「コロナとDV・性虐待 同じように対策を」と講演
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は私たちの社会を一変させた。感染防止のためのマスク着用、人と人との距離を空けるソーシャル・ディスタンスといった対策が世の中で広く受け入れられている。これは公衆衛生上、社会を守るための予防対策として有効だと考えられているからだ。
だがコロナが広がるはるか前から、世の中を蝕んでいる宿痾があり、一向に収まる気配がない。だから、コロナで公衆衛生上の対策に関心が高まっている今こそ、こうした長年の課題にも取り組もう。そう訴えている専門家がいる。
森田ゆりさん。子どもと女性への暴力防止をテーマに長年、研究・教育・著述・講演に取り組んできた。森田さんは語る。
「DV(ドメスティック・バイオレンス)と性虐待は、新型コロナと同じように世界の公衆衛生の最重要課題です」
なぜなら、国連や日本の内閣府のデータによると、女性の3人に1人が夫から暴力を受けるなど、DVは驚異的な広がりを見せている。性虐待も、女子の3人に1人、男子も6人に1人が被害にあったというデータがあるという。
そして性暴力はPTSDなどの形でその後の人生に長く大きな影響を与えることが知られている。子どもの目の前で母親が父親から暴力を受けるのも心のダメージが大きい。そして、虐待をする母親が夫からDVを受けていたり、虐待をする親が子ども時代に自分も虐待を受けていた、というケースも目立つ。
だから森田さんは提唱する。
「コロナでマスクやソーシャル・ディスタンスの重要性を人々に知らせたように、DVや性虐待についても公衆衛生上の問題と捉えて、世の中で予防教育を徹底すれば発生を減らすことができます。大切なのは専門家ではなく私たち一人一人の考え、行動なんです」
そんな森田ゆりさんのお話を直接お聞きするチャンスが今日ある。大阪弁護士会が主催する「おおさか人権フェスタ」の一環として、午後3時から5時まで、講演が行われるのだ。時節柄リアルの講演ではなく、ZOOMによる配信となるが、逆に世界中どこからでも見ることができる。タイトルは「DV と子ども虐待併発家庭への支援:SOS をキャッチする対話力」。東京都目黒区で起きた結愛ちゃん事件、千葉県野田市で起きた心愛さん事件。2つの虐待死事件の事例から虐待とDVの関係を読み解き、虐待家族への支援、ケースワークはどうあるべきかを考えるという。
さらに性虐待もDVも加害者はほとんどが男性という現実から、暴力容認と女性差別の偏見が根強い男性文化を変える必要性、そのために、暴力を振るわず望まない大半の男性の力が必要だと訴える。
司会は大阪弁護士会の太平信恵弁護士が務める。講演はZOOM配信で、きょう19日午後3時から5時まで。参加は無料。配信は以下の「おおさか人権フェスタ」のリンクから、森田ゆりさんの講演の「ZOOM配信」をクリックで。
https://osaka-jinken-festa.net/event/
【執筆・相澤冬樹】