電子書籍端末は打ち止め!?
先日、MM総研が発表した調査結果によると、2012年度の電子書籍端末出荷台数は47万台だったそうだ。彼らの電子書籍端末とする定義は、以下になる。
【電子書籍専用端末の定義】(2013年6月現在)
1)画面サイズ5〜7インチの電子ペーパーを搭載(タッチ操作も一部可能)
2)電子書籍に特化した専用端末
3)Wi-Fi接続や携帯電話回線(3G以上)による電子書籍ストアが利用可能(WEB閲覧は限定的)
代表的なものは、アマゾンのKindle、楽天のkobo、ソニーのReaderになろうか。実際、先のレポートによるとこの3社で市場の96.8%を占めている。
さて、この電子書籍端末、2012年度の出荷数47万台をどう見るか? 2010年からの推移をみると、以下の図のようになっている(図はいずれも(株) MM総研[ 東京・港 ]より)。
今年の予測を入れてもトータル148万台だ。これも一人1台というわけでもなく、ヘビーユーザーは一人で2〜3台は持っているだろう。私だって4台持っている。となれば、ざっくり言って100万人強の人たちが電子書籍端末を持っているということになるだろう。
そのうち稼働率をどうみるか? 携帯電話ではないので、毎日のように使っている人は、半分程度か? となると50万人。
私が以前、老舗出版社の大先輩に以下のような話をうかがったことがある。
「日本に本当に小説好きな人は50万人。だから50万部以上のベストセラーが出ると言うことは、普段小説を読まない人が、その本がベストセラーだから買ったにすぎない」
偶然とはいえ、50万人という数字は、小説好きの人数とぴったりと当てはまるわけだ。もちろん「小説は紙で読みたい」という人もいるだろうし、小説は読まないが実用書やビジネス書を読むために電子書籍端末を買ったという人もいるだろう。
そう考えると、とりあえず、現状では欲しい人すべてに電子書籍端末が行き渡ったのではなかろうか。
そのほかの人は「ベストセラーだから本を買う」人たちなのでスマホで十分なわけである。
紙の書籍の電子化をやっているかぎり、電子書籍ビジネスの明るい未来はやって来ない。しかし、出版社は、紙の書籍をマネタイズする仕組みが完成している現在、力のある作家の新刊を電子のみで発行することはない。となるといつまでたっても魅力あるコンテンツが電子書籍で生まれてこないわけだ。
私が以前著書で書いたとおり、いまだに電子書籍の夜明けはやって来ない……。