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さらなる飛躍が期待される注目の女性ユニット「点と」。初海外上映での好反応も大きな励みに

水上賢治映画ライター
「点と」の加藤紗希(左)と豊島晴香  筆者撮影

 映画美学校のアクターズコースの同期で振付師/俳優の加藤紗希と俳優の豊島晴香の女性二人からなる創作ユニット「点と」。

 ともに俳優として活躍する二人だが、「点と」においては加藤が監督、豊島が脚本という役割を担い、アクターズコースの同期の俳優仲間とともにオリジナル映画の制作に取り組む。

 これまで発表した「泥濘む」と「距ててて」の2作品はともに国内映画祭に入選。とりわけ初の長編映画となった前作「距ててて」は<ぴあフィルムフェスティバル>(以下PFF)で観客賞を受賞すると、第15回 田辺・弁慶映画祭、第22回TAMA NEW WAVEでも入選、海外映画祭にも招待されるなど、反響を呼んだ。

 そして、現在、「距ててて」に続く新作長編映画「わたのはらぞこ」のプロジェクトを始動。本作は、いままでの「点と」のスタイルのまま、長野県上田市で地元の方々とともに1本の映画を作り上げるという。

 ユニークな創作ユニットとして注目を集める二人に新たな一歩となる今回の試みについて訊く。全四回/第二回

「点と」の加藤紗希(左)と豊島晴香
「点と」の加藤紗希(左)と豊島晴香

海外での初上映。海外の観客のうれしい反応

 前回(第一回はこちら)は、初の長編映画「距ててて」の劇場公開について二人に振り返ってもらった。

 その劇場公開がひと段落した2022年10月にはウィーンの映画祭<JAPANNUAL>で上映。

 さらには、日本各地のミニシアターが推薦した作品を海外へ配信する国際交流基金「JFF+ INDEPENDENT CINEMA」に選出され、2023年3月から世界配信(※日本除く)された。

 海外での反応はどうだっただろうか?

加藤「劇場公開がちょうど終わったぐらいに海外映画祭への出品が決まったんですよね。

 『点と』の作品が海外の映画祭でかかることは初めてのこと。どういう反応があるのかすごく気になったので、10月のウィーンの映画祭<JAPANNUAL>に、わたしは行ってみたんです。

 現地では舞台挨拶をさせていただいて、一般のお客さんと一緒に観たんですけど……。国内とは反応がまったく違ったことにびっくりしました。

 そもそも上映会場の雰囲気が違って、映画鑑賞というよりはスポーツ観戦みたいな空気がその場に漂っていたんです。

 で、上映が始まったんですけど、たとえば第二章の『かわいい人』(※「距ててて」は全四章で構成されている)は、会話劇で。ちょっとした会話のずれや言葉のやりとり、言葉遊びがおもしろさにつながっている。それが海外の人たちに伝わるのかな?と正直思っていたんです。もしかしたら、海外では一番伝わりづらい章ではないかと思ってもいたんですよ。

 ところが、まったく心配する必要はなかったといいますか。始まったら、わたしのすぐそばにいた観客の方とか、もう笑いすぎてしまって呼吸困難気味になっていました(笑)。豊島さんの書いた会話のおもしろさがきちんと伝わっている。

 英語字幕での上映だったんですけど、伝わるんだと思って。改めて映画ってまったく違う文化や違う土地の方々とこんな感じでつながることができるんだと思いました。

 これを体験できたことは大きかったです」

「距ててて」より
「距ててて」より

豊島「国際交流基金での世界配信でも、コメント欄があっていろいろな国の方から作品への感想をいただくことができました。

 そのコメント、ひとつひとつを、Google翻訳にかけて読ませていただきました。

 さきほど加藤さんも少し触れていましたけど、わたし自身、二章は日本語ならではのおもしろさだと思っていたんです。

 英語に翻訳されたときに、あのニュアンスは伝わるのか、半信半疑でした。意味がわからないんじゃないかなと思っていました。

 でも、すごく好反応をいただいていて、うれしかったですね。書いた身としては自信にもなりました。

 あと、わたしたちの中で、作品をこう見てほしいとか、こういうことを感じてほしいといったことは特にないんです。

 ただ、私たちなりに作品にこめているものはある。

 コメントに目を通すと、わたしたちが考えていたことをくみとってくださっている感想がけっこうあってうれしかったです。

 なんか、それはどういうところから感じ取りましたか?とインタビューしたくなるぐらい、わたしたちの中にある思いを受け取ってくださった方もいて、ほんとうにうれしかったですね」

加藤「世界配信では30カ国以上の方にみていただけたようです」

豊島「勇気づけられるコメントをいくつも受け取ったよね」

加藤「そうだね。

 『最近、生きづらさを感じていたんだけど、作品に勇気づけられたました』とか。

 少人数で作った小さな作品が、すごく大きな場所に届いてくれたなと思いました」

(※第三回に続く)

【「点と」の加藤紗希&豊島晴香インタビュー第一回】

「距ててて」ポスタービジュアル
「距ててて」ポスタービジュアル

「距ててて」

6月13日(木)までシモキタエキマエシネマK2にて1週間限定上映決定!

<アフターイベント実施決定!>

6/8(土)18:20~上映開始、上映終了後トークゲスト:淺雄望(映画監督)&吉田奈津美(映画監督)+加藤紗希・豊島晴香

6/9(日)21:35~上映開始、上映終了後トークゲスト:足立紳(脚本家・映画監督)+加藤紗希・豊島晴香

6/10(月)18:15~上映開始、上映終了後トークゲスト:端田新菜(俳優)+加藤紗希・豊島晴香

6/11(火)21:30~上映開始、上映終了後トーク:加藤紗希・豊島晴香・釜口恵太

6/13(木)21:25~上映開始、上映終了後最終日舞台挨拶:加藤紗希・豊島晴香・釜口恵太・神田朱未・髙羽快

(上映開始時間は予定、多少変更になる可能性があります)

「わたのはらぞこ」メインビジュアル
「わたのはらぞこ」メインビジュアル

「点と(加藤紗希・豊島晴香)」の新作長編映画『わたのはらぞこ』

現在制作支援プロジェクト実施中!

「点と」公式サイト:https://ten-to.themedia.jp/

筆者撮影以外の写真はすべて提供:「点と」

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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