源氏物語が「わかりづらい」と思う人は、お笑いコント要素がある第六帖ならすぐ楽しめる#2
宿泊経験500泊。関東圏の穴場ずらし旅の愛好家、とらべるじゃーな!です。
大河ドラマ「光る君へ」も佳境へさしかかり、紫式部や源氏物語に関心を持つ方が増えているようです。
「光る君へ」の舞台の1つ 福井県越前市
24歳の紫式部(まひろ)は、越前守(えちぜんのかみ)に任じられた父に同行し、現在の福井県越前市で約2年間を過ごしました。
父の役目は、現在ならおおむね福井県知事のイメージ(※)。越前国の中心は現在の福井市ではなく、越前市武生(たけふ)に位置していました。
※越前国の範囲は、現在の福井県の県域と多少異なります。
国府(現在なら県庁所在地)が置かれた武生ですが、現在は静かな地方都市で、混まない穴場観光地としてもおすすめ。
ご当地グルメは、トンカツが乗ったオムライスです。
源氏物語はなぜとっつきにくい?
さて、紫式部が残した「源氏物語」は、多くの人が興味を持ちますが、平易な解説本を読んだとしても、なおとっつきにくい印象があります。
その理由の1つが多過ぎる登場人物ですが、光源氏、頭の中将に焦点を当てるだけで、グンと視界が開けてくるのは、前回お伝えした通りです。
源氏物語が「わかりづらい」と思う人は、たった2人の登場人物を理解しておくと簡単になる #1
そして、「源氏物語」にとっつきづらさを感じる理由のもう1つが、「少女漫画的なストーリー」というイメージがあること。男性や、サバサバした女性は、特にそう感じるのではないでしょうか?
しかし、そこはベストセラー作家の紫式部らしく、ロマンスに興味がない層向けの短編も盛り込まれているのです。なかでも、お笑いコント要素が強いのが、源氏物語の第6巻(第六帖、だいろくじょう)「末摘花(すえつむはな)」です。
末摘花
18歳~19歳の光源氏は、若くして恋人と死別したばかりで、その面影を追い求めていました。
故常陸親王(ひたちのみこ、皇族)の、末にまうけていみじうかなしうかしづきたまひし(大事に育てなさった)御女、心細くて残りゐたるを、……あはれの(気の毒な)ことやとて、御心とどめて問ひ聞きたまふ。
そんな折に、皇族の忘れ形見である令嬢が、寂しく暮らしているという情報を仕入れます。
「心ばへ容貌など、深き方はえ知りはべらず。……琴をぞなつかしき語らひ人(唯一の友)と思へる」と聞こゆれば、
光源氏の幼なじみ(女性)によると、性格や容姿はよく分からないものの、琴を唯一の友として過ごしているそう。琴は、現在の感覚で言えばピアノが近いです(裕福なお嬢様の趣味)。
さらに言えば、琴(きん)は、現在の琴(こと、平安時代にもあったが別の呼び名)よりは、ずっと高級で、糸を支える支柱がなく演奏が難しい、別格の楽器でした。現在なら、お金持ちの家にしかないグランドピアノのイメージでおおむね当たります。
当時、女性は人前で顔を出しませんでした。古い屋敷から美しいグランドピアノの演奏が漏れ聞こえる、貴人の忘れ形見の令嬢のイメージを、光源氏は膨らませてゆきます。
ちょうど皇居は新年の行事が終わり落ち着いていたため、光源氏は、幼なじみの女性に無理を言い、末摘花の古い屋敷に案内させます。
末摘花邸は、現在の京都御所の南東に設定されていたと考えられます(社団法人紫式部顕彰会 編纂「京都源氏物語地図」による)。
一室に光源氏を案内した幼なじみは、末摘花の琴の演奏がまずいことを知っていたため、今日は月が曇っているように湿度が高く良い音が出ないなどと源氏を思いとどまらせようとしますが、興味津々(しんしん)の源氏は引きません。
やむなく別室にいる末摘花に、美しい月夜は琴の演奏にふさわしいと正反対の説得をかけます。この辺りがコント要素です。
ついに光源氏待望の琴(きん)の音が漏れ聞こえます。グランドピアノに例えれば、ポロロ~ン、ポロロ~ンというレベルです。
しかし、「完全に出来上がっている」光源氏は、趣深い、やはり本場の琴(きん)の音は筋が違うなどと、絶世の美女を想像し、いっそう舞い上がるのです。
このシリーズは、何度か連載し、源氏物語の世界にわかりやすく迫っていこうと考えています。
源氏物語が「わかりづらい」と思う人は、たった2人の登場人物を理解しておくと簡単になる #1
(今回)源氏物語が「わかりづらい」と思う人は、たった2人の登場人物を理解しておくと簡単になる #2
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