節分の「恵方巻」ブームはいったいどこへ向かうのか
コンビニがブームを牽引した「恵方巻」
節分に恵方を向いて無言で願いごとを考えながら、太巻き寿司を無言で食べ切ると良いとされる「恵方巻」。一説には関西で江戸時代から続く風習とも言われているが、その発祥には諸説あり定かではない。しかし、現在のブームのきっかけになったのは、1989年広島市内のセブン-イレブンで行われた販促イベントであることは確かなようだ。以降、徐々に販路を拡大し「恵方巻」は浸透し、他のコンビニやスーパーなども追随する形で現在のブームを作り上げていったのだ(参考記事:日経トレンディネット 2009年1月24日)。
当初は単なる太巻きだった恵方巻も、ブームになるに連れてどんどん進化を遂げてきた。火付け役とも言えるセブン-イレブンでは、今年も精力的に商品を展開。定番の『福を呼ぶ七品目の恵方巻』をはじめ、弁当などと一緒に楽しめるようなミニサイズの恵方巻など、様々な種類の恵方巻を販売する(参考資料:セブン-イレブンホームページ)。またファミリーマートでは、ハローキティとのコラボレーション恵方巻を開発するなど、独自の商品展開をしている(参考資料:ファミリーマートホームページ)。
デパートでは1万円を超える高級恵方巻も
年々ヒートアップする恵方巻商戦だが、中でも注目すべきはデパートの恵方巻。三越では和、洋、中とそれぞれのジャンルの有名店による創作恵方巻を販売し、毎年好評を得ている。毎年数多くの創作恵方巻で話題を集める東武百貨店池袋店でも、46店舗100種類以上の恵方巻を販売。「キッチンスギモト」が創作した、松阪牛のステーキを350gも巻き込んだ『松坂牛ステーキ恵方巻』は、なんと1本21,600円という超高級恵方巻。10本のみが予約限定にて販売される(参考資料:東武百貨店ホームページ)。
毎年100種類以上もの恵方巻で人気の大丸東京店では、昨年の140種類から150種類へと種類を増強。中でも力を入れているのが「豪華食材恵方巻き」で、ズワイガニの脚肉を海苔に見立てて寿司を巻いた「札幌かに家」の『一本勝負かに巻き』や、アワビやフカヒレをふんだんに使用した「銀座アスター」の『アワビふかひれ恵方巻』、さらには18種の豪華食材を金箔海苔で巻き、仕上げにキャビアを添えた「中島水産」の『2018年18種類の十八番(おはこ)巻』は1本15,000円という価格で販売する。
食のイベントとして定着した「節分グルメ」
本来は巻寿司だった恵方巻だが、同じ形状ということからロールケーキを恵方巻に見立てた「恵方ロールケーキ」が登場したことで恵方巻商戦が一気にヒートアップ。今では洋菓子店だけではなく和菓子店や他のジャンルの飲食店も参戦するようになった。基本的には細長い形状のものが多いが、最近では鬼に見立てた料理やお菓子なども「節分グルメ」として販売されるようになり、バレンタインデーに並ぶ2月の食のイベントとして定着した感がある。もはや恵方がどちらを向いていようがお構いなしだ。
「恵方」とは陰陽道でその年の福徳を司る神である「歳徳神(としとくじん)」の在する方位を、吉の方向として定めたもの。その方角に向かって事を行えば「万事に吉」とされている。今年2018年の恵方は「南南東」なので、恵方巻にかぶりつく時はどうぞお忘れなく。