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北朝鮮が弾道ミサイルを発射。飛行データ上は準中距離弾道ミサイル相当だが、ICBM予備実験か

JSF軍事/生き物ライター
海上保安庁よりキャプチャ。2022年5月4日にミサイル緊急警報が出された時刻

 5月4日正午ごろ、北朝鮮が平壌近郊の順安から弾道ミサイルを日本海に向けて発射しました。日本の排他的経済水域(EEZ)の外に着水しています。観測された飛行データは、日本防衛省の発表数値と韓国軍の発表数値は以下の通りです。

  • 高度800km、距離500km (日本防衛省の発表数値)
  • 高度780km、距離470km、マッハ11 (韓国軍の発表数値)

 数値上は準中距離弾道ミサイル(MRBM)相当で、高く打ち上げるロフテッド軌道で発射されています。ただし韓国軍は大陸間弾道ミサイル(ICBM)と見ているようで、性能をわざと抑えた予備実験だった可能性があります。

 高く打ち上げるロフテッド軌道である以上は火星8などの低い高度で飛ぶ極超音速滑空ミサイルは除外されます。他の可能性としては、IRBMの性能を抑えた射程での実験(火星12)やMRBMの通常発射訓練(北極星2)も考えられますが、おそらくこれらの可能性は低いでしょう。

最近の北朝鮮の弾道ミサイル発射(推定ICBM関連)

  • 高度600km、距離300km (2月27日) ※偵察衛星試験と自称
  • 高度550km、距離300km (3月5日) ※偵察衛星試験と自称
  • 発射直後に爆発失敗(3月16日) ※北朝鮮は未発表
  • 高度6200km 距離1080km (3月24日) ※ICBM「火星17」と自称
  • 高度800km、距離500km (5月4日)

 2月27日と3月5日の発射について北朝鮮の公式発表では「偵察衛星の試験の一環」とされていますが、アメリカの分析ではICBMの予備実験(わざと性能を抑えた発射)だったと推定されています。

 また3月16日に発射失敗と推定されていますが北朝鮮は無反応で、北朝鮮は3月24日の発射成功は新型ICBMの火星17と自称していますが、韓国軍の推定では3月24日の発射は火星15の発射を行っており、北朝鮮は火星15を火星17であると偽装していると疑っています。

 韓国軍の推定通りなら、北朝鮮は3月16日に火星17を発射失敗して、これを誤魔化そうと3月24日に火星15を発射して「火星17の成功である」と言い張っていることになります。

最近の北朝鮮の弾道ミサイル発射(火星17推定)

  • 火星17予備実験? 高度600km、距離300km (2月27日)
  • 火星17予備実験? 高度550km、距離300km (3月5日)
  • 火星17発射失敗? 発射直後に爆発失敗(3月16日)
  • 火星17発射成功と偽装? 高度6200km 距離1080km (3月24日)
  • 火星17予備実験の再開? 高度800km、距離500km (5月4日)

 もしこの推定が事実であるなら、北朝鮮はわずか2カ月間ほどの間に巨大な新型ICBM「火星17」を4発も試験発射で消耗した上に、3月24日に偽装用の火星15まで1発を無駄に消耗したことになります。

 もし今日の発射が火星17予備実験の再開を意味するならば、近い将来に再び予備実験を行うか、あるいは本番の全力発射実験を行う可能性が高いでしょう。

関連:北朝鮮が新型の超大型ICBM「火星17」を公開(2022年3月25日)

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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