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「どうする家康」は、どうすればいいのだろうか?視聴率アップのカギとは

渡邊大門株式会社歴史と文化の研究所代表取締役
(提供:アフロ)

 大河ドラマ「どうする家康」は、昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に比べて、視聴率がやや低迷気味である。ネット上での評判も今一つである。今回は、どうすればいいのか考えてみよう。

 最初に申し上げておくと、大河ドラマはフィクションなので、歴史研究そのものを反映させるものではない。史実を押さえながら、主人公の考えや心情を慮り、ストーリーを展開していく。事実の羅列だけでは、おもしろくないのは自明のことである。

 一方、歴史研究では、歴史上の人物の心情に踏み込むのは歓迎されない。また、歴史上の人物の性格も同様である。たとえば、織田信長は直情径行の人物と評価されているが、それは彼の行動の一部を切り取って評価したにすぎない。

 今回の「どうする家康」で描かれる家康は、大変憶病でいつもおどおどしている。非常に頼りない印象を受ける。特に、信長をとても恐れているようで、会うたびにビビりまくっているのが印象的である。腹の調子がいつも悪いのは、今後の布石だろう。

 このような家康であるが、一つ一つの難題を克服して成長し、やがて立派な天下人になる展開になるのだろう。とはいえ、これでは視聴者の共感を得にくいようにも感じる。端的に言うと、家康がこんなに頼りないならば、天下人になれないだろう痛感する点に尽きる。コメディータッチがすぎるのだ。

 そもそも家康は西三河に基盤を置く、小さな大名だった。そんな家康が織田氏と強力なタッグを組み、今川氏ら強大な大名を滅亡に追い込み、武田氏のような強大な大名と互角に渡り合った。つまり、家康は非常に強かで、なかなかの知恵者だったという印象がある。

 いうまでもないが、戦国時代は生き残りが非常に厳しい時代だった。今川氏は義元の時代に栄耀栄華を極めたが、義元の死後は呆気なく滅亡した。家康があんなに弱気でおどおどしていたら、同じように滅亡していたはずである。ゆえに、リアリティーに欠けるのだ。

 もちろん好みの問題はあるだろうが、多くの人はギラギラした野心を持ち、強かに戦国の世を生き抜く家康を見たいのではないだろうか。昨年の大河ドラマがウケたのは、終盤が近づくにつれ、そういう面が見られたからだろう。

 ともあれ、今や時代劇は完全に衰退しており、連続時代劇はほぼ大河ドラマだけになった。そういう事情もあるので、これからテコ入れして、視聴率がV字回復してほしいものである。

株式会社歴史と文化の研究所代表取締役

1967年神奈川県生まれ。千葉県市川市在住。関西学院大学文学部史学科卒業。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。大河ドラマ評論家。日本中近世史の研究を行いながら、執筆や講演に従事する。主要著書に『大坂の陣全史 1598-1616』草思社、『戦国大名は経歴詐称する』柏書房、『嘉吉の乱 室町幕府を変えた将軍暗殺』ちくま新書、『誤解だらけの徳川家康』幻冬舎新書、 『豊臣五奉行と家康 関ヶ原合戦をめぐる権力闘争』柏書房、『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』星海社新書、『関ヶ原合戦全史 1582-1615』草思社など多数。

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