思うんです。同じことが繰り返されないための対策としては、十分ではないんです。そういう問題意識をもって行動していただきたい」と話します。
紀藤弁護士も30年前のオウム真理教事件に触れて「(今の旧統一教会問題の状況と)同じなんですよ。当時、表面的な被害者救済法はたくさん作ったんです。だけど、再発防止のための検証的な国会での質疑や議論が、一切されてないです。例えばオウム真理教の代表者を国会に呼ぶとか、そういうことすらしていないんです」として、再発防止の検証がなされずに今日まで至っていることを指摘します。
「(現在の後継団体である)アレフ本体だと1400人ぐらいの信者数だと思います。20代から30代で新しく入った人が45%もいるという状況で、私からいえば、かなりの異常事態だと思います。1995年の地下鉄サリン事件の時の検証が不十分だから現在に至っていると。あの時、検証がなされなかったことは、今の統一教会問題にも影響しているんです。もし、検証されていれば安倍元首相襲撃事件はなかったんじゃないかと思います。現在においても同じ状況が続いていますので、カルト問題については、国会できちっと第三者の独立した調査委員会を開いて、何が問題だったのかという知見を国会内で共有して法制にいかしてもらいたい」と、個人的な見解としながら話します。
牧原秀樹法務大臣の過去の教団とのかかわりは、一つの物差しになる
阿部克臣弁護士は、5番目の質問にもあげられている牧原議員について「昨年成立した特定不法行為等被害者特例法の審議にも直接関わっています。昨年、野党から出されていた包括的な財産保全に反対する意見を述べて質問をしておりましたから、被害救済に取り組んでいる弁護士の立場からすれば、大臣として適確に(旧統一教会問題の)職務を行えるのかについては、不安を感じざるを得ないところがあります。ですが、今後法務大臣として被害者に向き合って、救済に取り組んでほしい」としています。
牧原秀樹法務大臣が教団とのかかわりについて、正直に話している点を踏まえて、筆者は今後の検証のための一つの物差しになるのではないかと考えています。
大臣は2005年に初当選してから現在5期目ということです。旧統一教会との関係の濃淡はあると思いますが、教団の応援を受けて当選して議員を5期くらい務めると、少なくとも(秘書出席をあわせて)37回は教団及び、関連団体の会合に出席していることになるのではないかと思います。もっと深いかかわりのある人は、その数倍になるのではないでしょうか。
いずれにしても、自民党のほとんどの議員が、最初から何かしらの形で教団から選挙応援を受けており、長く議員をしている人ほど、かなりの数の会合に出席していた可能性があります。しかし、自民党が当初行った自主点検では、30回を超える会合への出席と答えた人はいなかったと記憶していますので、ほとんど意味がない結果報告だったことがわかります。
いずれにしても、今後正直に教団との関係を告白する議員があまり出てこないことを考えれば、中立的な第三者委員会の設置などを通じて、政治不信の払拭のためにも、教団との関係が長く続くことで過去の政治に対してどのような影響を与えてきたのかについて、しっかりと検証する必要があります。