久保建英にエスパニョール移籍の可能性。左利きのアタッカーという利点。
東京五輪に向けたメンバー発表が、間近に迫っている。
発表は22日だ。「当確組」「当落線上にいる選手」「生き残りをかけたサバイバル」こういった枠組が、メディアは大好きだ。そして、ファンも、(全員ではないにせよ)心のどこかでそれを望んでいる。
私の経験上、この時点で「何としてもメンバーに残りたいです」のようなことを言っている選手というのは、期待できない。
「本大会で勝ち上がりたいです」「母国開催なのでメダルを獲りたい」そういった発言ができる選手が、活躍する。もっと言えば、長い目で見た時に、世界へと羽ばたいていくのは後者だ。中田英寿然り、本田圭佑然り。メンバー選考に意識が行くのは、会社員が社内にアピールしているようなもの。だが”デキる社員”はいつも社外を見据えている。「どこを向いているか」というのは意外に大事で、選手として重要な資質なのである。
現時点、久保建英は当確組だという。
となると、彼が選ばれるか否かを論じるのは、意味がない。そもそも、先述したように、私はメンバー選考の類にあまり関心がない。選ばれた選手が全力で挑めばいいだけの話。そう考えているからだ。
それより、俄(にわ)かに盛り上がり始めている久保の移籍話が気に掛かっている。スペイン『マルカ』では、移籍市場が開く度に「Mercado de fichajes/メルカード・デ・フィチャヘス」という企画コンテンツが立ち上がる。それは移籍決定、報道、噂を取り上げていくものだが、この数日はそこに久保の名前が挙がってきている。
マジョルカ、ベティス、エスパニョール。現在、久保に関心を寄せているのは、この3クラブだ。
レアル・マドリーはジネディーヌ・ジダン前監督が退任して、カルロ・アンチェロッティ監督が就任した。とはいえ、新指揮官が久保を構想内にするとは考えにくい。
なにより、久保にはEU圏外枠の問題がある。エデル・ミリトン、ロドリゴ・ゴエス、ヴィニシウス・ジュニオールがマドリーのEU圏外枠の3枠を占めている。ヴィニシウスに関しては、EUパスポート取得に向けて動いているが、まだ取得の一報は届いていない。
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■エスパニョールのスタイル
そのような状況で、今回は久保のエスパニョール移籍の可能性を探ってみたい。
エスパニョールを率いるのは、ビセンテ・モレノ監督だ。2019-20シーズン、マジョルカで久保を指導した監督である。
V・モレノ監督はエスパニョールで【4-4-2】と【4-2-3-1】を使い分けながら戦っている。
久保の獲得の可能性があるとすれば、エスパニョールに左利きのアタッカーとドリブラーがいない点が重要になる。
ハビ・プアド、アドリアン・エンバルバ、ニコ・メラメド、セルジ・ダルデル...。両サイドハーフで起用されてきた選手は、いずれも右利きだ。
トップ下を本職とするオスカル・メレンドは左利きだが、彼はプレーメーカーである。左利きのドリブラーで、右ウィング起用できる選手はいない。これが久保のメリットだ。
ただ、彼らは得点力とアシスト力を備えている。プアド(公式戦12得点8アシスト)、エンバルバ(9得点14アシスト)、ダルデル(6得点3アシスト)、メラメド(6得点3アシスト)と2部とはいえ2020-21シーズンに申し分ない数字を残した。
ただ、V・モレノ監督のエスパニョールは「5レーン」をうまく使うチームではない。
守備時は基本的に【4-4-2】にセットする。2トップが前線からプレスを掛け、ボールを追う。コースを限定して高い位置でボールを奪い、ショートカウンターを仕掛ける。
攻撃に切り替わった時、重要なのは前に早くボールを預けることだ。それは非常にvertical(ベルティカル/垂直な)フットボールだと言える。シンプルに評するなら、縦に速いサッカーだ。
ボール保持時は、なるべく早いタイミングでプアド(サイドMF)やラウール・デ・トーマス(FW)にパスを預ける。彼らがエスパニョールの得点源だ。どちらの選手も、サイドに開いてからのカットインシューターである。右利きなので、左サイドで受けて中央に切り込むフィニッシュする形を好む。
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