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さらなる飛躍が望まれる注目の女性ユニット「点と」。初劇場公開で得た手ごたえと素敵な出会い

水上賢治映画ライター
「点と」の加藤紗希(左)と豊島晴香  筆者撮影

 映画美学校のアクターズコースの同期で振付師/俳優の加藤紗希と俳優の豊島晴香の女性二人からなる創作ユニット「点と」。

 ともに俳優として活躍する二人だが、「点と」においては加藤が監督、豊島が脚本という役割を担い、アクターズコースの同期の俳優仲間とともにオリジナル映画の制作に取り組む。

 これまで発表した「泥濘む」と「距ててて」の2作品はともに国内映画祭に入選。とりわけ初の長編映画となった前作「距ててて」は<ぴあフィルムフェスティバル>(以下PFF)で観客賞を受賞すると、第15回 田辺・弁慶映画祭、第22回TAMA NEW WAVEでも入選、海外映画祭にも招待されるなど、反響を呼んだ。

 そして、現在、「距ててて」に続く新作長編映画「わたのはらぞこ」のプロジェクトを始動。本作は、いままでの「点と」のスタイルのまま、長野県上田市で地元の方々とともに1本の映画を作り上げるという。

 ユニークな創作ユニットとして注目を集める二人に新たな一歩となる今回の試みについて訊く。全四回/第一回

「点と」の加藤紗希(左)と豊島晴香 
「点と」の加藤紗希(左)と豊島晴香 

コロナ明けの大事な時期に、わたしたちの作品を気に入ってくださり、

「距ててて」の上映を決めてくださったことがうれしかったです(豊島)

 はじめは前作「距ててて」の振り返りの話から。

 先に記したように本作は、<ぴあフィルムフェスティバル>(以下PFF)で観客賞を受賞すると、第15回 田辺・弁慶映画祭、第22回TAMA NEW WAVEでも入選。その後、海外での上映もあり、日本での劇場公開では9館を数えた。

 二人にとっていろいろと初めてのことづくめだったと思うが、どういう機会になっただろうか?

豊島「最終的に9館で上映することができたのですが、いずれの劇場もいい上映になりました。

 劇場公開時は、ちょうどコロナ禍が落ち着いてきたかぐらいのタイミングで。どのミニシアターも、一度お休みせざるえない状況だったところをどうにか切り抜けて、必死に劇場を守って、これから日常を取り戻すといった時期だったと思います。

 まず、そういう大事な時期に、わたしたちの作品を気に入ってくださり、『距ててて』の上映を決めてくださったことがうれしかったです。

 で、実際にお会いしてお話しをしてみると、みなさん映画館で映画を上映する、映画を届けるということにすごく情熱を注がれている。

 作品をすごく大切にしてくださって、それを観客のみなさんに大切に届けようとされている。

 そういうほんとうに真摯な姿勢で文化に向き合っている人生の先輩のような方々にいっぱいお会いして、作り手としてだけでなく一個人としてもすごく勇気づけられました。

 大袈裟でなく、自分がこの社会で生きていくことに希望を感じるような、そんな気持ちになったんです。

 『人との出会い』がまずとっても大きかったですね。

 それから、長野県上田市に訪れた際にもうひとつ大きな出会いがあって。映画館の上田映劇さんの『うえだ子どもシネマクラブ』(※学校に行きにくい・行かない子どもたちの新たな居場所として映画館を活用。活動日には子どもたちが集まり、映画館の仕事を手伝ったり、映画を観たりと思い思いの時間を過ごすことができる)や、同じく上田市にある劇場の犀の角さんが運営している『うえだイロイロ倶楽部』(※子どもたちがそれぞれの関心に合わせてオリジナルな部活を立ち上げ活動をしている)など、文化施設が地域に密着して、その社会でひとつ役割を果たしている場と出会ったんです。

 いまお話しをした場はいずれも子どもたちが安心して過ごせる居場所のようなところになっていて、その活動にとても共感しました。

 そして、これらの出会いがいま進めている新作長編映画『わたのはらぞこ』につながっていくことになったんですよね」

「距ててて」より
「距ててて」より

劇場公開は上映だけでは終わらせたくない思いがありました(加藤)

加藤「そうですね。

 もともとわたしたちの中に、劇場公開は上映だけでは終わらせたくない思いがありました。

 配給も自分たちでしていたので、上映して舞台挨拶をして終わり、ではなくて、もっと地元のみなさんと交流の機会を持ちたいというか。せっかくその土地に行けるのにもったいない、何かできないかなと思ってしまって(笑)。

 なのでわたしたちなりの上映活動で、地元のみなさんとワークショップなどを通して交流をはかり、時間が過ごせたらと考えました。

 そこで、劇場の方にたとえばダンスやお芝居のワークショップを提案したんですけど、けっこうみなさん受け入れてくださって。『ぜひやりましょう』とおっしゃってくれて一緒に企画して実現することができたんです。

 さきほど豊島さんの話に出た『うえだ子どもシネマクラブ』や『うえだイロイロ倶楽部』は全国のミニシアターの方が集まるコミュニティシネマ会議に行ったときに知り、元々訪れたことのない土地でしたが『ぜひ行ってみたい!』と思い、上田映劇さんにご連絡をしました。

 それで『距ててて』を上映することも決めてくださり、舞台挨拶もして、ワークショップもさせてもらうという流れになりました。実際に行き、顔を見てお話をして、さらに惹かれるところが多かったです」

(※第二回に続く)

「距ててて」
「距ててて」

「距ててて」

6月7日(金)〜6月13日(木)まで

シモキタエキマエシネマK2にて1週間限定上映決定!

「わたのはらぞこ」メインビジュアル
「わたのはらぞこ」メインビジュアル

「点と(加藤紗希・豊島晴香)」の新作長編映画『わたのはらぞこ』

現在制作支援プロジェクト実施中!

「点と」公式サイト:https://ten-to.themedia.jp/

筆者撮影以外の写真はすべて提供:「点と」

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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