「北米大熱波」カナダで46度、国内最高気温の記録が破られる
「歴史的で、危険で、長期的で、かつ前例のない」熱波が、アメリカとカナダの西部を襲っています。この言葉はアメリカの気象局が発したものですが、インパクトのある4つの形容詞を使わないと表現できないほど、今起きている熱波は尋常ではなく、1,000年に一度以上の珍しいレベルとまでいわれています。
高温警報の出ている場所
いま高温警報が出ているのは、アメリカ西部のカリフォルニア州からワシントン州あたりにかけて、さらにカナダのブリティッシュ・コロンビア州周辺、その上の北極圏にある州です。これほどまで広範に、北米大陸の西部で高温警報が出されるのはとても珍しいことです。
カナダでは国内最高気温46.6度
実際どれほど暑いのでしょうか。
カナダでは国内の最高気温記録が打ち立てられました。ブリティッシュ・コロンビア州のリットンという町では、46.6度という、この時期の気温を20度も上回る気温が観測されました。くどいようですが、これは6月の記録ではなく、全期間を通したカナダ全体の最高気温の記録ですから、ものすごいことです。これまでの記録は、1937年7月の45度でした。
カナダ西部では一部の学校を休校にしたり、新型コロナワクチンの接種会場を涼しい場所に移動させたりなど、熱波への対応を迫られているようです。
シアトルは記録のある130年間でもっとも暑い日
また、アメリカ・シアトルでは26日(土)、最高気温が39.4度まで上昇して、1894年から続く同市の観測史上一位タイの記録となりました。この時期の最高気温の平均は23度ほどですから、16度も高かったことになります。しかもその翌日には40.0度まで上がって、この記録をあっさり塗り替えてしまいました。2日連続で39度以上になるのも、シアトルでは前例がないことです。
その南に位置するポートランドでも、26日(土)に最高気温が42.2度まで上がって観測史上最高気温となったかと思うと、27日(日)には44.4度となって、これまた記録が更新されました。
そのほかの記録は、下記の通りです。
カナダ・バンクーバー: 42.2度←観測史上最高タイ
カナダ・リロエット: 43.1度←観測史上最高
カナダ・キャッシュクリーク: 42.5度←観測史上最高
米ワシントン州・オリンピア: 40.0度←観測史上最高タイ
米オレゴン州・ユージーン: 43.3度←観測史上最高
米オレゴン州・セイラム: 44.4度←観測史上最高
米オレゴン州・ローズバーグ: 45.0度←観測史上最高
28日(月)にもさらに記録が更新される可能性があり、その後週末にかけても高温状態が続くと予想されています。
暑さの原因「オメガ・ブロック」
この異常な暑さの原因は何でしょうか。それは「オメガ・ブロック」と呼ばれる、偏西風の蛇行です。
偏西風はまっすぐ西から東に流れるのが普通ですが、これが大きく蛇行すると、南から暖気が侵入し、「Ω」形の気流の流れになるのです。このパターンが見られると、同じような天候が数日間続き、凸の場所では暖気の影響で高温・乾燥の天候が長続きします。
暑いアメリカで起きている問題
アメリカ西部では、ここ20年間、高温・少雨が続いて「メガドラウト」と呼ばれる大干ばつが発生しています。極端に乾いた大地では、熱が土の中や空気中の水蒸気を蒸発させるためには使われないので、その分気温が上がりやすくなります。
こうした天候の中、アメリカ西部では記録的な山火事が発生しているほか、ダムの貯水量も史上最低を記録するなど水不足が深刻化しています。そのうえ多くの野生動物が飢え死に、エサを求めてクマが町に出没するなど、大きな問題が生じています。