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2024年、感動した高額店と心が動かなかった高額店

松浦達也編集者、ライター、フードアクティビスト
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2024年のレストラン事情を振り返ってみると、今年は格差が劇的に開いた年でした。特にお代。高級レストラン業界という村のなかだけ、価格の感覚がおかしくなっている印象があります。確かに食材原価は高騰しています。イタリア料理やスペイン料理に欠かせないオリーブオイルのなかには、以前の数倍もの価格に値上がりしたアイテムもあります。燃料代や通貨レートなど上げ要因しかないといっても過言ではありません。

しかしこの数年の4~5万円のお会計の鮨店や2万オーバー当たり前という焼鳥店の話を聞くとついつい眉を潜めたくなってしまいます。

もちろん本当に価値ある店もあります。鮨で言えば「蛎殻町すぎた」のようににぎり、仕込み、接客に至るまで極上のカウンターを味わわせてくれる店ならばいくら積んでもいいという客がいるのも道理でしょう。


その弟子筋の「鮨 はしもと」(新富町)ほか、すきやばし次郎で研鑽を積んだ「鮨 みずかみ」(半蔵門)、「鮨 門わき」(銀座)などもその価格帯ですが、たまに伺うとにぎりや素材、仕込みなどに何の違和感もありません。

その他のジャンルの店でも時間をかけて客単価が上がってきた店については、それ相応の価値を常連をはじめとした客が認めているからこそ、その価格で営業できているわけです。

また新店だとしても、すでにキャリアを積んでいるシェフの名前を冠した「GINZA 脇屋」(「トゥーランドット臥龍居」の脇屋友詞シェフ自らがカウンターに立つ高級中華)などはワインペアリングのコースだと6万円超ですが、人によってはお値打ちと感じられるかもしれません。それは脇屋シェフ自身が積み上げてきた研鑽の価値を客が知っているからです。

しかし新店を見ていると、レストランの本質である「料理」や「サービス」が価格に見合わない店鋪もずいぶん増えました。独断と偏見で言えばとりわけその傾向が目立つのが……

(以下、4588文字の記事と10点の画像を含みます)

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編集者、ライター、フードアクティビスト

東京都武蔵野市生まれ。食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで「調理の仕組みと科学」「大衆食文化」「食から見た地方論/メディア論」などをテーマに広く執筆・編集業務に携わる。テレビ、ラジオで食トレンドやニュースの解説なども。新刊は『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)。他『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)ほか。共著のレストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)審査員、『マンガ大賞』の選考員もつとめる。経営者や政治家、アーティストなど多様な分野のコンテンツを手がけ、近年は「生産者と消費者の分断」、「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター

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