Yahoo!ニュース

源氏物語のあらすじを一言で言えば?「読むのが難しい」と感じる人に伝えたい3つのコツ #3

とらべるじゃーな!穴場ずらし旅、愛好家

宿泊経験500泊。関東圏の穴場ずらし旅の愛好家、とらべるじゃーな!です。

大河ドラマ「光る君へ」も佳境を迎え、紫式部や源氏物語に関心を持つ方が増えているようです。

結論ファースト

源氏物語のあらすじを一言で言えば、事情があって皇族の地位を失った光源氏が、貴族(現在の官僚)を経て、再浮上に賭ける物語です。
女性遍歴については、全ては3歳のときに死別した母(桐壺更衣)が原点です。源氏は亡き母に似た藤壺に初恋をし、その姪の紫(若紫)を最愛の人とします。この3人を押さえます。
源氏物語には挿入される短編(外伝)が多く、とくに序盤に挿入される3人(空蝉、夕顔、末摘花)には混乱させられるため、後回しにします。ただし、末摘花は、コント満載の巻で逆に1番先に読むべき面白さがあります。

「光る君へ」の舞台の1つ 福井県越前市

武生駅前
武生駅前

福井県越前市武生(たけふ)は、紫式部(まひろ)が京都以外で暮らした唯一の地。

ハピラインふくい(旧北陸本線)の武生駅近くに、紫式部の父が役人として赴任した国府(現在の県庁に近い役割)があったと推定されています。このとき、紫式部は24歳でした。

武生には、現在も古い建物が残されており、観光地としてもおすすめです。

武生は、どちらかというと穴場観光地に属し、曜日や時間帯によっては、古い町並みをひとり占めできる場所です。

源氏物語はなぜとっつきにくい?

紫式部の遺した名作が「源氏物語」ですが、古典を学ぶ高校生から大人に至るまで、難解さを感じている人が多いようです。

引用 『マンガでわかる源氏物語』/画 亀小屋サト、サイドランチ
引用 『マンガでわかる源氏物語』/画 亀小屋サト、サイドランチ

しかし、源氏物語は3つのポイントを抑えれば、非常に与(くみ)しやすい物語です。

・あらすじを一言で言えば、事情があって皇族の地位を失った光源氏が、貴族(現在の官僚)を経て、再浮上に賭ける物語である。

・人物は、人数が多過ぎる女性を捨て、光源氏と、出世や恋愛のライバルである頭中将だけをまず押さえる。光源氏は、HiHi Jetsの作間龍斗さん(※ジュニア公式、「どうする家康」で豊臣秀頼役)、ひと昔前なら嵐の櫻井翔さんのイメージ。

・第6巻(第六帖)の「末摘花(すえつむはな)」から読み始める。少女漫画的な展開ではなくコントに近いため、万人向け。

解説本を読む場合も、この3つを守るのがおすすめです。

源氏物語のあらすじを「美貌と才能に恵まれた主人公、光源氏が複数人の女性と関係を持ちながら出世していく物語」とまとめる方もいますが、これは物語の本質(主人公の持つ「欠落」)を押さえ切れていないように感じます。

小説の世界では、人気のある物語は「欠落を抱えた主人公が障害を乗り越えて這い上がる」というプロット(話の筋)を持つことが多いとされます。

さて、源氏物語「何が面白いの?」と思う人も、コント要素がある第六帖ならすぐ楽しめる#2では、光源氏が、寂しく暮らす皇族の忘れ形見である令嬢・末摘花の噂を聞きつけたところから、ご説明しました。

幼なじみの女性に、皇居から東へ約2kmの末摘花邸へと案内させた光源氏は、別室で末摘花による琴(きん、高級楽器)の演奏を聴きます。

はっきり言って、かなり下手だったのですが、「皇族の忘れ形見の令嬢=絶世の美女」の固定観念を持った源氏は、非常に前のめりになります。

「なほ、さやうのけしき(思いを寄せていること)をほのめかせ」と、語らひたまふ。……いと忍びて帰りたまふ。

しかし付き添いの幼なじみは、末摘花の琴(きん)の下手さ加減をよく知っていますので、うまく途中で演奏をやめさせ、源氏を帰します。

諦めきれない源氏は、思いを寄せていることだけは伝えて欲しい、と渋々屋敷を出ます。

引用 『マンガでわかる源氏物語』/画 亀小屋サト、サイドランチ
引用 『マンガでわかる源氏物語』/画 亀小屋サト、サイドランチ

透垣(垣根)のただすこし折れ残りたる隠れの方に、立ち寄りたまふに、もとより立てる男ありけり。「誰れならむ。心かけたる(末摘花を狙う)好き者ありけり」と思して、蔭につきて立ち隠れたまへば、頭中将なりけり。

タダでは帰りたくない源氏は、末摘花の様子をうかがおうと、壊れてしまった垣根が何とか残っている場所に隠れると、すでに先客がいます。何と親友かつライバルの頭中将だったのです。

同じ貴族(現在の官僚)である頭の中将とは、宮中での仕事が終わりそこで別れたのですが、狩衣(かりぎぬ)姿で後をつけてきたのです。

狩衣は、読んで字のごとく、もともとは狩りに行く時の服。現在なら「ワークマン」で買えるスポーツウェア程度のもので、自宅やコンビニに行く程度のときに使う普段着です。

源氏は、頭の中将のきちんとした服装(現在ならスーツ姿)の印象が強かったので、全く気付かなかったのです。

現在に置き換えれば、将来を嘱望されるイケメン若手社員が2名いて、1人がスーツで美人(と噂の)女性の邸宅にアプローチするところ、もう1人がわざわざワークマンに着替えて後をつけたので、最後まで気づかれなかったという話です。

源氏物語に限らず、古典は、現在に置き換えることでかなり理解しやすくなります。

このシリーズは、何度か連載し、源氏物語の世界にわかりやすく迫っていこうと考えています。

源氏物語が「難しすぎる」と思う人は、たった2人の登場人物を理解しておくと簡単になる #1

源氏物語「何が面白いの?」と思う人も、コント要素がある第六帖ならすぐ楽しめる#2

(今回)源氏物語のあらすじを一言で言えば?「読むのが難しい」と感じる人に伝えたい3つのコツ #3

まもなく最終回・光る君へ 紫式部が描いた、月と友情とギター 隠された「映画のような名場面」とは?#4

もう少し詳しく知りたい方に

源氏物語が苦手な人に人気の「末摘花」 不細工な姫の物語(受験ネット)

福井では、越前市とあわせ、消えた都市・一乗谷を巡るのもおすすめです。

【ブラタモリ福井 全ロケ地】タモリさんが消えた都市・一乗谷を訪ねる#120(とらべるじゃーな!)

※引用資料「マンガでわかる源氏物語 (池田書店のマンガでわかるシリーズ)」 砂崎 良 (著)、上原 作和 (監修)、亀小屋 サト (画)、サイドランチ (画)

※参考資料 源氏物語(一)桐壺―末摘花 (岩波文庫)

穴場ずらし旅、愛好家

宿泊歴500泊。関東周辺の穴場★ずらし旅スポットを紹介。日本テレビ(2023年)、TBSテレビ(2024年)に旅の専門家として登場。Yahoo!ニュースエキスパート公式旅行ライター(2023年7月企画賞)。JTB運営・地理旅行検定取得済み。東京都在住。

とらべるじゃーな!の最近の記事