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WBA王者・京口紘人の米国デビュー戦の相手を直撃「判定に影響するかもしれない…」

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
初めてアメリカのリングに立つ京口(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 WBA世界ライトフライ級スーパー王者の京口紘人(ワタナベ)が3月13日、米テキサス州ダラスのアメリカン・エアーラインズ・センターで防衛戦を行う。海外で初の試合を迎える京口(27歳)の相手は弱冠20歳のアクセル・アラゴン・ベガ(メキシコ=WBA10位)。これまで18勝8KO3敗1分。2019年10月、最軽量級のミニマム級でWBO王者ウイルフレド・メンデス(プエルトリコ)に挑戦。7回負傷判定負けながらスコアカードは2-1のスプリットと割れる善戦だった。

 米国との国境に近いメキシコ・北バハカリフォルニア州の港町エンセナダ在住のベガにマネジャー兼トレーナーのホセ“ピチョン”ゴンサレス氏を通じてコンタクト。電話で京口戦の抱負を聞いた。

京口をぶっ飛ばす!

――チャンピオン京口への挑戦まで2週間近くになりました。

ベガ「そうですね。今度こそベルトを獲るんだと気合を入れて練習してます」

――出身地のメキシコシティからエンセナダに移ったのはどうして?

ベガ「誤解されているようだけど私はメキシコシティと縁もゆかりもない。ずっとここエンセナダに住んでいる。何かの間違いでそう報道されているのです」

――ボクシングを始めたのはいつ頃?

ベガ「2013年から。2016年にアマチュアでナショナルチャンピオンになりました。ウエートは48キロクラス(ライトフライ級)。アマチュアの戦績は80戦71勝9敗ぐらい」

――現在の1日のスケジュールを教えてください。

ベガ「午前9時から11時半までジムワーク。午後7時から9時までフィジカルトレーニングとロードワーク。世界タイトルマッチに臨むので1日2回みっちり練習しています」

――ズバリ、京口に勝つカギは?

ベガ「ファイター型の戦法とボクサー型の戦法を使い分けること。そのためには出入りの動きとカウンターが重要になる。シンプルですよ。相手をぶっ飛ばす気持ちと同時に頭を使って戦うことが肝心。あとは手数を多く繰り出すこと」

――映像で見た京口の印象は?

ベガ「一番印象的なのはレバー打ち。これは大いに気をつけたい。そして右拳にパンチがありそう」

――メンデス戦で学んだものは?

ベガ「周到な準備をしなければいけない。そしてスパーリングが大事だと思いました」

最新のフアレス戦でWBAの地域タイトルを獲得したベガ(写真:All Star Boxing Inc.)
最新のフアレス戦でWBAの地域タイトルを獲得したベガ(写真:All Star Boxing Inc.)

世界王者をスパーリングに起用

 ゴンサレス・マネジャー兼トレーナーによると、26日現在ベガのウエートは112ポンドとフライ級リミット。減量はあと3キログラムぐらいだという。またスパーリング相手も充実し、メインパートナーはWBOライトフライ級王者エルウィン・ソト(メキシコ)が務め、サブパートナーは前WBOスーパーウェルター級王者ハイメ・ムンギアの同僚で19勝1敗のエクトル“ラピディート”フローレス(メキシコ)という選手が担当。大一番ならではの陣容で取り組む。

――最終調整での宿題は何でしょう?

ベガ「とにかく練習で頑張るしかない。13、14ラウンド全力で戦える準備をしています。特にボラード(メキシコ人ボクサーが得意とするスウィング系のパンチ)に磨きをかけている」

――昨年のサウル“ベイビー”フアレス戦では判定勝ちしましたが後半スタミナの問題を露呈しました。その対策は?(注:フアレスは2018年12月、WBCライトフライ級王者寺地拳四朗に挑戦し3-0判定負け)

ベガ「ロードワークに力を入れているのは事実だけど同時に今週から特訓のプロセスに入り、スピードと耐久力の強化に努めている。フアレスは経験豊富な選手だけど、こちらはパワーで圧倒しイージーな試合だった。スタミナ?少しだけ問題でした」

ベテランのフアレスを下した”ミニ”ベガ(写真:All Star Boxing Inc.)
ベテランのフアレスを下した”ミニ”ベガ(写真:All Star Boxing Inc.)

倒さないと勝てない

――京口の長所と並んで試合で警戒することは?

ベガ「京口にはカネロ(サウル“カネロ”アルバレス)チームが就いているというから、それが一番心配。エディ・レイノソ・トレーナーは京口に対して細かい指示は出さないと思うけど、スコアカードの勝負となると影響力を発揮するかもしれない。だからノックアウトを狙って戦う。KOしないと勝てないという気持ちでいます」

――レイノソ氏のマネジャー力が気にかかると……。

ベガ「ええ。もしかしたら彼は名前だけの存在かもしれない。でも適切なアドバイスがチャンピオンに与えられると勝敗を左右することになるかもしれません。とにかくこちらはボクシングとファイト両方を心がけて頑張りたい」

――アイドル視するボクサーは?

ベガ「ガジョ・エストラーダ(WBCスーパーフライ級王者フアン・フランシスコ・エストラーダ)です」

――京口にメッセージはありますか?

ベガ「メッセージというか、こちらの意気込みになってしまうけど、とにかく全力を傾けて勝ちたい。WBAベルトとリング誌ベルトを獲得して凱旋したい」

 ベガには今月20日、オスカル・バルデス(メキシコ)にKO負けを喫しWBC・S・フェザー級王座を失ったミゲル・ベルチェルト(メキシコ)のアルフレド・カバジェロ・トレーナーが特別コーチとして京口戦でコーナーに陣取るという。バルデスのチーフトレーナーは上記のレイノソ氏。カバジェロ氏にとってはリベンジの機会となる。もちろん京口にとって日本のトレーナー氏のサポートは不可欠だが、メキシコ人参謀対決も試合の焦点となるかもしれない。

 “ミニ”のニックネームで呼ばれる身長150センチほどのベガ。メキシコ料理に欠かせないチレ(唐辛子)。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」同様メキシコにも「小さいけどものすごく辛い」という故事がある。これを京口は肝に銘じて戦って損はないだろう。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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