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日本は晩秋の寒さでも南海上では夏の名残の台風20号発生 北寄りに進めば東日本接近

饒村曜気象予報士
タイトル画像 台風20号になりそうな日本の南海上の雲の塊(10月24日15時)

長い夏から急に初冬へと短い秋

 令和3年(2021年)は、10月上旬までは、最高気温が25度以上という夏日が全国の6割以上(気温を観測している920地点のうち552地点以上)という日が時折ありました(図1)。

図1 夏日と冬日の観測地点数
図1 夏日と冬日の観測地点数

 長い夏が続いていた日本列島でしたが、10月初旬には寒気が北日本まで南下しはじめ、中旬以降は西日本まで寒気が南下しています。

 10月初旬の寒気南下で、北海道の旭岳などでは平年より遅い初冠雪となりましたが、中旬以降の寒気南下では、本州各地で平年より早い「初冠雪」となるなど、一気に初冬の気候となっています(表)。

表1 初冠雪の「平年」と「令和3~4年(2021~2022年)寒候年」
表1 初冠雪の「平年」と「令和3~4年(2021~2022年)寒候年」

 気象観測において、初冠雪、初雪、初霜、初氷と、「初」がつくものは、最低気温が氷点下となる「冬日」とともに、秋真っ盛りから冬の到来を告げるものです。

 初冠雪が早いということは、冬の訪れが早いことを意味していますので、令和3年(2021年)は、秋が非常に短かったといえるでしょう。

 東京でも、10月2日には夏日どころか、最高気温が30.1度と、最高気温が30度以上の真夏日となっています。

 しかし、10月22日の最高気温は15.3度と、20日間で約15度も低くなっています。

 しかも、10月22日の最高気温が観測されたのは未明で、日中は10度位まで気温が低くなりましたので、年末の気温という非常に寒く感じた一日でした(図2)。

図2 東京の最高気温と最低気温の推移(10月25日~31日は気象庁、11月1日~9日はウェザーマップの予報)
図2 東京の最高気温と最低気温の推移(10月25日~31日は気象庁、11月1日~9日はウェザーマップの予報)

 しかし、日本列島に南下していた初冬の寒気は東海上に抜け、今週は平年並みか平年より高い気温になりそうです。

 つまり、初冬から秋に季節は少し戻りそうです。

 しかし、日本の南海上は夏の名残が残っています。

台風20号の発生

 日本の南海上には、対流活動が活発で、いくつかの積乱雲の塊があります(タイトル画像参照)。

 このうち、南シナ海とマリアナ諸島にある積乱雲の塊には循環がみられます。

 特に、マリアナ諸島の雲の塊の循環は、地上天気図でも熱帯低気圧と解析されており、台風に発達して北上する見込みです(図3)。

図3 台風の進路予報と海面水温(10月24日0時)
図3 台風の進路予報と海面水温(10月24日0時)

 台風となると、今年20個目、台風20号の発生です。

 台風になるかならないかという段階の進路予報ですので、予報が定まらず、予報円はかなり大きくなっています。

 しかも、マリアナ諸島の海面水温は、台風が発達する目安の27度を上回る29度以上です。

 10月28日(木)には非常に強い勢力にまで発達し、小笠原諸島に接近する見込みです。

 台風20号が発生し、予報円の北側を通ったとすると、関東から紀伊半島に上陸となりますし、暴風警戒域は東北南部から四国という広い範囲にかかる予報になっています。

 最新の台風情報に注意し警戒してください。

【追記(10月25日10時40分)】

 マリアナ諸島からフィリピンの東海上に進んだ熱帯低気圧は、10月25日9時に台風20号になりました。

 台風予報は、熱帯低気圧のときの予報とほ同じで、これから小笠原諸島に接近します。

 最新の台風情報の入手に努め、警戒してください。

 令和3年(2021年)の台風発生数は、これまで平年より若干少なく推移しています(表2)。

表2 平年と令和3年(2021年)10月23日までの台風発生数・接近数・上陸数(四捨五入の関係で月別平年値の合計は年平年値とは一致しない)
表2 平年と令和3年(2021年)10月23日までの台風発生数・接近数・上陸数(四捨五入の関係で月別平年値の合計は年平年値とは一致しない)

 8月と9月に台風発生数が少なかったことから、台風20号が発生しても、平年並みには少し足りません。

 また、台風の中心が国内のいずれかの気象官署から300キロ以内に入った場合を「台風の接近」といいますが、これまで10個接近しており、台風20号が接近すれば、平年並みの接近数となります。

 さらに、台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を「台風の上陸」といいますが、これまで、台風8号が宮城県石巻市付近に、台風9号が鹿児島県枕崎市付近に、台風14号が福岡県福津市付近に上陸していますので、台風20号が上陸すれば平年の3個を上回ります。

10月に日本に影響を与える台風

 過去の台風の統計では、10月の台風は西進することが多く、日本へはほとんど影響しません。

 10月に北上して日本に接近する台風は、主にマリアナ諸島付近から北上してくる台風ですので、統計的にも、台風20号には警戒が必要です(図4)。

図4 10月の台風の平均経路
図4 10月の台風の平均経路

 台風の統計が作られている昭和26年(1951年)から昨年、令和2年(2020年)までに206個の台風が上陸しています。

 台風の月別の上陸数をみると、8月が73個と一番多く、次いで9月の66個になります(図5)。

図5 台風の月別上陸数(昭和26年(1951年)~令和2年(2020年)及び令和3年(2021年))
図5 台風の月別上陸数(昭和26年(1951年)~令和2年(2020年)及び令和3年(2021年))

 台風というと9月のイメージがあるのですが、これは、9月の台風は秋雨前線を刺激して大雨を降らせることが多いなど、大きな被害を発生させるからです。

 ただ、近年は9月から10月に上陸する台風が増えており、今年から用いられている平年値は、平成3年(1991年)から令和2年(2020年)までの30年平均ですが、最近の台風上陸の傾向を反映し、初めて平年値で台風上陸が一番多い月が8月ではなく、9月となっています。

 平成13年(2001年)以降では、8月と9月がほぼ同じ数だけ上陸していますし、10月に上陸する台風も7月に上陸する台風並みの数となっていますので、10月も台風シーズンです。

 暴風域に入る確率は、小笠原諸島では28日(木)の夜遅くには20パーセントを超えますが、29日(金)の昼過ぎの東京23区東部でも1パーセントあります(図6)。

図6 暴風域に入る確率(上は東京23区東部、下は小笠原諸島)
図6 暴風域に入る確率(上は東京23区東部、下は小笠原諸島)

 東日本の太平洋沿岸では、台風20号による暴風域に入る確率は低いとはいえ、0ではありません。

 最新の台風情報の入手に努めてください。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図4の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計―月別発生数・存在分布・平均経路―、研究時報、気象庁。

図5の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図6、表2の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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