加熱式タバコ〜小児の「誤飲事故」が増える理由
タバコは喫煙者の日常にごく普通にあるもので、乳幼児や子どもの興味を引きやすくタバコの誤飲事故は多い。最近、加熱式タバコの喫煙者が増え、そのタバコ部分が小さいため、誤飲事故がさらに増える危険性がある。
依然としてタバコ誤飲が第一位
乳幼児や子どもは好奇心旺盛で、手近にあるものは何でも手に取り、口に入れてみようとする。そのため小児の誤飲事故が起き、救急搬送されたり重篤な症状につながることも多い。
2018年2月に厚生労働省から発表された「2016年度 家庭用品等に係る健康被害 病院モニター報告」(※1)によれば、小児の誤飲事故で最も多かったのがタバコ(147件、20.2%)となっている。
ところで、加熱式タバコを含むタバコ製品は、日本では法律によってタバコ葉を含むものとされている。タバコ葉にはニコチンが含まれているが、ニコチンは薬機法(旧薬事法)によって劇毒物に指定され、許可を得て適切な管理のもとでなければ使用・販売することはできない。
乳幼児のニコチン経口致死量は10〜20mg(タバコ半分〜1本分)と考えられ、日本の電子タバコ(加熱式タバコではないリキッドなどを蒸気化するもの)にニコチンが含まれていないのはこの法律による。
逆にいえば、なぜ劇毒物であるニコチンが含まれるタバコ製品が堂々と売られ、乳幼児が誤飲事故を起こすようなことになっているのだろうか。それは、たばこ事業法という法律があり、タバコ葉を使用したタバコ製品は厚生労働省や消費者庁ではなく、財務省の管轄になっていて特別に許可されているからだ。
小児誤飲事故の病院モニター報告は2016年度のもので、その頃はまだアイコス(IQOS)などの加熱式タバコはそれほど広まっていなかった。だが、すでに成人喫煙者の20%が加熱式タバコの喫煙経験者と見積もられ、喫煙率の減少と相反するかのように加熱式タバコの喫煙者は漸増しているようだ。
甘く小さ過ぎて危険
写真に示すようにアイコスのヒートスティック、プルーム・テック(Ploom TECH)のたばこカプセルは既存の紙巻きタバコ、単四電池よりも小さい。紙巻きタバコでも誤飲事故が多いので、乳幼児が容易に口に入れることのできるサイズの加熱式タバコの誤飲事故はもっと増えるだろう。
上段左から十円玉、上は単四電池、下は誤飲事故がよく起きるボタン電池、下段左からプルーム・テックのたばこカプセル、アイコスのヒートスティック、紙巻きタバコ(マールボロ):写真撮影筆者
喫煙者が減り続け、「タバコはかっこ悪い」というイメージを持つ未成年者も増え、加熱式を含めたタバコという製品は消えゆく運命にあるわけだが、タバコ会社はより喫煙しやすい、手に取りやすいタバコ製品を作ろうとしてきた。アイコスなどもその路線だが、一方で多種多様な香料を添加し、タバコ特有の苦みなどを消す製品も多い。
加熱式タバコのラインナップをみてみればわかるが、これまでのメンソールに加え、アイコスではメンソールにシトラスやベリーなどのミント系が、プルーム・テックではストロベリーマンゴー、ベリーミント、アップルといったフレーバーが、またグロー(glo)という加熱式タバコには従来のカプセル入りメンソールに加え、ベリーやミントなどのメンソール銘柄がそろっている。
乳幼児や子どもは、甘い芳香に興味を持ちやすい。タバコの誤飲事故が多いのは、日常生活に転がっていて手に取りやすいだけでなく、それ自体に強い臭いがあって引き寄せられやすいからだろう。
幸い、タバコの誤飲事故で死亡例はほとんど報告されていない。タバコ葉に含まれるニコチンの強い嘔吐作用により、吐き出されることが多いこともあるが、乳幼児の場合、紙巻きタバコをそのまま口に入れるのではなく、手でバラバラにほぐし、その一部を口に入れたりすることもあって発見が早いからとも考えられる。
だが、加熱式タバコの場合、サイズも小さく、プラスチックの小ケースに入っているものもある。乳幼児がそのまま口に入れれば発見しにくく、嘔吐もせずに消化器官へ送り込まれ、ニコチンが吸収されることも起きる危険性は高い。厚生労働省では、喫煙者はタバコや加熱式タバコのスティックを放置せず、目の届かない場所に保管し、子どもの行動に注意するよう呼びかけている。
もし仮に子どもがタバコを誤飲した、もしくは痕跡や症状からそれが疑われる場合、すぐに医療機関へ連絡し、措置を仰ぎ、症状によっては救急搬送も依頼すべきだ。ニコチンの吸収を早めてしまうため、大量の水やミルクなどを飲ませることは避けたい。
※1:厚生労働省「2016年度 家庭用品等に係る健康被害 病院モニター報告」(2019/01/11アクセス)