インドとパキスタンに早すぎる強烈熱波、小麦不足に拍車も
インドとパキスタンに、早すぎる熱波が到来しました。
"世界一蒸し暑い"ともいわれるパキスタン北部のジャコババードでは、4月30日(土)と今月1日(日)に、2日連続で49.0度が記録されました。例年のこの時期の気温は43度ですが、1週間を通して気温が46度を越えました。
インドでは、強烈かつ長期の熱波が襲い、記録が次々と塗り替えられています。先々月のインド全体の平均気温は、1901年の統計開始以来3月としてはもっとも高くなりました。次いで先月も、北部などで観測史上もっとも暑い4月を記録しています。
パキスタン(※)のラホールでは、3月後半から平均気温を5度ほど上回る暑さが続き、4月後半からは連日40度を超えました。通常ラホールは最暑月である6月でも、最高気温の平均は40度です。
熱波の原因は、稀に見るほど低気圧が発生しなかったために、晴天が続いたことなどがあるようです。
記録的な電力需要と溶ける道路
インドの電力需要は4月、史上最高に達し、大規模な停電も発生したもようです。
ニューデリーのごみの埋立て地では火災が発生、周辺地域に煙が立ち込め、健康被害も報告されています。
またあまりの暑さで道路が歪んだり、傷んだりしているようです。人工衛星が29日(金)にインド北西部の道路の表面温度を測ったところ、62度まで上がっていました。一般に50度を超えると、アスファルトが溶けるといわれています。
小麦の収穫に大打撃か
今回の熱波でとりわけ打撃を受けている農作物が小麦です。
インドは世界で2番目に多くの小麦を生産している国で、畑の広がる北部は「インドのパンかご」などとも称されています。春は小麦の穀粒が大きくなる重要な時期といいますが、暑さに弱いため、大きな被害が広がっているとも伝えられています。
今、世界は小麦不足にさいなまれています。世界第3位の小麦生産国であるロシアと、8位のウクライナの輸出が止まり、3月の小麦の先物価格は14年ぶりに最高値を更新したほどでした。
そんな中で起きた空前絶後の早すぎる強烈熱波は、火に油を注ぐような形となっています。先月インドは、世界的な小麦供給不足の中でも、自国が需要を満たすことができると発表したばかりでした。
生死のやじろべえ
専門家は、温暖化が進むと南アジアの熱波は益々厳しいものになっていくと予想しています。
そもそもジャコババードは「人類が住むには暑すぎる町」などとも言われています。というのも、湿度と気温を加味した「湿球温度」で、人類が生きられるリミットとされる35度に、過去何度も達したことがあるためです。湿球温度が35度に到達した場所は、このほかにアラブ首長国連邦のラアス・アル・ハイマしかありません。
しかし、アラブ首長国連邦と決定的に異なるのは貧困です。ジャコババードでは真夏にはしばしば停電が起きて冷房が効かなくなるうえ、避暑地に逃れられる余裕のある人たちは、ほとんどいないといいます。
まるで、生死の境界線の上を爪先立ちで綱渡りしているような状況と言えるかもしれません。ジャコババードは世界でもっとも温暖化の脅威にさらされている場所と言っても過言ではありません。
※(5/17)修正いたしました。