レール温度上昇により運休ってどういうこと!? 北海道、観測史上最大の酷暑日に遭遇したバス代行輸送
2023年8月23日、酷暑が続く北海道では観測史上最高となる36.3度を札幌市で記録したこの日、筆者が東室蘭経由で長万部駅に到着した際に、レール温度上昇のため函館本線(山線)の長万部ー倶知安間が運休しバス代行輸送となっていたことは、2023年8月29日付記事(札幌ー東京間を普通列車だけで移動するとどうなるの!? 実際に35時間かけて乗ってみた【前編】)でも触れた通りだ。
そもそも、レール温度上昇とはどういうことなのだろうか。
レール温度が60度を超えるとゆがみの可能性
鉄道レールは、暑い時には鉄が膨張し、寒い時には縮む性質がある。こうした寒暖差による鉄の伸び縮みを考慮して、鉄道レールの間には「遊間」と呼ばれる隙間が設けられており、ある程度の鉄の伸びには対応ができるように設計されている。
しかし、この「遊間」に余裕がなくなるほど鉄が膨張してしまうとレールにゆがみが生じる可能性が出ることから、列車運休の措置が取られることになる。なお、一般的な鉄道レールの設計上の上限温度は60度であるという。
この日の北海道は観測史上最高となる酷暑日だったことから、函館本線(山線)のレールの温度がゆがみの生じる可能性のある温度まで上昇していたことが予想される。
なお、2023年は8月だけでも、3日に高山本線の富山―猪谷間、24日に山形新幹線の新庄―福島間、25日に石勝・根室線のトマム―帯広間など全国各地で酷暑によるレール温度上昇を理由とする運休が相次いでいた。
鉄道の1時間半に対して代行バスは2時間の所要時間
筆者はこの日、東室蘭からの普通列車で長万部駅に到着したのは15時23分のことであったが、列車を降りると、函館本線(山線)の長万部ー倶知安間がレール温度上昇のため運休・バス代行になるという案内放送が流れた。
駅の掲示を見ると長万部13時29分発の倶知安行が運休になったとのことで、その代行バスが15時45分頃に駅前から発車するという。駅前の様子を見に行くとすでに、炎天下のなか数十人の乗客がバスを待っており、乗客の誘導を行っていた駅員氏は倶知安まで約2時間の所要時間を要することを代行バスの乗客に伝えていた。
なお、長万部―倶知安間は列車であれば所要時間は1時間30分程度であることから、やはりバスになると同区間の所要時間は大幅に増すようである。
函館本線(山線)の長万部―小樽間の140.2kmは、北海道新幹線の並行在来線として2022年3月、北海道庁主導の協議会において廃止の方針が結論付けられており、道庁は代替バスについて長万部―黒松内、黒松内―倶知安、倶知安―余市、余市―小樽間に分割して路線バスを設定することを発表している。
しかし、長万部―小樽間の一定の通過利用者がいる中で、速達性に優れた在来線を廃止し、所要時間が激増する路線バスを設定しようという発想は、地域の利便性を大きく損ねるばかりか、観光客にとっても訪れにくい地域を作ることになり、北海道観光の衰退を招きかねない。
(了)