チェルシー、アトレティコ、シティ...”攻撃時の3バック”に、「後方からの構築」の重要性。
後方から、構築する。その重要性が、フットボールの世界で高まってきている。
チャンピオンズリーグで優勝したチェルシーは、シーズン途中にトーマス・トゥヘル監督が就任して劇的に変わった。4バックから3バックに変更し、【3-4-2-1】でビッグイヤー獲得まで駆け抜けた。
一方、その決勝でチェルシーに敗れたマンチェスター・シティには、ルベン・ディアスというセンターバックがいた。昨夏、シティが移籍金6800万ユーロ(約72億円)でベンフィカから獲得したDFはジョン・ストーンズとのコンビを確立。プレミアリーグ制覇とCL準優勝の立役者になった。
R・ディアスはベンフィカのカンテラ出身選手である。11歳で入団して、18歳でチャンピオンズリーグ決勝トーナメント一回戦で招集され、注目を集めた。その後、ブルーノ・レイジ監督に重宝されるようになり、ヨーロッパで徐々に評価を高めていった。予測力、カバーリング能力、フィジカルベースの高さ、彼はセンターバックとして申し分ない能力を兼ね備えている。
ペップ・グアルディオラ監督が、守備陣の補強に注力してきたのは周知の事実だ。近年、シティはDF獲得におよそ2億3500万ユーロ(約305億円)を投じている。そして、”当たり”になったのがR・ディアスの獲得だ。今季、R・ディアスが出場したプレミアリーグ32試合で、シティは15試合を無失点で抑えている。
先日、今季のプレミアリーグ最優秀選手が発表された。選ばれたのはR・ディアスだった。「ふつうはゴールを奪う選手が、注目されると思う。だけど、僕がこの賞を受けるのは、シティがゲームを後方から構築するという証だ」とは受賞後のR・ディアスのコメントだ。
グアルディオラ監督が率いるチームでは、センターバックにビルドアップ能力が求められる。R・ディアスのプレミアリーグでのパス成功率(93.2%)、チャンピオンズリーグにおけるパス成功率(94.4%)を見れば、なぜ指揮官が彼を起用してきたかが分かる。
■3バックと4バック
3バックか、4バックか。それが問題だ。
前述したように、チェルシーは3バックで、R・ディアスを擁するシティは4バックだった。ただ、グアルディオラ監督はジョアン・カンセロをサイドバックで起用して、可変式で3バックを敷く時がある。
つまり、焦点を当てるべきは、3バックと4バックの使い分けだろう。対戦相手によって、選手の適性によって、あるいは試合中に「3」と「4」を自在に操らなければならない。その作業は決して簡単ではない。
今季のリーガエスパニョーラでは、3バックが流行していた。
ディエゴ・シメオネ監督(アトレティコ・マドリー/3-1-4-2)、ロナルド・クーマン監督(バルセロナ/3-5-2)は最終ラインを3枚にしていた。ジネディーヌ・ジダン監督(レアル・マドリー/3-4-3)は基本的に4バックを好んでいたが、状況次第で3バックを使っていた。
■メッシの守備
バルセロナはセルヒオ・ブスケッツがワンボランチで快適さを取り戻した。シーズン序盤の【4-2-3-1】では、ブスケッツが窮屈にプレーしているように見えた。ワンボランチになり、加えてペドリやフレンキー・デ・ヨングが自由に前線に出ていくことで、中盤にスペースが生まれ、以前のようにリオネル・メッシへの縦パスが入るようになった。
そのメッシは、守備の負担が軽減されるようになった。アントワーヌ・グリーズマンと2トップを組み、ディフェンスに関してはグリーズマンが献身的に走ってくれる。
(バルセロナとメッシの守備負担軽減)
あるいは、ウスマン・デンベレを前線に据え、カウンターを仕掛ける。現在のバルセロナは、グアルディオラ監督やルイス・エンリケ監督が率いていた頃のように、ボールロストからボールを奪い返すまでの時間が短いわけではない。だがデンベレというスピードのある選手を【3-5-2】で起用することによって、トランジションとカウンターの部分を担保している。
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■ジダン・マドリーの光と影
ジダン・マドリーの3バックは、成功パターンと失敗パターンの2種類があった。
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