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日本でのキャリアが長いジェフ・ギブスが語るニック・ファジーカスとマッチアップが大変だった外国籍選手

青木崇Basketball Writer
10月に渋谷と契約後、休むことなく全試合に出場したギブス (C)B.LEAGUE

 今季開幕前、ジェフ・ギブスは長崎ヴェルカのサポートコーチを務めていた。しかし、ジェームズ・マイケル・マカドゥの故障による長期離脱が明らかになったサンロッカーズ渋谷からのオファーを受け入れ、宇都宮ブレックスに在籍した2020−21シーズン以来となるB1でプレーする機会を得る。

「私にとって明確なのは、年齢は単なる数字でしかないんだ。身体のコンディションはいい」

 43歳になっても、ギブスはB1で質の高いパフォーマンスでチームに貢献できることを証明している。渋谷の一員として10月20日の長崎戦からプレーし始めて以降、1試合も休むことなく56試合に出場し、24分8秒間で平均8.1点、6.6リバウンドを記録。2勝10敗と出遅れた渋谷がシーズン中盤以降に巻き返し、チャンピオンシップ進出争いに最後まで絡めたのは、ギブスが実際のスタッツ以上にチームへ貢献したからだと言っていいはずだ。

 ギブスは2010年にトヨタ自動車アルバルク(現アルバルク東京)と契約して来日。身長188cmとフロントラインでプレーするには明らかに小さいながらも、213cmというウイングスパン(両腕を真横に広げた時の長さ)と強靭なフィジカル、機動力を武器にサイズの不利を感じさせないプレーでチームに貢献してきた。

 今季を最後に現役引退を発表した川崎ブレイブサンダースのニック・ファジーカスは、ギブスが対戦してきた数多くの外国籍選手でも非常に難しいマッチアップだったと感じた一人。ファジーカスにとって現役最後のホームゲームとなった4月27、28日の対戦相手は渋谷であり、ギブスとファジーカスが試合の合間に会話するシーンも何度か見られた。

 とはいえ、ギブスはファジーカスに対する敬意を持ちながらも、特別な感情に流されることなく、渋谷の勝利に貢献するため集中し、全力を尽くしていた。それは、2試合とも出場時間が37分を超え、ゲーム1で20点、14リバウンドのダブルダブルを達成していたことでも明らかである。

「プレーオフに進むチャンスを高めるために、基本的に勝たなければならないことはわかっていた。特にニックとの最後、彼にとって最後のホームゲームであるアリーナでの対戦は少しほろ苦いものだった。でも、(その試合で)我々が勝てたことはうれしい。ニックが(とどろき)アリーナでプレーする最後の試合に勝ちたかったことはわかっている。しかし、少なくとも我々はシリーズを1勝1敗にした。彼は試合に出て、1試合は勝ったと言える」

2016年のB1決勝を含めて過去12年間でファジーカスとハイレベルなプレーをしたギブス (C)B.LEAGUE
2016年のB1決勝を含めて過去12年間でファジーカスとハイレベルなプレーをしたギブス (C)B.LEAGUE

 中地区2位でチャンピオンシップ進出の可能性があった両チームの対戦は、ゲーム1が1点差で川崎、ゲーム2が2点差で渋谷が勝利。最後の最後まで勝負の行方がわからない激戦を繰り広げた後、ギブスはファジーカスとのマッチアップについて次のように振り返った。

「いつでもタフなマッチアップになる。ニックは間違いなく得点できるし、どこにいたとしても、彼に対してフィジカル面でたくさんのプレッシャーをかけなければならない。でも、ニックとはいつも素晴らしい戦いをしてきた。少なくとも、キャリアを通じて我々は50回以上は対戦したと確信している。実際の対戦成績はわからない。恐らく50%であると言いたいし、それぞれ同じ数のゲームに勝っている。ニックと対戦するのはいつでも楽しかった」

 2人が出場した試合の対戦成績を調べてみると、51試合で26勝25敗とファジーカスの川崎が勝ち越しだったが、ギブスの記憶どおりに近い結果が出ていた。ちなみに、JBLとNBL時代は、ファジーカスの東芝神奈川がセミファイナルで2度ギブスが所属したトヨタを撃破。しかし、Bリーグになって以降は2017年のB1ファイナルを含め、ギブスの宇都宮ブレックスがチャンピオンシップの対戦で3度川崎を倒している。

 プロ選手として20年目のシーズンを終えたギブスに対し、ファジーカス以外でマッチアップするのが大変な選手について質問してみると、ダバンテ・ガードナー(シーホース三河)、桜木ジェイアール(元シーホース三河)、ジェラルド・ハニーカット、エース・カスティス、青野文彦(元パナソニックトライアンズ)、ジョシュア・スミス(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)の名前をあげる。青野については、次のようなエピソードを話してくれた。

「最初に自分の目に入った選手の一人であり、“彼とマッチアップしなければならないのか?”という感じだった。初めて対戦した時、彼をガードしていた私はわずか6分間(のプレー)でファウルアウトになった。レフェリーたちは私が彼に接触したらファウルをコールしていたんだ。彼らは当時私がフィジカルな選手であることをあまりにも認識していなかったと思う」

 今季を最後に引退を考えていたというギブスだが、身体のコンディションに関しては現役続行でもまったく問題ない。しかし、心の中では引退するか否かで揺らいでいるという。

「肉体的には元気だし、ケガもしていない。精神的には大変で、それは重要なことだ。プレーはまだ続けたいし、体力的には大丈夫だと思う。シーズンを通して、多くの選手が試合後の様子、私がプレーしているのを見て、“もう1、2年やれるんじゃないか”と言ってきた。肉体的には“YES”と言えるし、恐らくあと1年はプレーできるだろう。しかし、精神的な部分ではまだわからないんだ。体力的には大丈夫。でも、精神的にはまだわからない」

 シーズン終了から3日後、ギブスはXで現在の心境を明かしている。引退か現役続行か? ギブスがどんな決断を下したとしても、日本のバスケットボール界に貢献した選手として、多くの人の記憶に残ることは間違いないだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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