下痢便のとき、あなたの手は汚染されている 手洗いを徹底しましょう
新型コロナウイルス感染症による主な感染経路は、接触感染と飛沫感染と言われています。また、感染性は定かではありませんが、排泄物にもウイルスが排出されている報告がありますし、ノロウイルスや腸管出血性大腸菌などのウイルスや病原菌が存在する可能性があります。
そこで、今回はトイレでの接触感染の可能性について考えてみます。
思っている以上に手で顔を触る
トイレは大勢の人が同じところ(ドアノブ、鍵、ペーパーホルダー、便座、便蓋、蛇口、スイッチなど)に触れるので、そこに菌やウイルスが付着していると、手を介して自分の目や口に運ばれて感染する可能性があります。ですので、トイレでは手で顔を触らないことが重要です。
ちなみに、以前の記事でも書きましたが、ニューサウスウエールズ大学の医学生(合計26人)を対象にした調査では、1時間当たりの顔への接触回数は平均23回でした。つまり、私たちは頻回に手で顔を触り、目・鼻・口にウイルスを運んでしまうので、手を顔に触れないように意識することが大切です。
飛沫の大きさ
BBCの記事によると以下の記載があります。
ここで理解しなくてはいけないのは、これらの飛沫は多くは目に見えないということです。一般的に飛沫感染で言われている飛沫は、咳やくしゃみや発声に伴って排出される主に5μm以上です。1μmというのは1mmの1000分の1の大きさです。
飛沫と聞くと水滴のようなイメージをしがちですが、そうではなく目に見えなくても飛沫は付いているということです。ちなみに、大阪教育大学の吉本直弘氏の資料によると雨粒は直径が0.1mm以上の水滴ですから、飛沫がいかに小さいかが分かります。
どこが汚染されているか?
野田衛氏(国立医薬品食品衛生研究所)の資料「ノロウイルスによる食中毒の現状と対策について」によると、トイレの洗浄後に便座や床に汚水の飛沫が飛んでいることが分かります。
気をつけなければならないのは、洗浄の際の飛び散りだけではありません。長野県北信保健福祉事務所の「トイレを起点とするノロウイルス汚染拡大の検証」によると、和式トイレでの水様下痢便による汚染状況として、靴やズボンの裾内側面への飛散、便器周囲の床面に広範囲にわたって多数の飛散を確認したと報告されています。
洋式トイレについては、ズボンの裾内側面および便器外側周囲に飛散はないが、便座裏側および便器内側全体に多数の飛散を確認したとなっています。
和式便器の床、洋式便器の便座が汚染されるのは、想像できると思いますが、和式便器を使用する場合は、ズボンの裾にも飛散していることを認識する必要があります。
一番気をつけてほしいのは「手」
ここで私が最も驚いたのは手の汚染です。前述の長野県北信保健福祉事務所の検証によると、水様下痢便の場合、臀部への飛散がかなりあります。
これは和式便器・洋式便器のいずれの場合も同様です。そして、排便後の肛門拭き取りの際に、手のひらのトイレットペーパーで覆われていない部分(袖も含む)が汚染されていることが分かりました。自分が下痢便のとき、こんなに手についていたとは衝撃的です。
下痢便ではなかったとしても、排便時の跳ね返りの汚水が臀部につくことがありますので、排便後の肛門拭き取りの際は、手が汚染されることが予想されます。さらに、別の試験結果では、大腸菌を含む液体を少しだけトイレットペーパーに垂らしたところ、かなりの枚数を通過したという資料もあります。いずれにしても、手が汚染されるということです。
多くのトイレは個室内に手洗いがないですし、もしあったとしてもそこですべての人が手を洗っているかどうかは分かりません。つまり、汚染された手で、ドアノブやペーパーホルダーなどに触れることになります。
繰り返しになりますが、トイレには、新型コロナウイルスに限らずノロウイルスや腸管出血性大腸菌などのウイルスや病原菌が存在する可能性があります。
自分の身を守るためには、やはり手で顔を触らないことと、トイレ後の手洗いを徹底することが大事だと思います。